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昭和系・短編集

【掌編小説】少女Aと嶋大輔もどきが恋に落ちて

掲載日:2026/10/04

 令和になってもド派手成人式がニュースになるくらいだから、昭和時代の北九州のヤンキー文化はコテコテに濃かった。当時はヤンキーというよりもツッパリという言葉を使っていた。でも、本当に彼らは突っ張ってたのか?って思う。


 同じ福岡県でも博多はミュージシャンなどを輩出する。一方で北九州は、人口比を勘案しても、かなり博多に見劣りする。北九州のヤンキーは、ツッパリの格好をして目立つことがゴールだと思っている節がある。表現活動は目立つことがスタートで、そこから先は中身勝負だと思うのだが……。そういう愚痴を言いたくなるのが北九州のヤンキー・ツッパリ文化かも知れない。


 昭和時代、今よりもヤンキー文化が華やかな頃の北九州では、そこそこ成績のいい、真面目な生徒でも、ファッションに興味があると、入学を機に高校デビューすることがある。そして言うのである。

「この髪の色は生まれつきです」

「このチリチリ頭は天然パーマです」


 流行を追うだけなら、テクノカットにでもすれば、校則に引っかからないのかも知れない。でもその発想はない。ヤンキーに見えなければファッションが成立しないと信じている。ヤンキーでも聖子ちゃんカットは多かったが、それではヤンキー認定されないから髪色をいじる。

 家では親が子に言うのである。

「テストの学年順位が〇〇位以内なら、そういう格好を許す」


 県立の中堅普通科高校に入学した藤島隆は、そんな生徒の一人である。髪の毛をチリチリにして入学してきた。ちょっとの間だけサッカー部で頑張ったが、キツくなってやめた。そして、チリチリ頭がそこそこに長くなった段階でリーゼントにした。タレントで言えば、嶋大輔みたいな髪型になった。


 藤島は中森明菜ファン。当時のアイドルは髪の毛をカラーリングすることは稀で、明菜も黒髪だったが、アイドルには珍しく不良性で人気の出たアイドル。だから藤島は、高校入学して間もないうちに、髪の毛が赤茶けた女子が気になった。彼にとって、その赤毛女子は「少女A」だった。


 女子の名前は松田恵美子。彼女も高校デビュー。タレントの誰かを意識したわけではないが、なぜか髪は赤くした。色白だから、自分には赤が似合うと思ったのかもしれない。普通のヤンキー女子は、金色系の茶髪だから赤系の茶髪は目立った。なお、松田は髪色以外は普通の生徒だった。むしろおとなしめといってよい。


 偶然だが、松田は嶋大輔の熱烈なファン。だから、藤島隆と松田恵美子はよく言えば運命の二人、悪く言えば破《わ》れ鍋に綴《と》じ蓋《ぶた》……。夏休み前には付き合い始めた。

 同級生は二人を見て、あやうさを感じた。あまりにも偶然の趣味の一致。藤島は、松田の中に少女Aを見ている。松田は藤島の中に嶋大輔を見ている。二人ともアイドルの代替と巡り会ったのだ。「こんなの長続きするわけない……」みんな成り行きを見守った。


 最初の危機は高3の時、松田が就職活動で黒髪に戻した。でも乗り切った。


 次の危機は藤島が大学4年の時、就職活動でリクルートカットにした。当時は就職活動は4年生になってからだった。

「俺も、もう22やけの〜」などと、藤島は照れ臭そうに言い訳した。

 この危機も難なく乗り切った。


 でも、結婚して3年で離婚した。

 離婚届を提出するとき、藤島隆が自虐的な冗談を言って、二人で笑った。久しぶりにお互いに顔を見合わせて笑った。

「そういえば、こんな表情することあったな」

 二人ともそう思ったが、そのまま離婚届を提出し、受理された。

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