14.エピローグ
14.エピローグ
ミライは一人呑気にアルファの町を歩いていた。あれからミライは旅をして、成長していた。
――『あの終焉』から、三○○年が経過していた。
ミライも成長し、ディヴァイドシグマサーバーでの最高設定年齢である二三歳にまで成長し、髪も伸び、身長もあの時既に最高設定年齢に達していたアヤナよりも大きくなった。顔も大分大人びて、ふわふわした元来の印象を残しながらも綺麗な女性になっていた。
そんなミライが向かったのは、アルファの『■■■の家』。持ち手を失ったその家は、今はまた別の人間が使っているのだ。
ミライは上機嫌で、今にもスキップでもしそうだった。理由は単純、今日は、その家で旧友と再会するのだ。
「早く会いたいなー」
そんな事を言いながら、ミライは早足で進む。
「大分、あの頃と比べたら暇になりましたね」
元老院最高官のみが座れるあの椅子に深く腰掛けながら、ヴェラはそんな事を吐き出した。今まではそんな無駄話をする事もあまりなく、新鮮な姿に見えたのだった。
「そうですね」
威厳な声で答えるのはクライムだ。彼は彼で左席に腰深く掛け、溜息を吐き出す様にそう返した。
元老院は『あの時』、相等過酷な労働をしていた。世界を滅ぼさないために、アギトの補助を全力でしてきた。それに比べ、今の、今まで通りの最高に安全なディヴァイドでは、仕事は急激に減っていたのだ。
「右席に着いた『あの娘』も、今日ばかりは休暇を取っているのに、それで暇というのは、ちょっとばかり気が引き締まらないですね」
クライムはそう言いながら、何か仕事はないか、と自身のデスクを漁り始める。
「そうですね。でもまぁ、こうやって暇なのは平和な証拠ですから」
そう言ったヴェラは「フフフ」と静かに笑んで、背もたれに体重を預けたのだった。
「……本当。アームドの集落を離れて、世界が平和な状態になると、俺の力って役に立たないねぇ」
そんな事を呟きながらアルファの町を見上げながら歩くのはレギオン。相変わらずの赤いジャケットが似合っている。
彼もまた、■■■の家へと向かっていたのだ。彼もまた、『あの物語』の登場人物なのだから。
「……デカイな、この家……」
その目的の場所に一番のりで到着したのはレギオンだった。
レギオンの眼前には恐ろしく大きな家。この自宅にある男は一人で暮らしていたのだから驚きだ。とは言っても、殆ど自宅には戻っていなかったようだが。
「よし、入るか……」
と、レギオンがインターフォンに触れようとして、
「あ、レギオンさん」
「ん?」
声が掛けられた。首を傾げるようにレギオンがそちらへと目をやると、そこにはミライがいた。
「おぉ、ミライちゃん。早いな」
「レギオンさんの方が早いじゃないですか! フフッ」
嬉しそうに笑むミライ。そして、吊られて笑ってしまうレギオン。
「あ、二人とも久しぶり」
と、そこに、もう一つの影が現れた。
「今日も世界は平和だねー。良い事だ。うんうん」
なんて呑気な言葉だろうか。声色も雲の様に軽い。そんな呟きをしながらアルファの町を歩くのは、現元老院右席に位置する女性――エルダである。彼女もまた、■■■の家に向かっていたのだった。
彼女は呑気だが決して時間にルーズではない。時間数分前に■■■の家に到着するように向かっていた。
そして、彼女がその家に到達すると、家の前に二人の影を見つけた。
「あ、二人とも久しぶり」
エルダが声をかけると、レギオンとミライは笑顔で振り返った。
インターフォンが鳴る。反応して、小さな白い影はパタパタとスリッパの音を鳴らしながら広い家の中を走って玄関へと向かった。その速度は速い。流石は元戦士といったところか。
「はーい!」
そう言って、彼女が玄関を思いっきり開けると、そこには三人の影が。
「アタシね、旅に出ようと思うの。――探すために。だってそうでしょ? アタシ達が生きてて、世界からエラーが消えて、何もかも元通り! って事は――■■■だって、生きてる可能性はあるでしょ?」
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はい。ディヴァイド、完結です。残念ながら、マジなやつです。
長かったようで、短かったですね。プライベートでの転機と重なり、最後は一気に書き上げてみました。
これから誤字脱字修正、とかいろいろとやります。気付いている人はいるとは思いますが、スカーエフ、スカーネフの問題とか沢山ありますので……。
プロットなしで頑張ってみましたが、長く書くとそれは厳しいですね。今度書き直すタイミングがあれば、プロットから書き上げてみます。
こまかい後書きは作者のお知らせにて。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。感謝しきれません。
本当に、ありがとうございます。
続編、外伝の構想は最初からあったのですが、どうなるかはわかりません。
では、また別の作品で会いましょう。会いませう。
跋




