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10.そして集結する―13


「!?」

 ここアギトが向かう、という事は誰にも伝えていない。アギトが望んでそうしたのだ。それに、ルヴィディアが彼女等を呼ぶ理由は全くと言っても過言ではない程にない。

 アギトが遠距離攻撃を防ぎながら首だけで振り返ると、彼の遥か後方に、アヤナを筆頭とした団体、いや、組織の人間が群れになっている影が見えた。見えてしまった。

「!? ……なんで此処が……ッ!!」

 アギトは絶句した。そして思考。考えれば分かる事だった。中央塔はこの電脳世界ディヴァイドを統括する最高の組織。そこにルヴィディアは連絡を入れたのだ。例え暗号化され、ファイルを開く事が出来ない状態にしておいても、それを解析する事は容易いだろう。

 それにはルヴィディアも気付いたか、忌々しげに漆黒の下の表情を歪めたような気がした。

 それと同時、アギトへと駆けて来る組織達。だが、その間にルヴィディアも手を打つ。

「これは私のミスだな……」

 そう呟いたと同時だった。ルヴィディアの背後に、その先の景色を全て掻き消してしまうかと思う程の数の、大小様々なエラーが出現した。理解はしていたが、アギトはいざそのルヴィディアがエラーを操っているという光景を見ると辛辣に心を痛めたのだった。

 状況は最悪だった。一体一の戦争だったはずが、これでは本物の戦争となってしまう。

「くっそ……」アギトはそう忌々しげに吐き出すと、ルヴィディアの攻撃が一時的に止んだ事を確認して、アクセスキーを刀状へと戻す。視線をルヴィディアへとやると同時、その背後に組織が到着する。

「アギト! 何でもかんでも一人で勝手にしないで話しくらいしなさいよ!」

 当然の如く、真っ先に突っかかってきたのはアヤナだった。その手には巨大鎌のアクセスキー。戦闘体勢は万全だった。

 アギトは視線をルヴィディアへと固定したまま、静かに言う。

「……ルヴィディアとの決着は俺が付けるってんだ。分かってんじゃねぇのかよ」

 静かに言うアギトのその言葉には僅かだが苛立ちが見え隠れしていた。それを感じ取ったか、アヤナは思わず俯く。「そんな言い方しなくてもいいじゃないの……」

 余りに小さな言葉は、アギトには届かなかった様だ。

「アギト。赤毛の女戦士は一人で手に負える相手だとは思えない。僕達は邪魔だろうが、ここは耐えてくれないか」

 そう言ってアギトの横に出てきたのはニオだ。相変わらず純白のサングラスが目立つ。それ以外に武器がない所を見ると、やはりサングラスがアクセスキーのようだ。

 アギトは視線をルヴィディアへと固定したままだ。ルヴィディアの背後を埋め尽くすエラーの渦巻きが急加速し、その中から恐ろしいばかりの数の人間の形を取った漆黒のバケモノが出てきたのを見ながら、アギトは言う。

「アンタにも失望した。……どうせ、アンタが手伝ってあのメールの中身を見たんだろ? 言っとくが俺は優しい勇者じゃねぇんだ。苛立つ時は苛立つ。邪魔だと思う時は邪魔だと吐き捨てる」

「はは。申し訳ないとは思ってるよ」アギトの苛立ちを正面から受けながらもニオは「でも」と言って、続ける。「あの数、最早一人の手に負えるモノじゃない、と僕は思うよ」

「チッ、あれはお前等が出てきたから出現したんじゃねぇかよ」

 アギトのその正論過ぎる言葉は、ニオは聞こえないふりでやり過ごした。彼の表情に浮かぶ笑みは余裕を感じさせた。

「全員が悪いとは思っています。アギト」

 そう言いながら次に出てきたのは、ヴェラだった。その手には槍が握られている。アクセスキーではないようだ。アギトはそれに気付き、ここでやっとルヴィディアから視線を外してヴェラの武器に目をやる。その視線に気付いたようで、ヴェラが否定する。「この武器はアームドです。安心してください」

 アームドはその身にエラーを閉じる力を持っている。これなら心配はないだろう。

 すぐに視線を戻して、アギトは言う。「ハン……。もう状況が状況だ」

「そうだね」と隣のニオが便乗する。

「始めるぞ」

 そんな会話を割って入るルヴィディアの言葉。

 

 そして、始まる。


 ルヴィディアの周りにはルヴィディアの様に漆黒に染まりあがったバケモノ共が犇いている。数で言えば二対一程度だろうか。数では明らかに組織側が劣っていた。ルヴィディアはたった一人で、あれだけの数のバケモノを召還する程の力を持っていたのだ。

「始まるね」

 エルダの声。そして、アチコチからアクセスキーを構える固い音が聞こえてくる。

「仕方ない。行くぞ」

 アギトがそう呟いたと同時だ。

 両者が、疾駆した。恐ろしい数の大群が大地を駆け、そして、衝突する。恐ろしい数の雄叫びと足音が響く。

 バケモノと組織が衝突し、戦闘が入り乱れる中でアギトは辺りを見回す。

(ルヴィディアは何処だ……ッ!?)

 見回すも、恐ろしい数の衝突に視界は悪い。バケモノと組織の景色の中からルヴィディア一人を見つけるのは難しそうだ。挙句、バケモノは漆黒に染まりあがっている。そう、ルヴィディアと同じ様に。

「ッ!?」

 アギトが辺りを見渡しながら振り返ったと同時、正面から恐ろしいばかりの漆黒。ルヴィディアだった。発砲音が炸裂する。

「くっそ!!」

 咄嗟に振ったアクセスキーの刃が偶然にもルヴィディアの放った銃弾を弾いた。偶然ながらもアギトの今までの経験が生きた動きだったのだ。

 そして、衝突。

 アギトの刀とルヴィディアが握る二丁拳銃の銃身が打ち合う。

 ルヴィディアの動きは異常だった。本来の戦闘スキルをさらに生かした格闘術に発砲を混ぜた戦法。アギトはその戦法に苦戦せざるを得ない。攻撃を仕掛けつつ、攻撃を避け、入り乱れるような発砲を避けなければならない。

(どうする……!? 強化骨格に変えるか? だが、アクセスキーを変化させるタイミングを生み出すには今装備してる刀でどうにかしなければ……)

 

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