過去の出来事
昔、ある家族がいた。母、姉、弟からなる3人家族。その中の1人、弟の名は「シェンラー・ペインチェル」。現在「白き旅団」として冒険者ギルドに所属している。そんな彼は、幼少期にアルガ帝国で起きたある事件に巻き込まれていた。
「あ、こら!」
女性の声が聞こえた。テーブルの上からいい匂いがしたので、椅子を使い上に登ろうとしたところを止められた。声の主は母だった。
【シェンラー・ペインチェル 当時(4歳)】
「落ちたらどうするの。」
「ごめんない…」
落ち込むシェンラーを見て、母は仕方ないなと笑みを浮かべながら机の上に置いていたクッキーをとり、シェンラーに手渡した。
ぱぁと明るくなったシェンラーの顔を見て、母はまた笑みを浮かべた。美味しそうにクッキーを頬張るシェンラーを母が眺めていると、玄関の扉が勢いよく開く音が聞こえた。
「ただいまー!」
そこには、ピンクの髪が目立つ少女がいた。シェンラーの姉である。
【ユラ・ペインチェル 当時(7歳)】
「おかえりユラ。お菓子あるよ。」
「えっ、お菓子!?食べる!」
勢いよくシェンラーとクッキーのいる方へ走り出した。
「食べていい?」
ユラはソワソワしながら母に聞いた。
「ちょっと待ってね。」
母はそう言うと、テーブルの上に置いていたクッキーを背の低いテーブルに移した。
「さぁ、どうぞ。」
ユラは母の声と同時にクッキーに手を伸ばした。そのまま口に運び、頬を押さえ美味しさを表現していた。それを見てシェンラーはよだれを垂らしながら指をしゃぶっている。
「シェンラー、おいで。」
母に呼ばれて、母の隣に座った。
「はい、シェンラーの分。」
小皿に取り分けられたクッキーを見て、シェンラーは勢いよく頬張った。
「美味しい?」
「うん。」
家族で過ごす平和な日々。ずっとこのまま暮らしていくと思っていた。
「全員外に出ろ!」
いかつい男の声が聞こえた。ただの嫌がらせか何かだろうと思って外に出ずにいると、玄関の開く音がした。玄関から1人の男が入ってきた。そして、シェンラー達を見て言った。
「外に出ろと言ったはずだが?」
敵意のない脅しだとは分かっていたが、5歳のシェンラーからしたら耐えれるものではなく、泣き出してしまった。
「ユラ、行こう。」
まだ敵意はないが、逆らったらどうなるか分からないので従うことにした。母は泣き続けるシェンラーを抱き、ユラの手を引きながら目の前の男について行った。
「ここで待っておけ。」
そう言って男は去って行った。男に連れてこられたのは広場で、この近所の人がほとんど揃っている。
「一体何が…」
何も分からぬままただ子供の手を握る母。すると、1人の男が民衆の前に立った。
「今日より、サルエ村は、我々盗賊ギルドが占拠する。無駄な殺し合いはしたくない。大人しく俺たちの下についてくれ。」
この世界でクッキーというのは、蜂蜜を使った焼き菓子のことです。ティラも街で見かけたらよく買っています。
次回「暗殺者と盗賊団」




