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9.阻害された場所へ―15


「つまり、黒の融合武器を味方に引き入れて、その知名度を利用して世界中の私達みたいな所有者団体と連携を図ろうって事ね」

 リリカの一言に、キューブ以外が頷き、キューブは一人、あぁ、とやっと納得して頷くのだった。

 ニオを筆頭に集まる彼等はアクセスキー所有者の『団体』である。始まりはアギト達と同様、アクセスキー所有者を見つけて、という形だが、彼等の様にしっかりとリーダーという上の存在を決めて、団体として集まる辺りがアギト達とは違う。団体は互いに情報のやりとりをし、アギト達の様な言ってしまえば適当な集まりとは一線を敷いた計画的なやりかたで、世界の危機と戦っていた。

「でも、さぁ。黒の融合武器が私達みたいな団体に入ってくれると思うわけ? 正直、黒の融合武器はソロでもやってけるくらいの実力があると思うけどー」

 メルの考えに、確かに、と思う一同。それに応えたのは当然ニオだった。

「確かにそうだね。僕達と違って黒の融合武器は相等な力を持ってる。単体で龍を倒せる龍騎士なんていわれてたくらいだし、それに、特別製のアクセスキー。強くないわけがないね。でも、仲間にならないって意思が見えたわけじゃない。確かに、そんな風に見えるけど。それに、仲間にならなくても、同じ世界を救う者として名前を貸し借りするくらいは彼でもしてくれるんじゃないかな?」

 そう言って、ニオはメルに首を向ける。そうかもね、というメルの言葉で、一旦話しは終わった。そして、さて、というビビットの言葉で話しは再開する。

「誰が、黒の融合武器に接触しにいきますか? 黒の融合武器がエルドラドに戻ってくるという確証はないです。それに、私達は基本このアジトを移動させない。誰かが、赴かなきゃいけませんよ?」

「それは考えてある」

 ニオの返事は早かった。ニオの視線は二人の仲間へと向けられる。

「リリカとビビッド。頼むよ。本当は僕が行きたいけど、僕は情報伝達の席から離れられそうにないからね」




    43




「見つけたぁ……」

「……嘘だろ……オイ」

 アギトは思わず戦慄した。アギトはレギオンの手助けに向かおうと、一度出た施設内に戻ろうとした。ただ、施設に入ろうとしたともいえる。だが、その時だった。アギトが施設入り口に届きそうになるその一瞬。アギトのすぐ目の前に――一人の美女がどこからか出現し、降り立ったのだ。

 スタン、と華麗に着地するその様はとても美しく、だが、強さを示しているようでもあった。

 恐ろしい程に妖艶な容姿に、怜悧さを感じさせる表情。身長はすらっと高く、アギトと同じくらいであると見える。眦の鋭い切れ長の目で、明らかに他はない美女だった。水着の様な下着をチラつかせるように余りに頼りない装飾がメインの鎧がまた目立つ。

 アギトの頬を冷や汗が津伝う。気付けば、コイツとは会いたくなかった、と表情に書いてある。

「久しぶりの再会よ……もう少し、喜んでもいいんじゃないかしら?」

 そう言って、握手を求めるように右手を差し出して数歩迫る美女。だが、アギトは即座にバックステップで距離を取った。そして、刀状のアクセスキーを握る右手に力を込め、その切っ先を美女へと向ける。

 焦燥が感じられる表情。そんな表情は本当に危機的状況でなければ見せないアギト。この状況はマズイ、そう言いたげだと感じられた。

「お前が俺に会いに来たって事は……『俺を殺しに来た』んだろ? 分かってんだよ。俺は今、ころされたらマズイってんだ。戦いたいなら今度にしてくれ……つっても、お前はそんな話しを受け入れるような人間じゃないだろうがな――『ギョク』」

 そう。アギトは彼女を知っていた。

「あらぁ……分かってるなら話しは早いわぁ……」

 そう言って、彼女――ギョクは腰に手を回して、何かを取り出す。その、取り出された何かを見て、アギトはやはりなと頷いてしまう。ギョクが取り出したそれは――アクセスキー。

 ギョクは七人の龍騎士の一人だ。そして、アギトと張る力の持ち主である。七人の龍騎士の中でもアギトの力は異様だった。正確にいうなれば戦闘センスが力と相まって、という形なのだが、それは良い。ギョクは、単純な力だけでアギトと肩を並べるような、云わばバケモノだ。そんなギョクはひたすらに戦い、そして、ただ人を殺す事に快感を覚えるバケモノとなってしまった。エラーが出現するまでは人が死ぬ事のなかった世界だ。それに、ギョクの強さは異常で、誰一人としてギョクを捕まえる事が出来なかった。

 ――そんなギョクを最初に打ち倒し、制止させたのが、アギトだった。

 力の渇望から、アギトという強者を倒そうとしたギョクが返り討ちにあったのだ。だが、その戦いで、アギトは相等苦戦していた。何か一つでも状況が違えば、アギトが負けていたかもしれないような血みどろの戦いだった。

 だが、アギトが勝ってしまったのも事実。

 その事を根に持ち、恨み、アギトを追い続けたのが――今のギョク。

「フフフ……、やっと、お返しが出来る日が来たのね……」

「ッ」

 ギョクの持つ『メリケンサック』型のアクセスキーにアギトの視線は釘付けだ。

 彼女は危険だ。そう知っているアギトは彼女との交戦を望まない。アギトもそれなりの力を持つが、常識のある人間だ。だが、ギョクは違う。常識を取っ払い、力を求める異常者だ。故に、強いともいえるのだが。

(戦うしか、ねぇのか)

 アギトは歯噛みする。倒す、という選択肢を取るしかないこの状況に苛立ち、焦る。

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