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妖たちの頼み事  作者: 宙音
一章 中学編
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五話 倖醒の頼み事3

翌日、目が覚め起きるとまだ倖醒は眠っていた。悠月は倖醒を起こさないように慎重に移動し、朝食を食べに行った。母に挨拶をすると、父はもう家を出たのだろう。父の姿はなかった。

母から父は今日から出張なので数日は帰ってこないことを伝えられた。

悠月は了解と言って、朝食を食べ始めた。


朝食を食べ終わり部屋に戻りまだ寝ていることを確認しながら制服に着替えていると、倖醒が目を覚ました。

おはようと声をかけ、机の上に食べるものを置いてあるから食べるように言った。そして、自分は学校に行くことを伝えた。倖醒は了承し、体を休める事に専念した。


行ってきますと言い家を出た悠月は倖醒を心配しつつ学校に向かって歩いて行った。すると道中倖醒を保護した場所を見つめる男をがいた。見たところどこにでも居そうな普通の男のようだ。

悠月は不思議に思いながらも遅刻するとまずいので、男の事を気にせずに学校に向かっていった。



授業中悠月は今朝見かけた男の事を考えていた。

男の後ろを通った時、舌打ちした後小さい声で


「あの狐どこ行きやがった・・・」


そう言ったのを聞いたとき、思わず振り返ってしまった。男の表情はまるで悪霊や質の悪い妖怪、海外で言えば悪魔に憑りつかれている時の表情に似ていた。すると、男からなにか黒い(もや)のようなものが見えたのだ。

悠月は寒気がしたが、もしや倖醒が言ってた禎道という人が今朝の男なのでは?と考えていると先生から問題を指摘され、意識を戻し慌てて問いに答えた。



放課後になり帰り道を歩いていると今朝男がいた場所に丸い物が落ちていた。よく見てみるとビー玉くらいの大きさの玉だった。拾ってみると何か不思議な力を感じた悠月はその玉を持ち帰ることに。

家に着くと母が丁度家を出ようとしていたらしく、これからどこに行くのかと聞くと少し友達の所に行ってくるとのこと。


「仕事の途中で急に倒れたらしいの。意識も朦朧としてたみたいで急遽入院することになったみたい。今は意識も戻っているみたいだから大丈夫だと思うんだけど、心配だからお見舞いに行ってくるね。」


夕食は準備してあるから申し訳ないけど一人で食べてね。帰り遅くなるかもしれないから戸締りよろしくねと言い母は出かけていった。

部屋に戻り倖醒に先程拾った不思議な玉について聞いてみた。すると倖醒は、それは悪しきものを封じる事が出来るものらしい。この玉はよく禎道が使っていたものだと言う。

今朝の男はやはり禎道だったのかと思った悠月は倖醒に今朝あった出来事を話した。

 

「そうか。やはり私を探しているのか」

「倖醒・・・」

「私はもう禎道の元には戻らぬ。だが、去る前に禎道を助けたいのだ」

「わかってるよ。俺達で禎道さんを助けよう」


倖醒は改めて悠月に感謝をした。そして禎道を助けるために何度も話し合い悠月は倖醒から玉に封じるやり方と明日の動きを確認した。

その後夕食を食べた2人は戸締りを確認したあと明日のために準備をし早めに就寝した。




翌日まだ日が昇る前に起きた悠月と倖醒。外はまだ真っ暗だ。

悠月はすぐに支度し準備を終え、遅くに帰ってきただろう母を起こさぬように静かに家を出た。

人気のない場所に移動した悠月と倖醒は禎道を助けるための準備を行った。そして大体の準備が終わった頃倖醒は禎道を見つけここに連れてくることを伝えていき悠月と別れた。


その間に悠月は初めてやる事に顔が強張るほど緊張していたが、心を落ち着かせるために深呼吸をした。その時、目の前から声が聞こえた。倖醒の声と男の怒鳴り声が聞こえる。

倖醒は追いかけられているが、何とかここまで禎道を連れてきたのだ。


禎道は必死になり倖醒を捕まえようと追いかけたが、急に体が動かなくなった。

禎道は抵抗したが金縛りにあったかのように動く事が出来なかった。足元を見ると人一人分ほどの小ささの陣が書かれていた。


禎道の動きが完全に止まっていることを確認した悠月は意識を研ぎ澄ませ、左手の上に載っている玉に向かって念じた。


『我は求む 彼のものに憑きしモノを掴み 封じよ』


そう唱えると、禎道の体から黒い影が出てきた。暗くてもよく判る程の漆黒な色をしている。

禎道と黒いモノは同時に呻き声をあげた。かなり苦しそうだ。

暫くすると禎道から黒いモノが完全に剥がれたことを確認した。黒いモノは悠月に向かって襲おうとしたその瞬間、玉が光り始め何か手のようなものが出てきて黒いモノを包み込み玉へと戻っていった。


悠月は一瞬何が起こったのか解らなかったが、左手に載っている玉を確認すると玉の中が黒くなっていた。なんとか封印する事が出来てホッとした悠月は倒れている禎道に駆け寄り顔を見る。

禎道は憑き物が取れたことで表情が先程よりも柔らかくなっていた。倖醒と悠月はお互いに顔を見合わせて微笑んだ。

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