プロローグ2
幼馴染の西藤幸哉とは記憶のない頃から一緒だった。
親が若くして買った新興住宅地の建売だった我が家。
そのお隣さんが西藤家だった。
まず親が仲良くなり、お互いに両親が共働きということもあり必然的に遊ぶようになった。
幸哉は一人っ子だが、俺には弟がいるので小さい頃は3人でよく遊んだなあ。
だが近所にあるとゆう理由で中学から私立の男子校に一緒に入ったことから、2人の時間が断然増えたのだった。(弟は男子校を嫌がり公立に通っている)
出会いはいつの間にかだったけど俺と幸哉は本当に仲が良くて、お互いマイペースなのに喧嘩もほとんどしたことがない。
ただ傍にいるだけで無性に居心地がよくて、暇さえあると理由もなく一緒にいる様な関係だった。
頭のいい幸哉と猛勉強して奇跡の合格を果たした俺は、進学校に入学して秀才と落ちこぼれとステージこそ違ったものの、学校生活は楽しくやっていた。
エレベーター式に無事に高校生になり、相変わらず幸哉とも一緒につるむ日々。
むしろ一緒なのが当たり前過ぎて家族よりも親しく、それでいてどこにでもいるような普通の親友、最高の幼馴染だった。
あの男子校に入って5度目の夏休みが終わる前までは。
8月31日
「幸哉はさ、夢ってみる?」
この日俺たちはくだらない話をしながらテレビを見ていた。
嘘。
正確にいうと終わっていない俺の課題を無理やり手伝ってもらっていた・・・。
朝から何とか一人で課題を終わらせようと頑張ってみたものの、諦めたのは夕方。
毎年恒例のようにやってきた俺を冷ややかな顔をしながらも、幸哉は家に入れてくれたのだった。
途中に夜ごはんまで頂いたもんだから、課題があと少しで終わる!という頃には外が真っ暗だった。
「?なに、いきなり」
「いや、最近同じ夢を何度も見るんだよね」
部屋にはテレビの音とカリカリとシャーペンの音がする。
俺は夏休みをエンジョイし過ぎて普段は思い出せなっかた『夢』の話をふと思い出した。
幸哉は目もくれない。
俺も本当にふと思い出しただけだったから、気にもしなかったけど。
「同じ夢…?俺は夢をほとんど見ないからな…」
「ええ!?夢見ないの、お前」
「そんなにびっくりすること?」
「びっくりでしょ。俺超見るもん、夢」
俺が鼻息荒く顔をあげると幸哉もちらりとこっちをみた。
「で?その夢がどうしたの」
「あ?ああ…小さな頃からたまーに見る夢だったんだけど、夏休みに入る前後から急に見る頻度が上がって、ここ最近ではその夢を毎日見るんだ」
幸哉がおや、とまた顔を上げる。
それがとても不思議な夢で。
気づけば真っ暗な場所に立っていて、ぼやーっと一か所が明るくなったと思ったら、徐々に俺と同じ年くらいの男が現れるのだ。
俯いていて顔はよく見えないのだが、金髪に近い明るい髪が風でサラサラと揺れている。
何事だとそいつを擬視していると、今度はそいつの洋服が腹からじわーっと赤く染まりだすではないか。
あっという間に男の服は血だらけになるのだが、ぴくりともせずに突っ立っている。
これはやばい。救急車を呼ばなくちゃ・・・!
と俺は毎回焦って携帯を探そうとするんだけど、なぜか体は指一本動かないのだ。
男はゆっくり顔をあげるが、顔まで血まみれで表情がよく見えない。
一つだけわかるのは男が泣いているということだった。
「助けてくれ・・・」
男が消えそうな声でそう呟くと俺に向かって左手を伸ばすのだが、いつもここで目が覚めるのだ。
なんでだろう・・・怖い夢ではない。
不思議と小さな頃からこの夢を怖いと思ったことはなかった。
「・・・どう思う?」
幸哉は眉間に皺を寄せながらしばらく固まると、
「アンビリーバボー」
とだけ真顔で言った。
「だよなー。アンビリーバボーだよな」
俺はシャーペンをポイッと机に放り投げると、んーと伸びをしながらそのまま床に寝そべる。
やっと宿題が終わったのだ。
久しぶりに長時間勉強したので、肩がガチガチだった。
気になってはいたけど気にも留めなかった夢。
それは小さな頃から見ていたからだろうし、それがおかしなことだと気づいたのは夢を毎日見るようになった最近だった。
「・・・同じ夢を何度も見るだなんてまずありえないし、血まみれの男が怖くないだなんてむしろそんなお前が怖いし、こんなインパクトある夢を今まで放置してきた椎太の精神力は強いとゆうかおかしいとゆうか」
「おい、人をおかしなやつみたいに言うなよ」
「椎太は昔から変に図太いもんな」
「神経質に言われたくないわ」
そう言ったところでおでこにコツッとシャーペンが降ってきた。
「いてー」
「終わったぞバカヤロー」
幸哉もうーんと伸びをすると机の麦茶を飲みほした。
「ありがとう、親友」
「はいはい。でもその夢、普通じゃないよな。お前のご先祖さんで殺された人とかいるんじゃない?」
「えー、いないよ。しかもご先祖さん金髪って。手に刺青まであったし」
「刺青?」
「うん。最後に俺に手を伸ばす時に見えるんだよ、掌に」
「掌に?聞いたことないぞ。それ尋常じゃない奴だな。もうそれ椎太が頭おかしいだけじゃなくて」
「おかしくねーって。ほんとなんだけどな・・・」




