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8.人間という名の武器―13


「それぞれ適当にうろついてんだろ。俺みたいによ。偶然エルドラドにいたってだけで、実際は一人を除いてエルドラドに特別こだわりはないからな」

 対してアギトは素っ気無く、適当に応えた。

「一人?」

「キバって奴がな、エルドラドの正式な所属の騎士になった。それ以外の連中は、所在すらわからねぇよ」

「へぇ」

 聞きたい事は以上でしまいか、アヤナはそこで会話を終わらせた。

(にしても、アームドより武器じゃねぇか。アギト……)

 アギトを一歩下がった場所から見ながら、レギオンは秘かにそう思ったのだった。




   31




 アームドの感謝の意、悪く言えば掌返しは早かった。あれだけの巨躯を誇る龍を打ち倒したという経歴は間違いなくアギト、レギオンに付加され、それを讃えるアームド達の姿。

 アギト達は当然のこと、と言いつつ、まんざらでもなかったのだが、レギオンが異常なまでに素っ気無く拒否の色を示したがため、アギト達はそそくさとその場を離れたのだった。

 そうしてアアギト達がも度々って来たのはレギオンの事務所だ。既にレギオンはアギトと旅をする事を決め、店終いを済ませてあり、殺伐とした景色が広がっていた。

 落ち着いたらここを出よう、というアギトの提案が決定した。

「はぁー……、つかれたぁ」

 固い床にポスンと腰を下ろしてアヤナがうな垂れる。

「そうだね」

 ニコニコと楽しそうに笑みながら、アヤナの横で立っているエルダ。その姿からは想像も出来ないであろうが、彼女もまた疲弊していた。ただ、アヤナを微笑みの目で見ているのは、自然と出来た立場からである。

「で、武器職人だっけか? そいつん所行ってどうするんだ?」

 壁に寄りかかって腕を組み、フードの下に表情を隠していたレギオンが問う。

「アクセスキーを見てもらうんだよ。元々ここに来たのだってアクセスキーをもっと知ろうと思ってが故だからな」

 強くなるためには、自身の腕となる武器の事も熟知しなければならない。そう、アギトは信じている。

 アギトはそのまま部屋のほぼ中央に腰を落とした。腰にぶら下げた柄状のアクセスキーが床にぶつかり、固く小さい音が事務所内に響いた。

「それにしても、それ、凄いよな」

 そう感心したように言いながら、レギオンは壁に寄りかかっていた体制を起こして、アギトの近くまで寄り、アギトから数歩離れた場所で腰を下ろした。そして視線をアギトの腰にしまわれているアクセスキーへと向ける。

 そして、一人でに呟く様に話しだす。

「複数人だな。このアクセスキーには複数人分の魂を感じる。恐らくは……、その中に眠る武器の種類の数。もとより一人で複数の武器に変身できるアームドはいない。恐らくはアカシック・チャイルドである俺くらいだろう。フレミアは、一つのアクセスキーを作るために数人、数十人のアームドを使ったんだろうな。そう考えると、マジで感心するぜ」

「そうなのか」

 レギオンの言葉にアギトは自身のアクセスキーを感慨深そうに見る。視線を落としたその先、純白の柄は、ただ一見すればただの無機物である。だが、その中には、確かに人の鼓動が宿っている。それも、複数の、だ。

(フレミアはルヴィディアの銃、フレギオールの魔法の杖、と強力なアクセスキーを作って托したが、上手くいかず、それを越える『かもしれない』アクセスキーを作って俺に託した……。俺に、か)

 アギトはアクセスキーから視線を外して天井を仰ぎ、嘆息する。

「これからまだ、やる事は沢山あるよな」

 皮肉めいた言葉を吐き出す。

 これからはイオタへと向かって武器職人へと会う。そして、問題としてプライドの事。セオドア・クラークの事。ルビディアとの戦いにギルバとの戦いも控えているだろう。

 ルヴィディアとの戦い、アギトはそれを想像しただけで鳥肌を立たせる。勝てるのだろうか、と疑ってしまう。アギトは今、今の自身の力では、ルヴィディアに勝てないと思っている。だから、だからこそ、アクセスキーを知り、自身の力を高めようとしている。

 ――ルヴィディアに勝つために、アギトは邁進する。




   32




 アームドの見送りはパレードのようだった。一部の人々は仲間を失った事に打ちひしがれていたが、その他はアギト、もといレギオンへの感謝を示している。だが、レギオンはその掌の返しように呆れを示すばかりで、素っ気無い旅立ちとなったのだった。

 イオタへと向かう方法は徒歩だ。今まで徒歩でのた旅を続けていたアギト、そして体力を誇るレギオンにとってそれは大した問題とはならなかった。

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