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アルガ帝国の歴史上最も長い5分間(前編)

「こちらへ。」

黒いスーツに身を包んだ王宮の案内役が言った。

「中に入り、少しの間お待ちください。」

会釈の後、案内役は来た道を戻っていった。

マランは案内された部屋のドアノブに手をかける。

「お前ら、心の準備はいいな。」

マランは緊張をほぐしきれず勢いよく扉を開けた。



(この違和感は何だろう…。)

案内されている間、マルシにはずっと引っかかるものがあった。

(俺たちは首都から離れた辺境の地の代表だ。王宮側が迎え入れてくれるのは嬉しいが、相手側の態度がおかしい気がする…

 あの案内役は『応接室に案内します。』と言った。そして、『王が直々にお会いになる』と。オルガ帝国の国王の性格は知っている。傲慢で我儘な独裁者。ほとんどの場合、面会をして欲しいと頼まれれば門前払いするのが王の当たり前だ。なのに今回は受け入れられた。話を聞いても自分に利益がないことは確実に分かっているのに…

 …!もしかしたら…。)


「お前ら、心の準備はいいな。」

マランが勢いよく扉を開けると同時にマルシは言った。

「気をつけて下さい!罠の可能性が…」


カンッ


扉を開けたマランの視界に映ったのは、自分の首をめがけて剣を突き刺そうとする兵士だった。剣は勢いよく突き出されマランの首に届きかけた。が、マルシの声かけにより戦闘体制をとっていたマカンに《反撃》で防がれた。

「父さん、スキルは取っておいて。5分しか持たないんだから。」


パチパチ


手を叩く音が聞こえた。音の主は他のものとは違い装飾が多いい男だった。

「手荒な挨拶失礼した。まさか、君たちに攻撃を止められるとは思わなかったよ。」

「流石に舐め過ぎた。」

「いやー、すまないすまない。一応自己紹介しとくか。俺の名はクイル・プランタ。アルガ帝国騎士団3番隊隊長だ。」

「俺はウーラン村村長マランだ。」

「そうか。生き残ったら名前くらいは覚えてやるよ。」

マランの中である程度情報を整理し終わり、マランは冷静に考えた。

「ハメたな…。」

「今更かよ。それより、これだろ?欲しいのは。」

クイルの手には一枚の魔法陣の書かれた紙があった。

「殺し合いたくは無い。それを渡してくれないか?」

「嫌だね。お前ら、やれ。」

クイルの声と共に部屋の至る所に配置された完全武装の騎士たちが動き出した。数は8人。クイルを合わせて9人。人数差はあるがやるしか無いとマカン、マルシが構える中、戦闘は始まった。マランの首を狙った兵士がマカンに向かって槍を突き出した。

「『電円』」

その兵士の一撃には雷属性が付与されていたが、マカンはスキルがあるため難なくかわした。

【剣技:電円】

アルガ帝国騎士団に伝わる五つのうちの剣技の一つで、触れたものを感電させるだけでなく、隙は大きいが他の四つの剣技と比べ、攻撃速度が速いと言う特徴がある。


「『反撃』!」

マカンの一撃が兵士に入った。が、完全武装を前に、ダメージが入らなかった。すると、マカンの左側にいた兵士が槍で空を切った。

「『風刃』」

槍の動きに合わせ無数の斬撃がマカンに向け飛び出した。

【剣技:風刃】

アルガ帝国騎士団に伝わる五つのうちの剣技の一つで、中距離から斬撃を飛ばす技。速度自体は速くないため簡単に避けられるが、集団戦になると輝く。


(透明な斬撃だが、全く見えないわけではない。魔力がこもっている影響か…)

初見の攻撃だが、マカンは難なくかわした。

一方マルシは…

「『泥沼』」

【泥沼】

マルシが独自で編み出した技。《スキル:吸着》を地面に使用し、その上を歩いたものを動けなくする。なお、固定されるのは足だけなので、上半身は普通に動く。


「くそっ動けねぇ…」

二人とも四人の兵士を相手に押していたが、完全武装を前に、決め手がない状況が続いていた。その状況を打開すべく、見守るマランたち三人の中から、一人の男が前に出た。

「パルラードさん、危ないから下がってて。」

マルシは言った。が、パルラードはその言葉を無視し、スキルを使った。

「『舞剣』」

パルラードから放たれた言葉に反応するように、兵士たちが持っていた槍が宙に浮かんだ。

「『落下』」

パルラードの言葉と同時に宙に浮いた槍は真下の兵士のマントを貫き、地面に突き刺さった。兵士たちはマントが引っかかり槍を抜かなければ動けない。が、槍は相当深く刺さっているので引き抜けないと言う状況だ。

【スキル:操剣】

パルラードの所持するスキルで、相手の持つ武器を奪い自らの意のままに操る技。あまりにもレベルが違う相手や魔法の杖などにはこのスキルは適応されない。


「お、おい!お前ら!何やってる!速くこいつらを倒せ!」

クイルの顔には少しずつ焦りが現れ始めた。そんなクイルにマカンは言った。

「自分でやったらどうだ?三番隊隊長なんだろ?」

「舐めるなよ!やってやるよ。」

そう言うと、クイルは目を閉じ念唱した。

「魔界より来る黒炎の風よ、我の元へ《黒炎龍淵天》」

あたり一面を黒い炎が包んだ。

「クイル、お前、強いな。あの技を避けるのは俺たち以外不可能だろう。お前の敗因は一つ。魔法の才にこだわり過ぎて近距離戦闘に力を入れなかったことだ。」

黒炎が晴れた時、クイルの目に映ったのは、剣を構えるマカンだった。

「来るなぁ!『瞬間転移』」

マカンが剣を振り下ろした時にはクイルは消えていた。

「父さん!逃げた!まだ近くにいると思う。」

マカンたちだけでなく、騎士団の面々もクイルを見失っていた。だが、マランは一切焦るそぶりを見せなかった。

「父さん!速く追いかけないと!」

「大丈夫だ。ラムス、見つけたか?」

マランは一行の一人、ラムスに聞いた。

「ああ。見つけた。」

そう言うと、ラムスは右手を前に突き出した。

「『空間転移』」

ラムスの右手から無数の光が飛び出し、ラムスの目の前にクイルが現れた。

「や、やめてくれ!頼む!この魔法陣は渡すから!」

マカンはクイルが差し出した魔法陣を受け取った。

(こいつ本当に騎士団の隊長か?)

マカンは心の中で思った。




(あと少し…)

アルガ帝国の正門まであと200メートルを切っていた。結局、武力で解決したが計画は順調に進んでいた。奴が来るまでは。

首都到着日の宿、マランたち3人の部屋で…

ラムス:「なぁ、マラン…」

マラン:「何だ、ラムス。」

ラムス:「何で俺たちは一部屋なんだ?」

パルラード:「あ、それ俺も気になってた。」

ラムス:「金ならまだあったはずだ。」

パルラード:「まさかマラン…お前…」

マラン:「バレたなら仕方ないか…」

マランは部屋の冷蔵庫から酒を取り出した。

パルラード:「こんなことだろうと思ってたよ。」

ラムス:「こいつ…しっかり3人分グラスを用意して     やがる…」


次回「アルガ帝国の歴史上最も長い5分間(後編)」

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