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妖たちの頼み事  作者: 宙音
一章 中学編
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三話 倖醒の頼み事1

ハツナと別れてから数日が経った頃、悠月は学校から家に向かっていた。

少し前までは夏の暑さが残っていて暑かったが、今は風も冷たくなり少し肌寒く感じる。

とはいえ昼間は少し暑さを感じるが前ほどでもない。過ごしやすい気候になったと悠月は思った。


そろそろ紅葉も見れる時期かなと浮かれていると、突然目の前を何かが横切った。

驚いた悠月はでかい虫が横切ったのかと思った。

横切って行ったものの先を見ると何やら獣のようなモノが倒れていた。近づくとそこにいたのは、狐にしてはかなり小柄だった。


狐をよく観察すると、何かから逃げてきたのだろうか。体には無数の傷跡があった。

その中でもいくつか深い傷もあるようだ。

悠月はこのまま放っておけないと思い慌てて狐を抱え、走って家に向かっていった。



悠月が去った後男がやってきた。その男は先程まで居た狐が倒れていた場所を見つめ、舌打ちをした。

その後その男は何かを呟いて悠月とは反対の方向へと歩き去った。



狐を抱えながら走った悠月は玄関の前に立ち息を整えてから玄関に入りただいまと言って部屋へ向かった。

部屋に入りタオルを敷きその上に狐を乗せた。傷の周りを拭きとり先日ハツナからお礼として貰った薬を傷口に塗った。

薬を塗り終わり包帯で処置をしホッとしていると、コンコンとドアをノックして母が入ってきた。


「悠月、入るよ」

「うわっ!!吃驚した・・・」


悠月は慌てて狐を隠した。母はその行動を不思議に思ったが、悠月に買い物に行くので留守番を頼み部屋を出ていった。

悠月は分かったと返事をしたと同時に違和感を感じた。


(あれ?なんで母さんは狐に気づかなかったんだ?慌てて隠したとはいえ、尻尾とか見えててもおかしくないのに)


悠月は疑問に思った。首を傾げ考えたその時、


「あ!もしかしてこの狐妖怪か!?」


改めて考えてみると遠くで何かが横切ったというより悠月の目線と同じ高さで横切ったような気がした。悠月はそのことに気が付くとこれは不味いのでは?と思い焦っていた。

その時、狐の妖怪らしきものが目を覚ました。

悠月はそれに気が付き焦る気持ちはあれど意識を取り戻したことにホッとした。


「大丈夫か?」


悠月は尋ねたが、狐の妖怪?は悠月に気付くと唸り警戒している。

当たり前だ。動物も人間も気が付くと知らない場所にいてさらに見知らぬモノがいれば誰だって警戒する。しかし狐の眼には警戒の他に恐怖と悲しみ憎悪を感じる。何かあったのだろうと悠月は思い狐に対し優しく声をかける。


「大丈夫だ。何もしない」


狐はまだ唸る。悠月はまた優しく声をかける。


「お前を見つけた時傷だらけだったから薬を塗るために俺の家に連れてきたんだ。ほらもう治ってるだろう?俺の友達がくれたんだ」


そういうと、狐は自身が負っていた怪我を確認しだし傷がないことに驚いていた。

狐は確認を終え悠月に向けていた警戒を緩ませた。


「ありがとう人の子よ。お前の薬のおかげで傷が癒えた。」

「いや、俺が勝手に連れてきて勝手に薬を塗って手当てしただけだから気にしないでくれ。」

「そうか。お前名は何という?」

「俺は悠月。菱矢悠月」


そう答えると狐は悠月か、いい名だなと言った。悠月は少し照れくさくなり、咄嗟にお前の名前も教えろと攻寄った。


「私は倖醒(ゆきざめ)。管狐という妖だ。」


やっぱり妖怪だったか。狐の妖怪だとは思ったが、管狐だったとは。確かに狐にしては小柄だなと思ったが。


しかしなぜあんなに傷があったのかを聞くと、倖醒は最近まである男に仕えていてある依頼を受けた際、倖醒はその依頼をした人間の恨んでいる人間に憑りつき病に侵されるように仕向けた。

しかし依頼人の思い通りにならなかったようでもう一度訪ねてきて詐欺だ、金を返せ、二度とお前になぞ頼むものかと発狂しながら出て行ったようだ。


その後その男は倖醒を出来損ないの役立たずな狐だと言い、倖醒を傷つけるようになったらしい。

想像したくないほどの事を倖醒は酷い目にあったのだと悠月は思った。

そしてつい最近その男から逃れるように隠れながら生活をしていたがとうとう限界を迎え力尽きてしまい気を失ってしまった。その倖醒を偶然見つけ拾ったのが悠月だったのだ。


それがさっきの出来事かと悠月は納得していた。

その時倖醒はふらつきながら立ち上がり世話になったと言い部屋から出ていこうとしていた。

悠月は慌てて倖醒を引き留めた。


「おい!無理に動くな!まだふらついてるじゃないか!」

「だがこれ以上世話をかけるわけにはいかん」

「そんなことを言うな。確かに傷は綺麗に消えているけどまだ体力も回復してないんだろう?もう少しだけ休んで行けよ。迷惑じゃないからさ。な?」


悠月の言葉を倖醒は素直に受け入れ、タオルのある場所に戻った。

まだ夕食まで時間がある。悠月は倖醒にその男との出会いについて聞いたのだった。

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