10.そして集結する―7
テーブル席でアギトと向かい合うリリカとビビッド。仲間内にアヤナとエルダと女戦士がいるため、女戦士が二人という見慣れた光景にある種の違和感を感じながらも、アギトは問うた。大人しく問う辺り、警戒をしていないようだ。
「団体とは、アクセスキーをフレミアから譲り受けた有志が集まって作った団体……です、ね。融合武器……アギトが、白の巨大鎌やハンドアックス、強化骨格と仲間を引き連れているのと形は同じだと思います。ただ、拠点を置いて、仲間数を増やす事に重点を置いているのは少し違うと思いますが」
ビビッドの言葉にアギトは続けて問う。聞きたい事だらけだった。
(白の巨大鎌はアヤナ、ハンドアクスはエルダ、強化骨格はレギオンって事か)
「団体の所属人数は。アクセスキーを持つ者はどのくらいいるんだ?」
「団体ってそのまんま団体で、私達が所属する以外の団体も世界中にあるから把握は出来ないけど……、一○○近くはいるんじゃないかな? それ以上居てもおかしくないと思うけど」
リリカのその言葉には、アギトも流石に驚きを隠せなかった。タンブラーを持つ手が思わず止まる。アギトが今まで出会ってきたアクセスキー所有者の中で、まともに取り合えたのは今の仲間達だけだといっても良い。いや、アヤナとレギオンに関しては戦闘から始まった関係でもあり、全てがそうだとはいえないが。そして、他に出会ってきたアクセスキー所有者は結局、殺す他ない関係となってしまった。
だが、リリカ達団体の人間は言う。アギトと同じ志を持ったアクセスキー所有者が三桁もの数いる、と言うのだ。アギトはその言葉に素直に感心し、感激した。
「そう、か……」アギトは手にしたタンブラーを卓上へと置き、言う。「その話しが聞けて良かった。弧心強い」
アギトの本心を察したか、リリカとビビッドの表情が思わず緩む。
そして、リリカが気持ちを切り替え、真剣な面持ちでアギトと向かい合う。
「それでね、本題なんだけど……」
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それは、今まで表立たず行動してきた『団体』の人間にとって、歴史的事象と言っても過言ではない程の事態だった。
アルファに所属するアルファの団体。道中でレギオンとも合流して事情を話し、アギトはレギオンと共にリリカ、ビビッドに導かれてニオのいる団体のアジトへと向かったのだ。そこで話しを進め、アギトは好意的にニオの作戦に協力すると誓った。
そして、作戦の決行。
ニオの準備で撮影用のセットが完了し、アギトの姿を録画し、世界中の団体にその映像を流す、というモノ。
映像は電脳世界の技術だからか、鮮明なモノに仕上がった。
世界中にばら撒かれたその映像が、世界中の団体、アクセスキー所有者へとあっという間に広がった。
ブツリ、と映像はもっともらしいノイズからスタートする。この時間、世界中の団体に属したアクセスキー所有者は全員携帯を展開していただろう。
映像は数秒しない内にアギトの漆黒の姿を見せる。背景が僅かに見えるのみで他に何も確認できないような映像。一応、アギトに反発する者がいる、と過程してニオがそういう映像にしたのだ。僅かでも現在地を特定できるものは、排除した結果だろう。
僅かな間が空いて、アギトが喋りだす。
『俺はお前らの中で話題になっているであろう黒の融合武器、アギトだ。これが証拠』そう言って、アギトは柄状のアクセスキーを取り出し、一度振って刀へと変化させる。その状態はすぐに戻し、腰に戻して、アギトは再び語りだす。『信じる信じないは自由。俺は今、初めて団体という存在を知って、アルファに所属する団体との協力を申し出た。今はここのリーダー核のニオと話し、世界中の団体と話し合いの時間を設けたく、こういう形で連絡をさせてもらった。聞いてくれ。俺は、数人の仲間を連れて世界中を回ってる。それは皆が知ってくれている事だと思う。だが、最近じかに感じる事がある。それは皆も感じているであろう「エラーの侵食が早すぎて、止められない」という事だ。それは事実として、現実として俺達の前に現れている現象だ。いやでも俺達は実感してる。お前等もそうだろう。いや、そうだ。だから、俺達は協力しあわないといけないだろう。いけない。そうだ、絶対に。お前等が知っているかどうかは知らないが、俺達にはエラー以外の問題も山ほど抱えている。バケモノじみた、狂った、俺達のアクセスキー所有者共の相手だったりな……。それはまた別の問題として。……、話し合いからでも良い。俺たちは顔を合わせて互いを認識し、協力しあわないといけない。長い話で悪かった。とにかく言いたい事は一つ。協力しよう、だ。その気があるならこのアドレスにそのまま返信をくれ。以上だ』
そこで、アギトの真剣な表情はブラックアウトした。
全世界の団体へと拡散されたその動画ファイルは、当然、世界中の団体を揺るがした。
ニオの下へと、数え切れない程の連絡が来た事は言うまでもない。
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巨大な、王宮内にでもありそうな縦長の部屋。見た目は豪華に装飾されているが、確かにそこは会議室だった。部屋の造りにあわせる様に部屋の中央に設置された長いテーブルを囲む様に豪華な装飾がされた赤い椅子が並ぶ。縁取られる金が豪華さをより一層演出させていた。
その椅子には、人の影が並んでいる。部屋の一番奥にニオ、そして、その隣にアギト。それ以外には各所の団体から赴いてきた団体の代表が腰を下ろしている。面子は様々で、老若男女問わず様々な顔があった。
その殆どが、アギトとニオに視線を向けている。そこに違和感はない。二人が彼等を呼び起こしたのは何より、アギトというアクセスキー所有者の中でも突飛して特殊な、得意な存在と、サングラス型アクセスキーという滅多に見れない形をしたアクセスキーを持ったニオに回りの者達は視線を這わせずにはいられなかった。




