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10.そして集結する




10.そして集結する




「やほ、おひさし」

 よっ、と挨拶してアヤナとエルダが赴いたのはベータ。そう、アヤナとエルダが訪ねたのはまだ、エルダがアギト達の仲間になる前に一悶着あった、レジスタンスアジト――ではなく、ベータの国の王宮だった。

 王宮は新設した物でなく、フレギオール派が、アルゴズム派がまだ存在していた時に国王であるアルゴズムが使用していたものを再利用したモノである。

 あの戦いによってフレギオールがいなくなり、レジスタンスが『責任を持って』国を管理するようになって、再建している途中なのだ。

「おぉ、アヤナちゃん……!? 久しぶりだなぁ」

 そんな呑気な声で、二人を出迎えたのは、クロムだった。ディヴァイドによって設定された最高年齢二三ながら歳を感じさせる物腰は懐かしい姿だった。

「そちらは?」

「エルダね。アタシ達の仲間」

 そうして適当な自己紹介を済ませて、早速、とアヤナは本題に移る。

「ゲンゾウの顔も『一応』見てみたいけど、その前に、聞きたいんだけど……ミライは?」

 すると、クロムの表情が一瞬歪んだ。しまった、とでも言いたげな表情を二人は身のがさない。

「どうしたの?」

「……、まさか、」

「まさか?」

 困惑し、頭上にクエスチョンマークを浮かべて首を傾げる二人。そして、一人表情を強張らせるクロム。

 暫くの沈黙とその背後に流れる気まずい雰囲気。そして、クロムはやっと言う。

「……とりあえず、ゲンゾウに会ってみようか……」




「えぇ!?」

 まず第一声はアヤナの悲鳴だった。隣に並ぶエルダはイマイチ話がつかめていないようで、首を傾げている。そして、二人の前では頭を抱えるゲンゾウ。

 ここは王宮の最深部で最上部。王の間だ。そこに広がる巨大な机にかけるゲンゾウはどうにも情けない。そして、傍らには純白の杖。それは、アギト達が始めて対峙したアクセスキーだ。

「……もう、君たちと合流していたかと、思っていた……」

 そうして、また頭を下げて落ち込むゲンゾウ。

 そうだ。ミライはアギト達がベータを出た後、彼等を追って行ったのだ。だが、最高年齢二人に追いつける程の身体を持っていない少女ミライは、二人に追いつく事が出来ず、今も何処かを放浪しているのだろう。

「ってかなんでアンタがアクセスキー持ってるのよ!? アギトがミライに托したじゃない!!」

「あの後ミライから托されたんだ……事実だ……」

 悲惨だった。アヤナがヒステリックに喚き散らし、事実から頭を悩ませるゲンゾウ。そして、話しに着いていけていないエルダと王宮の従事達。

 とんでも展開とはまさにこの事。アヤナは、うがーっ、と頭を悩ませる。

 アギトに殺されない方法を模索したがオラクルに無理だと告げられ、ギルバをアギトに殺された。そうして、打つ手をなくして、アヤナはミライにでも会おうかな、と息抜きをしにきたのだが――この通り。

「よし、……まだ、アギトから連絡はないし……、エルダ」

 そう言って、長身のエルダを見上げるアヤナ。エルダのきょとんとした表情がやたらと印象的だった。

「ミライ、探しに行くわよ!」

 意気込んだ言葉を放つアヤナに、エルダは苦笑しながら、「りょーかい」と、言うのだった。当然、内心では、良く判らない、という気持ちと、えぇー、という言葉がこだましていたのだが。




    45




「リリカ。ニオから連絡がきてます。携帯を開いて確認してみてください」

 特別に用意した船にて、エルドラドからディストピアへと向かっていた団体のリリカとビビッド。ミューにいるとされるアギトと接触するつもりの二人なのだが、

「なんじゃこりゃ」

 リリカは携帯の画面に表示されるメール画面を見て、間抜けにもそう呟いた。ニオから送られてきたそのメールの一文は『アギトがさらわれた』というモノ。詳細も書かれていないそのメールにリリカは眉を顰めて頭の両サイドで纏めた髪を揺らした。

「どゆことかしら、コレ?」

 不可視状態だというのに携帯を指差してビビッドに疑問の視線を投げるリリカ。返される「わかりません」という言葉にリリカは頭を抱える。どこかの白い少女と似た様な境遇だった。

 リリカは乱雑な動きで携帯を操作して『詳細を送って』と、ニオに返信する。

 リリカ達は船で移動している。もし、アギトの身が何処か別の大陸にでも移動されていたら面倒な話しだが、そう簡単に進行を止めるわけにはいかない。

 ともかく、と二人は船が進むのと、ニオからの連絡を待つ。

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