10.そして集結する―9
アギトの言った『まだ』の意味が、レギオンには分かる様な気がした。
(ルヴィディアとの事か……?)
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その連絡が入ったのは、エラーの爆発的進行が世間一般に中央塔公式の発表で知れ渡ったのとほぼ同時だった。
――『ルヴィディアから中央塔に連絡があった』
珍しくクライムから連絡を受けた事でアギトはすぐに察した。『異常事態なのだ』と。
エラーの爆発的進行。それに加えてルヴィディアの陰。気付けば相等な時間が経っていた。フレミアとの出会いから始まったこの冒険。世界を救うなんて大それた指名を背負ったアギトと仲間達。そしてアクセスキー所有者達。時にはアクセスキー所有者とも戦いもした。まだ終わったわけではないが、長かったな、とアギトは嘆息する。
そして、覚悟。
(ルヴィディア……。決着をつけてやるよ。ヴァイドのためにもな)
アギトは思う、これが、全ての終わりに繋がる気がする、と。
だが、実際は、それは、アギトの思った以上の事態となる。
――戦争が、始まる。
53
「そう言えばミライ、イロイロ変わったわよね。一人称とかさ」
「そうかな……?」
アヤナ達とミライは行動を共にする事となった。これもゲンゾウの意思であり、そして、ミライ自身の意思でもあったのだろう。ミライはアクセスキーを受け取り、そして、アギトの力になろうと当初の目的を達成しようとしているのだ。
そんな彼女達はアギトと今度こそ合流しようと中央塔へと向かっていた。ニオの力あってか、アギトのあの映像はエルダ達も見たのだ。アギトが中央塔に居ることは把握していた。アヤナがヴェラと連絡を取り、中央塔直通の船を借りて、三人は中央塔へと向かう。
船は中型の物で、三人だけが乗るには大きすぎるようだった。その室内で、三人は適当に話していた。
アヤナは言うが、ミライは長旅の中での自身の成長を認識していないようで、首を傾げていた。
アヤナが言う通り、ミライは確かに成長していた。いや、一人で長い旅を乗り越えてきただけで、その成長は見ずとも感じ取れる。
「でも、アヤナちゃんも、変わったよね? 強く、なったような」
「なったような!? アタシだって強くなるよ!?」
「アハハ……。、あぁでも、私と会ってからでも大分変わったと思うし、実際変わってるよ」
励ますようなエルダの姿はやっぱり、保護者という言葉がしっくり来た。
ふと、ミライは首を傾げて、アヤナを見上げながら言葉を落す。
「アギトは、どう?」
その女の子のふとした声に、アヤナは思わず表情を引きつらせた。暫くの息抜きのような時間に、あの予言の事を忘れていたのだが、それを思い出してしまい、呆然としてしまったアヤナ。突然動きがとまったアヤナを見て更に不思議そうに首を傾げるミライ。
大慌てでエルダが間に入り込み、場を誤魔化す。
「アギトも大分変わってると思うよ! 私が会ってからでも大分変わってるからね。多分ミライが最後に見てからだと相等変わってるんじゃないかな?」
そう言うエルダに続いて、やっと自我を取り戻したか、慌てて続く。
「そうだよー! あの暑苦しいコートも新調したしね。強くなったし、雰囲気もよくなったし、優しくもなったし、気もきくようになっ……はっ、」
思わず長く語ってしまいそうになって気付いたか、アヤナはそこで不自然に言葉を止めた。エルダはそんなアヤナを微笑ましげな表情で見る。一方でミライは、ただ不思議そうに首を傾げていた。




