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妖たちの頼み事  作者: 宙音
一章 中学編
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九話 熨斗目の頼み事3

翌日、学校に行く準備を終えた悠月は祖父の部屋に向かい熨斗目に声を掛けた。熨斗目は押し入れの中から出てきて挨拶をした。悠月も挨拶をして、熨斗目と共に学校に向かった。

今日は文化祭当日だ。一緒に歩いている熨斗目は余程楽しみなのだろう。ニコニコしながら悠月の手を握り、腕を振っていた。そんな熨斗目をみて悠月も中学最後の文化祭とはいえ楽しみだと思いながら歩いて行った。


悠月はふと思ったことを熨斗目に聞いた。


「なあ熨斗目。熨斗目って体を小さくする事って出来るのか?」

「ん?なんで?」

「手を繋いで周ってもいいんだけど、もし(はぐ)れたらお互い探すの大変だろう?でも、この胸ポケットに入れば逸れることはないし、一緒に周る事が出来るだろ?」

「・・・・」

「ど、どうかな?あ、でも普通は出来ないよな・・・ごめん。忘れてくれ」


熨斗目は突然の事に驚いて固まっていたが、にっと笑い出来るよ!と言った。

悠月は驚いて声をあげてしまい、慌てて口に手を当てて周りを見たが、まだ朝ということもあり車は通っているが歩いてる人は今のところ見つからずホッと一息ついた。


「で、出来るのか・・・?本当に?」

「うん!本当だよ!見てて!」


熨斗目はそう言うと、目を閉じた。すると、熨斗目の体がどんどん小さくなっていくではないか。そして本当に胸ポケットに収まるほどの小ささになった。

悠月は驚いて思わずマジか・・・すごっ・・・と呟いた。熨斗目は悪戯が成功したかのように笑い、悠月にポケットに入れてと頼んだ。悠月は分かったと言い熨斗目を胸ポケットに入れて今度こそ学校に向かった。


学校に着いた悠月は、入り口に掲げられてる看板を見ていよいよ始まるんだなと実感していた。上靴に履き替え教室に向かう途中、クラスの友達が話しかけてきた。


「おはよう!悠月!」

「悠月おっはよー!」

「おう!おはよう。和馬(かずま)秋人(あきと)


最初に声を掛けてきたのが伊籐和馬。悠月とは小学校からの付き合い。気さくな奴で男女ともに大人気だ。先生や後輩からも慕われているほどだ。秋人に対して呆れた顔をしていることが多く手を焼いているのかと思うのだが実は一緒になってふざけたりしているので、いつの間にか非公式のファンクラブまで出来たそう。


次に声を掛けてきたのが喜田村秋人。生徒会長をやっている。普段はお調子者で、やんちゃなことをしまくりで先生は手を焼いている。だが、やる時はやる男らしく、普段の様子からは考えられないくらい真面目に生徒会長としての役割や勉強に取り組んでいる。こちらもファンクラブがあるようだ。


「なあなあ、開会式終わったら自由行動だろ?俺達と一緒に周らないか?」

「ああ、いいよ。一緒に周ろう」

「よし!決まりだな!あ、でも俺ら先生に呼ばれてるよな?」

「あ、確かそうだったな。悪い悠月最初1人になっちまうけど大丈夫か?」

「大丈夫だよ。2人が来るまでゆっくり周ってるよ。」


そう言うと2人は悪いなといったが、悠月は気にする必要はないことを伝え一緒に教室に向かったのだった。



その後、体育館で文化祭の開会式が始まり、ビデオメッセージやちょっとしたパフォーマンスもあり会場は盛り上がった。

そして開会式が終わると自由行動に入った。悠月は二人が来るまで熨斗目と共に見て周っていた。熨斗目は開会式の時から終始目をキラキラさせており、スタートから楽しめているようだ。熨斗目は展示物を見て周っている時でも凄い凄い!とはしゃいでいた。やがて2人と合流した悠月は一緒に見て周った。


午後からはダンスなどの個人発表や吹奏楽部の演奏などが行われた。熨斗目は見たことのない物がいっぱいあるようで先程よりもはしゃいでおり、たまにこちらを見ながら楽しいねと言ってステージを見ていた。無事に楽しめているようで安心した悠月は、隣ではしゃぎまくっている和馬を横目に楽しんでいた。

そして文化祭1日目が終了する時間になり名残惜しさを感じるが明日はもっと盛り上がるだろうと思いながら教室に戻りHRをして帰宅した。



次の日、文化祭2日目が始まった。午前中は運動会が開始された。悠月たちのクラスは白組で、綱引きや竹取物語、リレー、玉入れなどの競技を行い競い合った。ここまでの競技で点数がかなり僅差で最後の紅白対抗リレーで勝負が決まる。熨斗目は手すりの上からがんばれ!と応援している。悠月はリレーの一番最初でスタートの合図とともに走り出した。相手との距離が少しずつ離れてしまったが無事にバトンを繋いだ。


そして第2、第3、第4と順調に繋いでいた。アンカーにバトンが渡った瞬間、ものすごい勢いで走り出し、紅組のアンカーに追いついた。そのままゴールへ向かうが、なんと白組が紅組を追い越しゴールしたのだ。

その瞬間、白組から大歓声が上がった。熨斗目も声をあげ悠月の名を呼びながらぴょんぴょんと飛び跳ねていた。


午後になり閉会式が始まった。先程の運動会の授与式やサプライズがあったりと最初から最後まで驚きと楽しさが詰まっていた。

そして無事に文化祭も終了し、楽しかったなと思うと同時に最後の文化祭が終わったという少し寂しい気持ちになった。


教室に戻り、HRが終わると教室からは寂しさが伝わってくる。熨斗目はというと閉会式が終わった後はしゃぎすぎて疲れてしまったのかポケットの中で寝ている。

秋人は悠月に近づきお疲れ様!と声を掛けた。そして和馬も加わりお疲れさんといって肩を組んできた。悠月も2人にお疲れ様と言い3人で笑いあった。


その後、2人に別れを告げ帰宅する。帰っている道中、熨斗目が目を覚ましポケットから出ると元の大きさに戻った。そして悠月にお礼を言った。


「お兄ちゃん、ありがとう!とても楽しかった!あんなに楽しかったの初めてだったよ」

「そうか。喜んでもらえてよかった」


そういい微笑んだ悠月は熨斗目と手を繋ぎながら帰った。


家に着き、部屋に向かい熨斗目と文化祭での思い出を沢山語った。熨斗目とまた文化祭に連れていくことを約束した。熨斗目は嬉しそうに笑い、待ってるね!と言った。

その後、熨斗目は悠月に今回の事にお礼を言い頭を深々と下げながら、祖父の部屋に戻っていった。


ちょっと不思議な時間を過ごした悠月はこの時の文化祭の事を思い出すたびに楽しかった思い出を語り合うのだろう。熨斗目や他の妖怪と共に。

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