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11.集結後の終結。覚悟―2


「丁度良いじゃないか。俺は中央塔に向かう所だったんだ」アギトは自嘲の笑みを浮かべながらそう言って、「マトリクスの狭間、もう一つのディヴァイドに行くためにな」

 腰からアクセスキーを引き抜き、刀へと変化させ、その切っ先をクライムへと向けながら、そう言った。

 その仕草を宣戦布告と受け取ったか、クライムは眉を顰める。「良いだろう」

 クライムはそう言うと、右腕を軽く上げた。すると――、アギトの周りを囲っていた連中が、突如として、例外なく、武器へと変化したのだ。武器へと変化した連中はその刃を地面に突き刺し、屹立してアギトを囲む。彼等は『アームド』だったのだ。それも、クライム専属の武器集団である。

 辺りを見回しながら、アギトは言う。「面白い事するな。クライム。実は戦闘要員だったってか」

「もとより、戦闘要員だ」

 そう言ったクライムは近くに突き刺さる細身ながら重量感の感じられる黒光りした剣を手に取る。次に、その反対側に突き刺さる白の刃の長い剣を手にし、二刀流の構えを取る。

「私は中央塔所属の人間。アギト、お前に何の理由があろうが、止めなければならない。覚悟しろ」

 刹那、クライムは動いた。アギトが返事をする暇等なかった。正面から、交差する重なった二撃。アギトはそれを縦に構えた純白の刀で受止める。鋭利な刃の衝突音が炸裂する。

「ふんっ、」

 クライムは右手の剣をそこに止め、アギトの刀を威圧したまま、左手を大きく引いて、一撃をアギトの横っ腹目掛けて叩き込もうと振るう。

「ッ」

 アギトは瞬時の判断でクライムの右腕の剣を弾き、バックステップでそれを避ける。バックステップで距離を取ったと同時、アギトは地を穿つ程に蹴り、一瞬にしてクライムとの距離を詰める。その間にアギトはアクセスキーを巨大な斧へと変化させ、クライムの一歩手前で遠心力を付加させるために身体を回転させ、猛烈な一撃をクライムへと叩き込む。クライムはその攻撃を受止める事は出来ない、と判断。即座に地に伏せてその攻撃を頭上でスルーさせる。タイミングよく立ち上がり、アギトの正面に立つクライム。大振りの斧では判断できない、とアギトはアクセスキーを即座にナイフへと戻して応戦。だが、小型のナイフとなればクライムの二刀流は重かった。

 クライムの戦闘スキルは高い。アギトの防御の構えは二刀流の重なる一撃によって崩された。そして、そこに叩き込まれる二刀流の斬撃。

「ッ!」

 避けきれない――と気付いたアギトは即座に跳んだ。宙返りする様な動き。背面で飛び、片手で地面を押し、宙で身体を捻りながら距離を取る。だが、その動きは、クライムの攻撃を確かに避けた。そして、気付く。こんな動きた事など、ない、と。

 アギトはあの暴走した日から、自身の動きが、身体能力が、自身が気付かないところで進化しているのだ、とそこで察する。これが、中央塔でのマッピングで出たバグ反応の理由だ。

(……運が良いのか、悪いのか、どうかね……)

 体制を建て直しながら、アギトは呆れた。アギトは決して主人公なんかではない。本人はここまでの事を体験しながらもそう思っている。俺はダメな人間で、ただ、戦って、物語を終わらせるだけの存在で、と。

 クライムの攻撃を弾きながら、アギトは考える。

 クライムをどう処理するか、と。

 最早アギトは人殺しをも厭わない。ただ平伏せさせるのも構わない。だが、最早、誰一人の命をも、とアギトは考えない。

 とにかく全てを終わらせる。大罪を犯したアギトが今出来るのは、ただ、それだけなのだ。

「ふっ!!」

 アギトの刀状のアクセスキーがクライムの右腕の剣を弾き飛ばした。強烈な一撃だった。弾き飛ばされ、クライムの右腕から離れて宙を舞ったそのアームドは、砕け、空中で粒子へと分解され、死に至る。アクセスキーの攻撃だ。その死は決して再出現リポップではなく、本当の死を意味する。

 だが、アギトはそれを弔う気もない。

「ぐっ!!」

 クライムはアギトの素早すぎる追撃を予測と判断で見切り、すぐに飛び、また地面に突き刺さっていた他のアームドを右手にとってアギトを応戦。次々と剣を変え、攻撃に転じる二刀流。それが、クライムの戦い方なのだ。

「うぉおおおおおおおおお!!」

「おぉおおおおおお!!」

 二人の恐ろしく早い交戦。剣が打ち合う音が重なりすぎて最早まともな音には聞こえない。

 アギトは全てを終わらせる、という覚悟のために絶対に負けられない。そして、クライムは自身の役割ロールを全うするのみ、と自身に言い聞かせて負けないと誓う。

 クライムも実は分かっている。アギトが、アギトのみが全てを終わらせる力があるのだ、と。

「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 結果、どちらも意地となる。

 再び、アギトがクライムの剣を弾いた。「オォオオラッ!!」続いて、もう一つの剣も弾き飛ばす。そして空になるクライムの両手。

「終わりだッ!!」

 アギトの身体を半回転させた一撃がクライムの肩に落とされる――だが、それは防がれた。アギトが刀を振り下ろすまでのその間に、周りで地面に突き刺さっていた武器が自立するように勝手に浮き出し、クライムの前へと集結したのだ。まるで、クライムの盾となるかの様に。

 アギトの攻撃はその武器で出来た壁に防がれる。今の一撃で二本分の武器を粒子化させたが、それでも残り八本の武器があるのは確認できた。

「何ッ!?」

 咄嗟に攻撃を中断して下がるアギト。剣はクライムの意思を察して取るようにクライムの周りで浮き、時折くるくると動いている。

(何の能力だ……?)

 アギトは眉を顰める。そして辿りついた結論は至って普通。スキルか、という事。

「アギト、お前の実力は直に戦ってやっと認めた。本気で行くぞ」

 そう吐き捨てるように言ったクライムはそこで、疾駆。周りの武器もクライムの動きに連動するように付いて、アギトへと迫った。

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