走れ
第五話!
「はあ、はあ、はあ、はあ、、、」
(身体中が痛い。もう休みたい。疲れた。)
そんな感情がヴィーシャを襲う。だが、ヴィーシャは止まらなかった。ここで足を止めたら取り返しのつかないことが起こると思ったから。何故かは分からない。でも確かにそう感じた。しばらく走っていると辺りが明るくなっていった。
「ま、、、街だ、、、。」
街の明かりが見えるくらいには近づいていた。このまま行けば助けてもらえる!そう心の中で一人確信していた。だが、運命はそう甘くはなかった。
「うわぁぁぁ!!」
足が絡まり頭から転んでしまった。すぐに立ちあがろうとする。しかし、エルフの冒険者にかけてもらったリペアブロストの効果が切れたのか、はたまたリペアブロストの治療範囲には限界があってその限界を超えてしまったのか、どちらにしても現状は変わらない。一度は肉付きを取り戻した体が痩せ細っていく。そんな状況下でヴィーシャは諦めなかった。街に向けて這いずり始めた。
「せっかく助けて貰ったんだ。こんな簡単に死んでたまるか!」
生きながらえるという強い意志の元ヴィーシャは歩き始めた。50メートルは進んだだろうか。今日の1日でヴィーシャは色々なことを学び、初めて城を出た。今までに経験したことのない出来事に直面したヴィーシャは本人が思っている以上に疲労が溜まっていた。その疲労もリペアブロストのおかげで軽減していたがしっかり溜まっていた。そして今、溜まっていた疲労が一気にヴィーシャに襲いかかる。ほとんど気絶したかの様にヴィーシャは眠りについた。瞼には微かに街の明かりが映る。だがもう、ヴィーシャは眠りについてしまった。深い深い眠りに。これから待ち受ける奇想天外な日常にまだヴィーシャは気づいていない。
城脱出編最後です。