八話 熨斗目の頼み事2
お互いに自己紹介も終わったので、悠月は先程から気になっていた写真について聞いてみた。
「そういえばなんでその写真を探してたんだ?」
熨斗目は写真を懐かしそうに見つめながら答えた。
「この写真はね?まだ悠月お兄ちゃんが生まれてくる前だったかな」
私はこの家の庭で毬をついたり、ほかの妖怪さんたちと一緒に追いかけっことか鬼ごっことかで遊んでいたの。でもあの日、丁度お盆の時期だったかな。その日は1人でお部屋で遊んでいたの。そうしたらね、悠月お兄ちゃんのおじいちゃんと目が合ったの。そう!さっき悠月お兄ちゃんと出会った時と同じように!
それでね、私吃驚しちゃってさっきみたいに急いで逃げようとしたの。そしたら、おじいちゃんがね?
「ごめんな?驚かすつもりじゃなかったんだ・・・」
そう眉を下げて申し訳なさそうな顔をしながら優しく声を掛けてきたの。最初はやっぱり怖かったけど、お爺ちゃんの顔を見たらね?この人は何もしないって思ったの。それとね、おじいちゃんを見てたら安心してきたの!だから私は、おじいちゃんに近づいて手を握ったの。おじいちゃんは吃驚してたけど、笑って一緒に縁側に行っていっぱいお話ししたんだ!
いっぱいお話してたら、いつの間にか日が暮れてきちゃって・・・もうお別れしなきゃいけないんだって思ってたら、おじいちゃんが確かカメラ?だったけ。それを持ってきてね?
「そろそろ行ってしまうんだろう?その前に今日出会った記念にカメラで写真を一枚とってもいいかい?」
って言ったの。最初は、かめらって何?箱の事かな?箱を持ってきて何するのかな?って思ったんだけど、なんだか面白そうだなって思って私はもちろん!って答えたの。そしたらおじいちゃん、嬉しそうな顔をしてカメラを持って庭先に出たの。そしてカメラを私に向けて写真を撮ったの。おじいちゃんは嬉しそうにありがとうって言ったの。
「この写真は現像しなければ見れないんだが、現像出来たら君に見せるよ。また逢えるか分からないけどね」
そう言ったおじいちゃんは少し寂しそうだった。そんな顔を見たくなくて、私約束しちゃったんだ。
「絶対に逢えるよ!私会いに行くもん!会って一緒に写真見たいもん!約束だよ!」
そう約束をして指切りげんまんやったの。夕方だった空も、もう夜になってしまって私の姿は見えなくなって会えなくなっちゃったんだ。そのあと何度もおじいちゃんの前に立ってみたけどだめだった。
写真はいつの間にか現像が終わったみたいで確認しに行こうと思っておじいちゃんの部屋に行ったんだけど私が写ってる写真がなかったの。その時は捨てられたのかなって思って泣いちゃったんだけど、別の日におじいちゃんの所に行ったら私が写ってる写真を見て懐かしそうに見ていたの。でも、多分おじいちゃんにはこの写真には私は写っていないんだって思ったんだ。
でも、大事そうに持っていたからもしかしたらおじいちゃんは私がこの写真に写っていなくても確かにそこに居たんだって思ってたのかなって。
そう思ったら嬉しくなっちゃって、一緒に写真を見たんだ。でも私、いつの間にか寝てたみたいで、気が付いたらおじいちゃんは居なくて、写真も消えてたの。だから、慌てて探したんだけど見つからなくて。何度も何度も探したけど見つからなくて。あれから何年も経ったけど見つからなくて、泣きそうになってた時に悠月お兄ちゃんが来て今に至るっていう感じかな。
悠月はそういう経緯だったのかと思った。昔まだ祖父が生きていた頃に女の子の話を聞いたことがあった。その女の子が熨斗目だったということだ。
悠月は熨斗目に祖父が如何にその写真を大切にしていたのか、そして小さい頃熨斗目との出会いの話をしてくれたことを伝えると嬉しそうに笑っていた。が、すぐに寂しそうな顔になりもうおじいちゃんはいないんだね。と言った。
悠月はそんな熨斗目を見て眉を下げたが、ふと明日の文化祭の事が頭をよぎった。
「なあ、熨斗目。もしよければ明日俺の学校の文化祭に来ないか?」
「え?」
熨斗目は首を傾げた。
悠月は熨斗目の寂しそうな顔を笑顔にしたいなと考えていた。なら明日の文化祭なら熨斗目も楽しんでくれるだろうと思い、提案したのだ。
悠月は熨斗目に説明すると、熨斗目はパァっと顔が明るくなり嬉しそうに行きたい!行きたい!っと言って飛び跳ねていた。じゃあ決まりだなと頷いていると、玄関からただいまという声が聞こえた。丁度母が帰ってきたようだ。悠月は熨斗目に明日この部屋に迎えに来ることを伝え、部屋を出ていった。
熨斗目は部屋から出た悠月を見送り、明日の文化祭というものに想像を膨らませていた。その顔はワクワクとドキドキが混じっており、表情が緩みきっている。熨斗目も悠月から話を聞いただけだが絶対に楽しいと確信しているようだ。
そんな熨斗目と夕食の手伝いしている悠月は明日の文化祭が待ち遠しくなり、早く明日にならないかなと思っていたのだった。