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9.阻害された場所へ―10


 そこでくるりと器用に鎌を回転させながら、鎌を構えなおす。

 そしてまた、疾駆。そして打ち合う互いの刃。交じり合う三本の刃。悪魔がギルバと融合してくれたおかげか、アギトは攻撃の転機を得るようになってきていた。だが、攻撃を与えてもダメージとならないのだった。

「くっそ、固いな」

 悪魔と化したギルバの腕を叩ききる勢いで一撃を振り下ろすが、それは再び弾かれた。アギトは忌々しげにそう吐き出し、また、攻防を繰り返す。

 刃の振られる速度が速すぎ、景色に軌跡として残る。施設前広場の地が穿たれ、最初と比べて大分荒れたようだ。それは、竜巻が通り過ぎたかのようである。

 アギトは次々と攻撃をギルバの身へと叩き込む。だが、どうしてもダメージにならない。仮に死ぬまでのダメージを数値かするとしたら、1も削れていないじょうたいだろう。もしかすれば僅かでもダメージを与えているのかもしれないが、アギトはそうは思っていない。

(どうしろってか)

 アギトは冷静だった。めくるめくる襲い掛かる刃の乱舞を受け、攻撃を仕掛け、反撃しながらアギトは打開策を考えていた。どうすれば、ぶち壊してやれるか、と。

 アギトの鎌は恐ろしく早い速度で打ち上げられた。すると、ギルバの左手の剣がギルバの手から離れて宙を舞い上がりながら、飛んで行った。

「オラッ、」

 そして振り向き様のもう一撃を叩き込むと、右手に握られていた剣も吹き跳ぶ。すると、ギルバの手に武器はなくなる。

 だが、それでも悪魔と化したギルバは不気味すぎる笑みを表情に貼り付けて言う。

「それで、どうするってんだ?」

 だが、アギトも何も考えていないわけではない。

「こうするんだ」

 アギトは鎌を持った右手で拳を造り、思いっきり引いた。すると、手中のアクセスキーは光の粒子へと分解され、一瞬の内に強化骨格となり、アギトの体に張り付く。そして、当然の一撃。

 恐ろしい一撃がギルバの水月に突き刺さる。

 強化骨格の補強が入ったアギトの拳は恐ろしい力をのせ、恐ろしい速度でギルバの腹を叩いた。だが、固い感触。

「オ、オォオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 だが、アギトは諦めない。そのまま、力任せに、押し切ろうと踏ん張る。補強された足で地が抉れる程に踏ん張り、拳を押し出す。叩いて割る事は出来ずとも、押し、飛ばす事くらいは出来るのではないか、という憶測、賭け。

 だが、二人を囲むのは全てを吸い込み、消滅させようとするエラーだ。そこに、ぶちこんでさえしまえば、アギトはギルバにダメージを与えずしても勝利する事が出来るのだ。

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 そして、衝撃は一点に集中し、ギルバを圧す。

「グウッ!?」

 そして、初めて、ギルバは表情を歪めた。悪魔の歪な表情は確かに歪み、数歩、後ずさった。

 その瞬間にアギトは再び疾駆。更に、追撃を掛ける。アギトの拳が再び打ち出される。

「ッ、」

 それを、ついに両腕で防ごうと胸の前に腕を持って来て構えるギルバ。交差された腕の中心に、アギトの補強された拳が突き出される。

 恐ろしい程の破壊力が、その衝突点から生じる。それは一瞬の内に拡散され、辺りを揺るがす。

 アギトの攻撃は防がれる。だが、アギトは止まらない。即座に右拳を引き戻し、次に、左拳を突き出す。そして次は足を上げ、強烈な右足の蹴りを突き出す。当然、ギルバもそれを防御する。だが、アギトはやはり止まらない。

 アギトの右の蹴りは次々と繰り出される。それは連続でギルバを襲い、圧し切る。連続付きとでも言わんばかりの連続攻撃にギルバは耐えられない。

 確かに、ダメージになっていないと思える。だが、確かにギルバは後退していた。

 そしてそのまま、数秒間のアギトの一方的な攻撃が続き――決まる。

「オォオラッ!!」

 最期の一撃はアギトの右拳だった。アッパーの様な一撃は確かにギルバの顎を下から捉えて、その身を打ち上げた。

「くそぉおおおおおおおおおおおおあああああああああああああ!!」

 そこでようやく、ギルバは本当の叫びを上げた。危機を察したのだろう。

 ギルバの打ちあがった体は、壁と天井を繋ぐ斜面を作るエラーと、接触した。同時、ギルバの体はガクンとエラーの中へと沈むかの如く、その身の半分を、エラーの中へと沈めた。

「ぎゃ、ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 ギルバの悪魔の雄叫びが炸裂し、エラーのドームの中で響く。

 ギルバは渦巻くエラーに吸い込まれそうになっている今もなお、もがいて、エラーから這い出ようとするが、無駄な抵抗な様だ。

 アクセスキーを刀へと変化させてその切っ先をエラーに身を沈めるギルバへと突きつけ、アギトは睨む。

「終わりだ」

 すると、ギルバも察したか、無駄な声を沈め、再び、最早何度見たか分からない不気味な笑みを表情へと貼り付けて、微笑した。

「ギヒヒッ!! いいぜェ……。黒いのォ。お前に殺されるのならば本望だってなァ!!」

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