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4.未来―5


 フレギオール、アルゴズム、そしてゲンゾウは旧友だった。そのはずだった。会えば邂逅し、語らえば笑い会える。少なくとも昔はそういう関係だったはずだ。だが、今は違う。今はどうだ。決別し、殺し合い。実際に一人失った。

「くそ……」

 胸元にミライの小さな存在を確かに感じながら、ゲンゾウは忌々しげに吐き捨てた。




「貴方の力を貸してほしい」

 そう言ってフレミアがフレギオールの目の前に現れたのはアルゴズムを殺す数ヶ月前だ。言えば、アギトがアクセスキーを手にするよりも前である。

「確かお前は……フレミア……」

 全世界でフレミアの死は大々的に扱われた。よって、フレギオールもフレミアのその姿を当然知っていた。眼前に突如として現れた幽霊の様な存在にフレギオールは目を丸くして驚いた。が、死の概念が曖昧になってかなりの歳月を越えたディヴァイドで、見えているその存在は死とは言い切れない。そんな現状が相まってフレギオールの中では妙な気持ちが跋扈していた。

「もう一度言う。力を、貸して欲しい」

「どういう事だ?」

 フレギオールは眉を顰めた。眼前のそのないはずの存在に警戒しながら、何かを探れないかと疑う様な視線を彼女に向けていた。

 そんあフレギオールの表情に気付きながらも、フレミアはあえて素の無機質な雰囲気を纏ったがまま話しを進める。それ程、切羽詰まった状況にあったのだ。

「現在、世界は滅びようとしてる」

「何が言いたい?」

「エラー。知ってるでしょ?」

 エラー。その言葉にフレギオールは眉をひく付かせて反応を見せた。

「当然だ。お前の死同様にエラーの存在は世界に拡散されている。今や知らぬ者はいないだろう?」

 言葉を最後まで聞いたフレミアは首肯する。して、続ける。

「エラーを閉じなければいけない」

 言ったフレミアはそこで杖状のアクセスキーを翳すように示した。

「それは?」

 未だ怪訝さが抜けないフレギオールは警戒しながらもその純白の杖を見定める。

「アクセスキー」フレミアは素朴に言って「これはエラーを閉じる力を持った、私の作った武器」

「武器だと?」

「そう。武器」

 言い切ったフレミアはそこから長広舌を振るってあれやこれやとアギトの時と同じ様な話しをしてフレギオールに説明した。現実を含めた現状の説明である。して、フレミアはフレギオールにアクセスキーを手渡した。

 アクセスキーを受け取ったフレギオールはその純白の輝きに目を奪われながら――内心で不気味に笑んだ。笑んでいた。

 実はこの時、フレギオールの持つ宗教団体はアルゴズムの、つまりは国から命令により、解散を余儀なくされていた。当然それに反抗し、総員がかなりの数となるフレギオールの宗教団体と国とで内戦が起こるだろうと言われているくらいだ。

 そんな中で、『エラーを閉じる』という異常で異端な武器を、特別な武器を手に入れる事が出来たのだ。

(アクセス『キー』。エラーを閉じる事が出来るという事は……。当然、開く事も叶うだろう……!!)

 フレギオールは秘匿にそう思っていたのだ。

 言葉でこそフレミアの提案に乗ると言うが、内心は当然違う。この異常な武器を手に入れ、国の、アルゴズムの圧力を打開してやろうとして狙っているのだ。

「あぁ……『世界を救って』みせよう」

 アルゴズムは嘲笑して、首肯した。

「頼んだわ……」

 フレミアが消えるその瞬間まで、フレギオールは欺瞞の笑みを浮かべたままだった。して、フレミアが完全に消滅したその瞬間。フレギオールは傲慢に支配された高笑いを放った。それは全世界に浸透する程良く響く程のモノであった。

「アルゴズム……これで決着をつけてやるぞ!」




   8




「こんにちは」

 それは、フレミアにしては珍しい登場の仕方だった。そうしてフレミアが出現したのは、まだ幼さの影が残るミライの部屋だ。

「へぇ? ……え!? あの、どちら、様です、か……?」

 突然のフレミアの出現に驚きつつも、ミライはその存在に何かを感じ取ったのか叫んだり、助けを呼んだりなんて野暮な事はせず、問うた。

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