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10.そして集結する―6


 そして、ストン、とギョクが間抜けに背中から地に落ちた。流石のギョクも驚いたか、一瞬だが、表情を驚愕と変えた。が、すぐに不気味な笑みを貼り付けて薙刀を構えるアギトを見上げる。

「そうこなくっちゃねぇ」

 そう言って、起き上がろうとするギョクだったが、その首元に、二つの刃を重ねられ、起き上がる事は封じられた。見てみれば、アギトが持っているのとは別の薙刀型アクセスキーを構えたビビッドと、レイピアを広い上げたリリカがその刃をギョクの首に添えているではないか。どうやら、アギトの危機を察したようで、二人は協力に出たのだ。

「融合武器! こいつ何なのよ?」

 リリカが怪訝な顔でアギトを見る。

「融合武器って俺の事か!? つーか、なんだお前ら。助かってるけどよ」

「私達はアギト、貴方に会いに来たのです。場を沈静化させてから、私達のお話は進めましょう」

 ビビッドの丁寧な口調に僅かに驚きながらも、アギトは、あぁそうだな、と首肯する。そして、一度の溜息。後に、吐き出す。

「こいつは生かしておくには厄介すぎる存在だ。この場で殺す」

 言いながら表情を険しくさせるアギトを見上げるギョクは、調子付いた言葉で「おっかないわねぇ」と吐く。

 そんなギョクを見下ろして――アギトは覚悟する。

「もとよりお前とは大した関係はない。邪魔なだけだ。早速死ね」

 そう宣告し、アギトは薙刀型アクセスキーをスッと、落とした。




    48




「いや、分かってたんだけどね。本当に」

「そりゃそうだよね。私でも分かってたくらいだし」

 うー! と頭を抱えて悶えるアヤナ。ミライを探し、流れでユートピア大陸へと渡ったのだが――ミライの足跡を見つけられずにいた。当然だ。携帯で連絡先を交換したわけでもなく、ただ、ミライがどこかにいると信じきっての行動。この広い世界でただ一人の少女を当てもなく探す等、無謀な話しである。いや、最早無謀以外でない。


 だが、運の良い事もあるものだ。


「あ」

「あ、」

「あ?」

 ひょんなことで、めぐり合う運命もまた、この電脳世界ディヴァイドに存在するのだろう。

 二人の目の前に、アヤナには見覚えのある小さな少女の姿が現れた。襤褸を纏う幼き姿、それは、舞外なく――ミライだった。

「久しぶりだね、アヤナ、ちゃん? でも、どうしてこんな、ところに? それに、アギト、は?」

「ミライぃいいいいいいいい!! 探してたのよー!」

 ミライの疑問も無視して、アヤナはとにかくミライに飛びついた。絶望の淵から救い出されたかのような歓喜っぷりは、無様で間抜けだった。

 数秒程そんな光景が続いたのだが、困っているミライを見かねたエルダが親猫のようにアヤナをひょいと摘み上げて彼女から引き剥がし、適当な挨拶を交わして事情を説明する。

「え、あ。私を、探してたの?」

 戸惑うミライの言葉に興奮して何度も首肯するアヤナと一度だけ確かに首肯するエルダ。

 やっと落ち着いた、というところでアヤナはさっそく本題へと移る。

「ミライ。これ」

 そう言って、アヤナがローブの懐から取り出したのは――杖状のアクセスキーだった。

 この光景には、流石のミライも驚愕したようで、そのもとから大きな目を見開いてアクセスキーを見詰めて固まってしまった。暫くの後、震える声でミライは言う。

「なんで、それ、が……。お父さんに、託した、はず、なのに……」

「でも、ゲンゾウが、ミライに渡してくれってさ」

 そう言って、拒否の色をチラつかせるミライに一方的に押し付ける形でアヤナはそのアクセスキーをミライへと渡す。そして、続ける。

「とにかく、ミライ。そのアクセスキーはアンタのだから」

 そう言って、笑むアヤナ。何かを成し遂げたような、誇らしい笑みだが、出展不明の笑みである事はいなめない。場の雰囲気に流されて様になっているが、どうにもしまらないようで一歩下がった位置にいるエルダは苦笑していた。




    49




「団員?」

 アギトは眉を顰めて怪訝な表情を浮かべてリリカとビビッドを見た。ギョクを『始末』したアギト達はとりあえず話しをしよう、とニューの適当な飲食店へと入ったのだった。当然、あれだけの騒ぎを起こした身。あの場所からは大分距離をとってから、店を選んだ。

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