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妖たちの頼み事  作者: 宙音
一章 中学編
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二話 ハツナの頼み事

「え、頼み事?俺に?」

「ああ。お前さん見えるのだろう?妖が」

「まあそうだけど・・・」


偶然だったのかそれとも必然だったのか。

悠月は確かに妖怪を見たいと思っていたが、まさかこんな唐突に来るとは思いもしなかったのだ。

覚悟はしていたが、いざ見えるとなると戸惑いや恐怖が出てくる。

悠月はそんな思いを抱えながらハツナの言葉に疑問を覚えた。


(なぜ俺に頼むのだろう。他にも手伝ってくれそうな奴だっているだろうに)


そんな悠月の考えを読んでいたかのように、ハツナは答えた。


「実はとある薬草を探していてな。薬草と言っても生えている場所が木なのだ。」

「木?」

「ああ。その木に生えている葉を採りに来たのだ。だがその葉は、なぜか妖には触れることすら出来ぬ。」


そんな木があるのか。なんとも不思議なものが世の中には存在しているんだな。

そんなことを思った悠月はその木はどこにあるのか尋ねた。すると意外にも悠月の家から近い場所に存在していた。

ハツナの頼み事を聞いた悠月はハツナと共にその木がある場所に行くことにした。

不思議な木がある場所に行く道中なぜ葉が必要なのか聴いてみた。


「なあハツナ、なんでその葉っぱが必要なんだ?」

「それは、その葉がなんでも怪我や(やまい)にも効く万能薬の材料になるらしくてな。私と共に旅をしている友人が大怪我を負ってしまい、動くことができぬ状態なのだ。」

「だからその葉っぱを集めて薬を作りたいんだな。」


悠月は少し考えこう答えた。


「よし、俺手伝うよ。その友達を早く助けてやらないとな!」


ありがとう。ありがとう。とハツナは深々と頭を下げた。ありがとうと言う声は心なしか震えていたように感じた。




暫くして不思議な木のある場所に着いたハツナと悠月。

悠月は驚いた。なんと自分の家の畑がある場所ではないか。確かに来る途中から見覚えがあるなと思っていたが、まさか畑だったとは。

開いた口が塞がらない悠月。するとハツナが嬉しそうな声であったぞと言った。


「お前さん!お前さん!あったぞあの木だ!」


そう言われた悠月はハッとしてハツナが指している方向を見ると、周りにある木よりもかなり小さい。しかし悠月よりは2mほど高い木がそこにはあった。

ハツナは嬉しそうにその木の下へと行き葉を拾い集めていた。それを見た葉月は慌ててハツナに駆け寄った。


「ハツナ!葉っぱは触れないんじゃなかったか!?」

「おお、そうだ言い忘れていた。実はな自然と落ちた葉は妖でも拾えるのだ。」

「え。そ、そうなのか?なんだ焦った・・・」


ハツナは笑いながらすまぬ。と言った。そして、この木について詳しく話してくれた。


「この木はあさつきと言って、丁度この時期になると赤い実が付くのだ。」

「へえ・・・」

「人の世にも似たような木があるだろう?」


そうハツナから問われると確か前に調べたときにこの木と似ている木があった。

確か名前はアキグミという木だったか。そう考えているとハツナは、この木は普通の人間は気付かない、妖にしか見えない木なのだと言った。

そんな木がこんな近くに在ったなんて・・・と感心しながら悠月はハツナと共に葉を集め始めた。


2人は暫く落ちている葉を集めたが、ふとハツナが悠月に話しかけた。


「お前さんすまないが、この木から葉と赤い実を採ってくれないかね。」

「いいけど、どうして?」

「自然と葉が落ちたものは薬の効果があまり効かぬのだ。だが、直接この木から採れば薬の効果は最大限に効く。」

「へえ。じゃあ赤い実は?」

「それは、友への土産にと。その実も食べれば疲労にも効くという噂だ。」


なるほどと納得した悠月は、あまり採りすぎないように注意しながら集めていった。



ハツナが持っていた袋に集めた葉や木の実を入れてハツナに渡すとありがとう。ありがとう。と言った。

先程のお礼より震えてはいるものの嬉しさが混じったような声色だった。


家へと戻るとハツナは改めて感謝を伝えるとお礼に何かを持って来ようと言ったが、悠月は遠慮した。

しかし・・・と渋るハツナに悠月は頑張って手に入れた葉で薬を作って元気になってくれればそれで十分だと伝えた。

ハツナはそうかといい、そろそろ行くことを伝えお礼をし悠月の前から姿を消した。


その日の夜悠月はハツナとその友のこと心配していた。


(無事に友達の元へ行けたかな。友達も怪我が治ってるといいな)


そう思いながら、瞼を閉じた。



次の日、朝起きると机の上に何やら手紙と何かが入っているであろう小物が置いてあった。

手紙はハツナからだった。手紙を読むと、無事に友の怪我を治すことができた事、おかげで旅の続きに行くことが出来る事が書かれていた。

よかったと思った悠月は手紙の最後に手紙と一緒に置いてあった小物について書かれていた。

中身はあの時採った葉で作った薬だった。手紙にはこの薬には人間にも効くので是非とも使って欲しいという内容だった。


「本当に効くのか?まあ試しにこの腕の傷に塗ってみるか」


そう言って悠月はあの時木に引っ掛けただろう傷が残っている場所に早速つけてみた。

その間に学校へ行く準備をし、家を出る前に塗ったところを確認すると傷はきれいに消えていた。

おお・・・本当に効くんだと感動すと同時にハツナに感謝した悠月は母に遅刻するよ早くしなさいと言われ慌てて家を出た。




いつも通りの日常を送る悠月。



前とは少し違うのは妖が見えること。



これからも頼み事を持って訪ねてくる妖怪が悠月の前に現れるかもしれない。

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