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10.そして集結する―14


 そう、アギトが考えていた時だった。運が良かった。アギトに攻撃を仕掛けていたルヴィディアの背中に、周りで戦っていた漆黒のバケモノが衝突したのだ。

「ッ、」

 突然の奇襲にルヴィディアは一瞬だがそこで隙を生み出した。見れば、そのバケモノを吹き飛ばしたレギオンがアギトにサムズアップを向けている姿が遠くに見えた。

「助かったぜ」

 静かにそう言って、アギトはその間にアクセスキーを強化骨格型へと変化させ、体制を立て直したルヴィディアと再び衝突する。

 飛び交う拳と銃弾。強化骨格の不利なところは斬撃を扱えないところだが、攻撃はルヴィディアをも後退させる威力を持っている。それに、身体能力の補助をするスキルがあるのだ。銃弾に攻撃に、と見切るには身体能力を向上させるその強化骨格が最適だった。

 一瞬、アギトの頬を銃弾が掠めた。危ない、と思いつつもアギトはすぐに体勢を立て直して攻撃を始める。

(一筋縄じゃ、いきそうにねぇな)

 強化骨格型は確かに今の状況では最適だった。だが、それだけではどうしようもないとアギト自身気付いていた。




「きゃあ!?」

「アヤナ!」

 バケモノの攻撃を受止めきれないで、吹き飛ばされてしまったその矮躯をエルダが受止め、体制を無理矢理に保持させる。

 その二人にあっという間にバケモノが攻め込んでくる。

「本当! 難しいよね!」

 エルダが思いっきりいなし、なんとかバケモノを退かして退路を作り、そこを抜けて一瞬の安堵を得ようとする二人。だが、安堵等得られるはずがない。

 バケモノの数はアギト側の二倍、どうしたって休息の地は得られないのだ。

 バケモノは恐ろしく強かった。ただ、ルヴィディアの漆黒に似ているだけでなく、その全てがルヴィディア同様の漆黒の力を得ているようだった。歴戦の戦士で、アクセスキー所有者であろうとも、苦戦を強いられていた。

 遥か遠くからは爆発の様な爆音が響き、バケモノと僅かに仲間が吹き飛んで宙を舞う光景が見えた。一目見て、それがレギオンの攻撃だと気付く。

 レギオンが本気で暴れているのだな、と考えている余裕はなかった。

 バケモノの手に握られる漆黒の剣の刃が、――アヤナの鎌を越えた。

「!?」




「強すぎるでしょ、このバケモノ共ぉおおおおおおおおお!!」

 バケモノとの鍔迫り合いに負け、押されてしまうリリカ。

「リリカ!」

 それに気付いてキューブが大剣を振りかざすが、そこにまた別のバケモノがタックルをくらわし、邪魔されてしまった。吹き飛ぶように転がったキューブはそこに襲いかかって来たバケモノの対処に追われ、リリカを救出するには至れない。

 なんとか足に力を入れ、抵抗を見せるリリカだが、後退する勢いは収まらない。それだけ、バケモノの力は強かったのだった。

 そんなところに飛び込んできたのは一つの小さな影。リリカと同じ団体に属するメルだった。ガントレット型アクセスキーが輝き、眩いばかりの閃光が放たれた。それは物質かの如く質量を持ち、そのままバケモノへと突っ込んだ。閃光をくらったバケモノはその場から吹き飛ぶ。

「アハハ、苦戦してるね。リリカ」

 こんな現状でも相変わらずの調子でそんな事を呑気にいうメル。リリカの手を取って起き上がらせる彼女だが――次の瞬間、彼女の腕から先以外が、吹き飛んだ。

「え……、」

 リリカの動きも思わず止まった。自身が手にするメルの腕『のみ』。そこから先は一瞬の内にバケモノの吹き飛ばされ、消し飛んでしまったのだ。

 気付けば、リリカの目の前にはバケモノが立っている。そして、振り上げる剣。

 だが、そこにまた助けが入る。リリカの目の前で、バケモノが、吹き飛んだのだ。それはもう、音もなく、一瞬で。

 そして見えてきたのはニオの影。僅かにサングラス型のアクセスキーが輝いている様に見えた。

「メルは後で弔う。今は自分の心配をした方が良さそうだね」

 そう言って、今度こそリリカを起き上がらせるニオ。彼の頼もしさは、確かだった。

「……う、うん……」

 ニオの言う言葉はもっともで、リリカは長く一緒に過ごしてきた仲間を失っても、そう頷いて強がるしかなかったのだった。




 ざっくり、と、その白い肌が抉られ、鮮血を噴出した。

 バケモノに身体を斜め一閃に断ち切られた彼女はその場に膝から崩れ落ちる。

「ッ、あ……、う、あ」

 そしてそのまま、前のめりに力なく倒れて、そこに血溜まりを作り出す。

「エルダぁあああああああああああああああああああああああ!!」

 そんな声が響くのは数秒経たずしてだった。


 アヤナの目の前で、エルダがバケモノに断ち切られたのだ。


 窮地に陥ったアヤナを、エルダが庇ってしまったのだ。

 見れば、致命傷だという事は容易く把握できた。だが、アヤナも戦士。すぐに巨大鎌を構えて立ち上がり、眼前のバケモノを力任せに断ち切ってほんの僅かな時間を作る。すぐに倒れたエルダへと寄り添い、アヤナはエルダに必死に声を掛ける。

「大丈夫!? エルダ。……返事しなさいよっ! エルダっ!!」

 アヤナの表情はぐしゃぐしゃに歪んで、涙で瞳は溢れていた。分かりきった事だった。自身が守られたのだ。アヤナがこうなるのは間違いなかった。

 まだ息が微かにあるのか、エルダはうつ伏せに倒れたままだが、小さな声で答える。

「あは……。アヤナ。アヤ、ナ。…………、頑張って、ね」

 ただ、その短い言葉だけ。

「エルダ……?」

 そのアヤナが問い掛けても、既に遅かった。

 エルダの身体は、既に紫色の光の粒子に還元され始めていたのだ。身体が粒子に還元され、宙に舞って消えていくその光景はアヤナを揺るがす理由には十分だった。

 アヤナの背後に二体のバケモノの影。窮地だ。

「エルダ……、そんな……」

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