グットニュース
地方紙の記者の吉沢が取材を終え戻ると鈴木と坂本が机の上のパソコンを見て何やら話していた。
「どうしたんですか?」
経済面担当の吉沢は芸能面担当の二人に訊いた。
「え? ああ、エンタメどんどんの記事を見てたんだ」
エンタメどんどんはエンタメ情報を中心に配信しているニュースサイトである。
「へぇーどんな記事です?」
「子役のトオル君、知ってる?」
「ええ、もちろん」
「彼が三億円の家を建てて両親にプレゼントしたと書いてある」
「それはスゴイ」
沖田トオルは有名な子役である。
0歳の頃からコマーシャル等に出演していたので十歳にして芸歴は十年。しかも芝居も上手い、歌も上手いとあってテレビや舞台にと引く手あまたなのだ。
「あーいいなぁ、トオル君の様な息子がいれば、いやな会社勤めから解放されるのに」
「ハハハ、まあ、普通、そう思うよな。だがトオル君のお父さんは違うぞ。『トオルの稼いだお金はトオルの物だから、大人になったら自分の為に使いなさい』と言って全て貯金しているそうだ。だからお父さんはずっと会社勤めをしているしトオル君はサラリーマンのお父さんの給料に見合った倹しい暮らしをしているそうだ」
「お父さん、できた人ですね」
「ああ、お母さんだって忙しいトオル君にバランスの良い食事をさせてやりたい、と栄養士の資格をとったんだ。素晴らしい人だ。トオル君はそんな両親に感謝のしるしとして豪邸を建てたと書いてある」
「いいニュースですね」
「ああ、いいニュースだ・・だが、ヤバイ」
「ああ、ヤバイ。これ・・わざとかな?」
「わざとだろう、ドンピシャすぎるよ」
「だとしたら、エンタメどんどんも意地の悪い事をするな」
「まったくだ」
「あのー、どういう事ですか?」
その日、沖田トオルが主演する舞台『家なき子』は初日を迎えていた。




