13.勇者の終焉
13.勇者の終焉
「フレミアっ!」
「アギト……」
全てから解放されたアギト、そして、鳥篭の様な牢獄から解放された『フレミア』。
二人は初めて、ここにきて始めて、その電子化された肉体で直に触れ合った。抱きしめ、アギトは囁くように彼女の耳元で言ってやる。
「助けたぞ」
その瞬間、フレミアの瞳からは涙が溢れた。それも、大量の。
初めて、フレミアがちゃんとした感情表現を見せたのだ。アギトは何も言わず、そんなフレミアを抱きしめてやる。
――「お願い……。魔王の手下達を倒して、エラーを閉じて、力を集めて、ディヴァイドを救って。そして、出来れば……、」
――「そして、出来れば……?」
「私を、助けて。だろ? お前が言いたかったのは」
アギトの優しい言葉に、フレミアは更に涙を流して、何度も何度も、首肯した。うん、うん、と何度も泣きながら頷くフレミアは、今や使命を果たすだけの存在ではなく、ただの、少女だった。
暫くして、フレミアが泣き止むまでアギトは待ってから、フレミアを優しく離した。
そして、言う。
「俺にはまだ、やらなきゃならない事がある。当初の目的だ。世界を、シグマサーバーの電脳世界を救う」
アギトの言葉に、フレミアは静かに頷く。そして、アギトの背中を何も言わずに見守るのだった。
アギトは数歩進み、魔王が残した遺産に触れる。魔王が魔王で合った時に残していた報酬だ。その中身は当然、技術者としての力と、魔王が言った通り、『あの戦い』で失った、自身の手で殺した仲間達を蘇らせる方法。
アギトはそれを取り込む。
そして、宣言、顕現する。
「全部、終われ。全部、始まれ。そして――、」アギトは振り返り、呆然と立ち尽くすフレミアへと優しい視線を向けて、最後の言葉を置く。
「待たせたな。フレミア。俺が助けてやる」




