7.告げられる形―13
そして、エルダの武器とプライドの武器が衝突する。だが、その瞬間だった。小物過ぎる火花が炸裂し、エルダが押し切ってプライドを仕留めたか、と思ったのだが、そうは、行かなかった。突如として、二つの武器の衝突点が爆発したのだ。
衝撃と爆風が拡散する。
「きゃあ!?」
突如として起こった爆発にエルダは思わず身を怯ませた。挙句、爆発はエルダを押すような勢いで衝撃を向けていて、エルダは容易くも押し返されてしまったのだった。
「むう!?」
が、その爆発にはプライドも同様に驚いていて、場の雰囲気は異質なモノへとなった。
だが、すぐにその正体も明瞭になるのだった。
「スキルね……」
今の爆発からは離れていたため、傷一つ負わなかったアヤナが先の光景を見て忌々しげにそう呟いたのだった。
そうだ。今の爆発はプライドの所持するアクセスキーによるモノである。爆発を好き勝手に起こし、推進力、起爆剤としての力を得る爆発能力なのだ。
アヤナの呟きを聞いたか、プライドは自身のアクセスキーに視線を落す。そして、試す。
プライドは距離のある内に、と右手をアクセスキー事思いっきり地面に叩き付けた。すると、だ。そこから爆発がおき、煙が巻き上がる。それはあっという間に天まで昇り、拡散し、プライドの姿を容易く隠したのだった。
それが、プライドの狙い。
「逃げる気!?」
エルダがすぐに気付いて煙の中へと突っ込むように疾駆。そして、アヤナも続く。だが、二人が煙の中へと到達するよりも前に、煙は木々の間を駆ける風に流されるようにして、消えてしまうのだった。当然、その場にプライドの姿はない。
「くっそ、逃がしたわね……」
その光景を見回して、アヤナは忌々しげに吐き捨てた。
「そうだね」
エルダも辺りを見回してそう呟き、アクセスキーを懐へとしまいこんだ。
そして、言う。
「プライドはギルバのところへと向かってる。私達も、戻ろうか。連れて着といてなんだけどさ」
アヤナは首肯して応える。
「うん。そうね」
して、二人は早急に走り出したのだった。
22
事が動いたのは一時間を越えた戦いの果てである。
「オォオラッ!!」
持久戦を制したアギトがギルバの手中にあるアクセスキーをついに弾き飛ばしたのだ。鉄の打ち合う甲高い音が炸裂し、それに合わせるようにギルバの手から剣状のアクセスキーは跳び、宙を舞った。
「今度こそ!」
「ギヒッ、」
だが、それでもまだ、ギルバは笑む。
アギトの刀状のアクセスキーがギルバの腹部を貫こうと迫る。対してギルバはまた弾いて喧嘩へと持ち込もうとする、だが、
「甘い!」
アギトは二度も同じ手をくらわない。ギルバの手が伸びてきたその瞬間に、アクセスキーを盾の形状へと変化させる。すると、盾の外でギルバの拳と立てが打ち合う音。それと同時、アギトは再びアクセスキーを変化させる。そしてその形状は鎌。刃の外側に大きな棘が五本生える様にして付いている異質な鎌だ。
アギトはそれを振り切る。
アギトの全力で振り切られた鎌の内側に、ギルバを巻き込むようにしてアギトは鎌を斜め一閃。すると、だ。流石に反応が出来なかったか、ギルバは刃に巻き込まれ、アギトのすぐ足元に叩きつけられるようにしてうつ伏せに倒れた。
「ぐっあ!」
ギルバが落ちたその瞬間、アギトはアクセスキーを即座に刀状へと戻し、そして、そのまま――突き刺す。刀を逆手に構え、アギトはうつ伏せに地に平伏せたギルバの背中へと、容赦なく刀を突き刺したのだ。
刀はさっくりと落す様にしてギルバの身体を貫き、そして、その下の地面へと切っ先を埋めた。
「ぐっ……が、あああああああああああああああああああああ!!」
身を貫く刃の傷は流石に痛むか、ギルバはここに来て初めて、心からの痛みを咆哮として訴えたのだ。ギルバの悲鳴は暫く続く。
「がっ、はぁ、はぁ、はぁ……。いってぇなァ……この野郎……。やってくれるじゃねぇかよォ、黒いのォ……」
背中に刃を付きたてられ、動けないと悟ったか、ギルバは抵抗をやめ、視線だけをどうにか上へと上げてそう吐き捨てた。だが、その視界にアギトの全貌は映らない。強いて言えばブーツの先が入る程度だ。
「黙ってろよ。大体まだ生きてるってバケモン染みた姿晒してるお前の方がやってくれる、だわ。白いの」
ギルバの視界から外れた上の方から、そう、アギトの言葉が落とされる。そして、身体を貫く刃に力が込められ、肉を引きちぎるかの如く半回転ねじられる。
「……ッ!!」
ギルバの表情は苦痛に歪む。だが、すぐに強がりを貼り付けた面を被りなおすのだった。
「ギヒヒ。……さぁてねェ。で、どうすんのよ?」
「どうするって殺す以外にあるかよ。ボケ」




