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10.そして集結する―10


 ミライも成長していた。そして、アヤナも、エルダも。当然、アギトもレギオンも時間を掛けて大分変わった。それだけの時間が流れていた。あの面倒な出会いから時間が経過し、世界を救う旅も終わりへと近づいてきたのか、と全員が確かに感じていた。

 と、そんな時だった。携帯にコールが入ったようで、アヤナはハッと右腕に視線を落す。

 携帯を展開し、コールに応答すると――レギオンの声が聞こえて来た。

「もしもし?」

 アヤナのそんなのんびりした問いに対して、レギオンの声は対照的に焦燥を感じさせていて、

『アギトがいなくなった。何か嫌な予感がするから集まろう。場所は、中央塔。出来るだけ早くきてほしい』

 挨拶もなく、一方的にそう言いきったレギオンは、そのままアヤナの返事も待たずに通話を切った。可視状態へと変更していない状態での通話だったため、エルダ、ミライにその声は聞こえていない。二人は不思議そうに首を傾げていた。

 アヤナは携帯の展開を終了させ、ゆっくりと顔を上げて、二人を見る。その、驚いた様な表情にエルダ達は更に首を傾げた。

「どうしたの?」

 問うエルダに、アヤナは開きっぱなしの口を上手い事動かして、言う。

「なんか、ヤバイかも」




    54




 アギトは一人、戦闘体勢を整えていた。場所はシグマ。この場所はどういうわけか、滅びの世界とでも言わんばかりの光景、焼け野原が一面を支配する場所だった。その雰囲気のせいか、空はやたらと淀んで、燃え上がるように赤く染まって見える。

 沈黙のまま、アクセスキーを構えるアギト。腰から取り出し、一度軽く振って刀の形へと変形させて沈黙する。

 そして、アギトの立つ位置から五○メートル程も先。そこに、一人の女戦士の姿。それは、いわずもがな赤毛の女戦士――ルヴィディア、彼女だった。

 彼女は襤褸とも取れるボロ切れの様なローブを乱数によって発生させられる風に靡かせながら、両手に純白の二丁拳銃を構える。

 そして、風に言葉を乗せてアギトへと届かすように、静かに口を開く。

「来ると思っていた」

 ルヴィディアが中央塔に入れた連絡の内容はこうだ。『シグマ北東の草原にいる』。挙句、その連絡はアギトのみが本文を確認出来る様にしていたため、アギト以外はその事情を知らない。アギトは当然、誰にも連絡、報告をいれやしない。自身で全てを片付けようとしているのだから。

 渇いた風が辺りに靡く。靡くほどの草木もないこの場でも、その風は力強く存在感を示した。

「終わらせてやる。本気で、だ」

 向かい風の中、アギトは静かに呟く。

 それが、合図。

 アギトはその瞬間、アクセスキーを宙に放り投げ、疾駆。その間に宙に浮いたアクセスキーは形を素早く変え、強化骨格型となり、疾駆するアギトを追いかけるように距離を生め、彼の背中に張り付いた。その瞬間、アギトの疾駆する速度は格段に上がる。強化骨格型の補正による加速だ。

 そして、ルヴィディアも動きだす。両手に二丁拳銃型アクセスキーを携えたまま走り出し、走りながら銃を構えて――発砲。

 嵐の様に放たれる銃弾は真っ直ぐとアギトの身体に突き刺さろうとレーザーの如く走る。だが、アギトはそれを見越しての強化骨格型。銃弾の方向を予測し、強化骨格型アクセスキーの補正を十二分に使った動きでそれを避ける。避けつつも、ルヴィディアとの距離を詰める。

 だが、至近距離になれば音速を超える速度で放たれる銃弾を交わすのは難しい。

 アギトとルヴィディアの距離が残り僅かとなった瞬間。

 ――ルヴィディアのアクセスキーが、変化した。

 二丁拳銃を繋げるように持つと、それはアギトのマルチウェポンのように粒子へと還元され、変化し――ショットガンの形を形成したのだ。

「ッ!?」

 まさか自身のアクセスキー以外に形を変えるモノがあるとは思わず、アギトは思わず驚いてしまった。だが、そんな暇はない。咄嗟にアクセスキーを強化骨格型から盾型へと変化させ、疾駆しつつも正面に構える。構えた、瞬間。大地を揺るがす程の発砲音。そして、アギトの構える盾におぞましいばかりの衝撃。

「ぐっ!」

 思わず吹き飛ばされそうになるアギト。だが、耐えてみせた。アギトもまた、成長したのだ。過去のアギトであれば、今の一撃で容易く吹き飛ばされ、隙を生み出し、一撃でルヴィディアに殺されていたかもしれない。だが、耐えた。

 ギッ、とアギトの視線が鋭利に変貌する。

 盾型だったアクセスキーを振って即座に刀型へと変化させて――一閃。だが、ルヴィディアは斜に構えたショットガン型アクセスキーでそれを真正面から受止め、更に、弾いて見せる。

 ルヴィディアはやはり強かった。このたった一回の交わりでアギトはそう感じた。

(やっぱり実力差は埋め切れなかったか……)

 攻撃を弾かれたアギトは隙を生み出さないために、弾かれたその刀が描く軌道を流すように再び攻撃を仕掛ける。

 だが、それもまたショットガンのボディに受止められ、流すようなパリィを受けてしまう。

 機動力か、そう思ったアギトは軌道をなぞるようにアクセスキーをなぞらせながら、軽く振ってナイフ型へと変形させ、ショットガン型アクセスキーを構えるその隙間を突くような攻撃。だが、瞬間、ルヴィディアのアクセスキーは拳銃型へと戻され、その攻撃は弾かれる。そして、銃口がアギトの方へと向き、一発の銃弾が発砲される。

「ッ」

 咄嗟にそれを避けたアギトだが、そこで一瞬の隙が生まれてしまう。そこに、ルヴィディアの拳もとい拳銃の銃身が鉄槌のように叩き込まれる。脇腹を抉るような一撃だった。

「がっ……はっ」

 激痛が横っ腹に走り、全身を揺るがす程に響く。だが、アギトは怯む事を許されない。即座にナイフをふるって反撃。だが、ルヴィディアはそれを銃身で容易く受止め、空いた片方の手でアギトに再び攻撃を叩き込む。

「ッあ!!」

 首下を穿つ攻撃に一瞬呼吸が止まる。

 だが、やはり、アギトは止まれない。アギトのアクセスキーはマルチウェポンと珍しく、全ての状況に対応できそうな異常な力ではあるが、弱点もあった。それは、遠距離攻撃や、それに対応する手段がないという事。

 当然といえば当然だった。ここは電脳世界ディヴァイドで、とおの昔に遠距離武器は衰退して無力とされた時代なのだから。まず、遠距離武器を持つ者と対峙するというシチュエーションがおかしいのだ。だが、アギトは戦わなければならないし、負けるわけにもいかない。

「ぐっ、うおおおおおおおおおおお!!」

 全身を打ち鳴らすような激痛に耐え、アギトは自身を震えた足せるように雄叫びを上げ、アクセスキーを二刀流へと変化させて交差させるXの一撃を正面のルヴィディアに放つ。が、ルヴィディアはそれを重ねる様に構えた銃で見事に受止めて――弾く。

 その反動で僅かによろけながら後退してしまうアギト。そこに、ルヴィディアの銃撃。

「ッ!!」

 アギトは咄嗟に横に飛んでその銃撃を避け、地を穿つ程の脚力でルヴィディアの懐に飛び込む。その間にアクセスキーを強化骨格型へと変化して、飛び込むと同時の右のストレートをルヴィディアへと叩き込む。

 だが、ルヴィディアはまたしてもそれを銃身で受止めてみせた。

 ――だが、流石に強化骨格の威力には押されたか、一瞬の怯みを見せた。それを逃すアギトではない。

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