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語られる記憶

「…!?」

馬車の荷台に乗っていたトロスは、樽の中から音が聞こえていることに気がついた。

「何がいる…。」

恐る恐るトロスは樽の蓋を開けた。

「!!お前は…」

樽の中には、立派な髭を持つ男が手を縛られ、閉じ込められていた。

「…お前の首にかけてる紋章、もしかして、帝国騎士団か?」

トロスは男の手縄を解きながら聞いた。

「ああ。こんな有様だが、一応帝国騎士団の精鋭の1人、サザラだ。俺の他にも4人いて…。」

サザラは周りの樽を見た。そこには四つの樽がある。

「もしかして…5人とも…」

「ああ。情けない話だ。帝国の精鋭が5人揃って盗賊に負けるとは。」

「よし、解けたな。」

「ありがとう。助かったよ。」

「いえいえ、困った時はお互い様です。」

「後は俺たちがやっておく。長旅で疲れてるだろ?」

「…それならお言葉に甘えて。ありがとうございます。」

「お礼を言いたいのはこっちだよ。」





「ねぇ、シェンラー。宿とか泊まって大丈夫なの?」

ティラは聞いた。

「うん。この前のウルフ討伐の報酬が残ってるからね。」

「俺たちって…ずっと金欠だよな。」

クラストが言った。

「「「うん。」」」

フラン意外全員が頷いた。

「そんなにお金ないの?」

フランに疑問が浮かんだ。

(お金がない…?私、白き旅団に入った初日に、出発前に高そうな杖を買ってもらったけど…)

「魔法使いの杖って高いんじゃなかったっけ…。」

「うん。まぁまぁ高いよ。」

「お金足りたの?」

「うん。足りたよ。」

「そうなんだ。」

フランの質問に対し、シェンラーが答えてくれた。

そして、触れようかどうか迷っていたが、トロスがずっと半泣きになっていることが気になった。

「…」

(そう言えば、弓って安いものでも杖と同じくらいの価格で売れるってティラが言ってたよね…。あれ?トロスって弓使いじゃなかったっけ…。初めて会った時以来トロスが弓を持っている姿を見ていない。もしかして…)

フランはほぼ確信に近づいた。

「トロス、最近弓使ってないけど、あの弓どうしたの?」

フランは聞いた。

「君が魔法の杖を気に入っているなら俺はそれでいい。」

(ああ、やっぱり…)

トロスの弓は武器屋で売られ、魔道具店でフランの杖の代金となった真実をフランは知った。





「シェンラー、頼みがあるんだが…ちょっといいか?」

「ああ。何かあったのか?トロス。」

「クラストが買い出しに行きたいって言ってるんだが、明日にはここを離れるし、クラストは意外と方向音痴だから着いていってくれないか。」

「ああ、そういうことね。分かった。じゃあ行こうか。クラスト。」

トロスはシェンラーとクラストを見送った。





コンコン。

扉を叩く音がした。

「どうぞ。」

扉が開き、顔を出したのは、ティラとフランだった。

「私たちを呼び出して、話って何?」

「昼間のことだよ。そこに椅子があるから座ってくれ。」

「失礼します。」

ティラとフランは部屋の中に入り、椅子に座った。

「本当はシェンラーにもいずれしなければならない、僕の過去の話だ。シェンラーに話す前に、君たちに聞いて欲しい。」

「ああ、サガンってやつの話か。」

「そうそう。じゃあ話すよ。」

「今から18年前の話になる…


当時、アルガ帝国は裕福な国で、他国から出稼ぎに来る人も大勢いた。そんな中、一つの村が壊滅の危機に瀕していた。それがトロスの出身、「ウーラン村」だ。ウーラン村は山が多く、気候も安定しにくいため、農作物の栽培が厳しく、近年多発するようになった集中豪雨で稲などの様々な農作物がやられ、深刻な食料問題に瀕していた。そんな日々が続くこと三年。ウーラン村の当時の村長『マラン』の息子、『マカン』が村のためにアルガ帝国の首都、中央都市『アルダート』に物資などの支援をもらいにいってくる、と言い出した。ウーラン村は山に囲まれており、下山するだけでも危険が伴うため、初めは皆止めようとしたが、村の状態が悪化するにつれて、止めるものはいなくなった。


下山は困難を極めた。山には濃い霧がずっと掛かっており、コンパスがなければ方向を見失う。また、山に生息する魔物や熊なども出現したことがあるため、ゆっくり寝ることができなかった。ほぼ休まず進み続けること19日後、1つ目の山を超えた。その後も2つの山があったが、それほど高くなく、外道の道のりも合わせて40日ほどで『アルダート』に着いた。


「……。」

『アルダート』の入り口の門を抜けた瞬間、マカンは驚きのあまり言葉を失った。

マカンの目に映ったのは、機械化が進み、発展した街並みだった。ウーラン村は木造建築のため、鉄製の住居一つでも十分驚愕だが、見たことのない食料や、おしゃれな服、賑わう人々。どれを取ってもマカンには未知なものであり、興味が湧くものばかりだった。好奇心が抑えられずマカンは一歩踏み出したが、長旅の影響で、体に疲労が溜まっており、その場に倒れ込んでしまった。


目を覚ますと、目の前には大柄な男性がいた。マカンが目を覚ましたことに気付くと、優しい笑みを浮かべ、聞いてきた。

「お、目を覚ましたか。無理に起きなくていい。そのまま休んでろ。」

「あなたは…?」

「俺はルーク・トロスだ。よろしく。」

「俺はマカンです。ここは?」

「俺ん家だ。急に倒れ込んだから仕方なく連れ込んだってわけだ。怪我とかはなさそうだな。今、食べ物持ってきてやるから、そのまま寝てろ。」

「…」

(体がゴツくて怖そうなのに中身がめっちゃ優しい人…?なのかな。)


「これ、食えるか?」

目の前に差し出されたのは見たこともない白い板のようなものだった。

「何ですか?これ。」

「ショクパンって言うらしい。異世界人の方が教えてくれたんだ。」

恐る恐るマカンはショクパンを口にした。

「うまい…」

「だろ?ショクパンの旨味がわかるってことはパン屋なんかが向いてるかもな。」

「パンヤ?」

「ああ。ここパン屋だけど…もしかしてパン食べたの初めてか!?」

「うん。」

「そうか…お前、どこの村の住民だ?」

「ウーラン村です。」

「聞いたことないな。だが、お前を見た感じ、裕福な村では無さそうだな。何しに来た?出稼ぎか?」

「まぁ、そんなところです。」

「じゃあ、家泊まってくか?」

「え?良いんですか?」

「お前、全身ボロボロだし、金も持ってないんだろ?」

「お金?」

「しばらく泊めてやるよ。まぁ、無料じゃないがな。」

こうして、無事にマカンのアルダートでの生活が始まった。

次回「恩人と父さんの記憶」

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