一話 きっかけ
きっかけは、幼い頃アニメだったかTVの特集だったか。
普通は見えないであろう存在、妖怪について扱っている番組を見た。
菱矢悠月は目には見えない存在について興味を持った。
(面白そう・・・他にどんな妖怪がいるのかな・・・)
子供ならではと言っていいのだろうか、好奇心、興味本位で妖怪について知りたいと思った。
次の日には家中の引き出しや本棚、座敷にある天袋や蔵の中まで探していた。探した結果、なぜか妖怪について記されている本や呪文などが出てきた。
菱矢家は代々住職や神主の家系というわけではなく、ましてや陰陽師の家系でもない。
なぜこんなものが家にあるのか疑問に思った悠月は、祖父に聞いてみた。
「ねえおじいちゃん。なんでようかいとかかいてあるほんがいえにあるの?」
「おじいちゃんもわからんがきっとご先祖様が悠月のように妖怪について調べていたんじゃないかな?」
「そっかぁ。じゃあゆづきもようかいのこともっとしりたいからしらべる!」
「そうかそうか。よしおじいちゃんも手伝うぞ!いいかい?悠月」
「うん!」
こうして悠月と祖父は悠月が探してきた文献や悠月では届かなかった場所にあった書物を取って二人で妖怪や呪文について調べていった。
しかし、悠月が小学生のころ祖父が亡くなった。
祖父は一度も病気になったことはなかった。寿命を全うし天へと行ったのだろう。
悠月はひどく悲しんだ。一晩中泣いていた。
次の日悠月は目が腫れた状態だった。両親は驚いてすぐに温かいタオルを用意してくれた。
目の腫れが収まった頃ふと祖父の部屋に行ってみた。すると、あの時は気付かなかったが机の上にまだ見たことのない書物が置いてあったのだ。
中を見てみるとまだ習っていない漢字が沢山あるが、おそらくこれは祖父の日記だろう。
まだ小学生の悠月では読むことは難しいと思ったのか、両親に頼み日記を読んでもらった。
内容は普通の日記だった。だが、悠月や両親にとってこの日記はまた涙があふれてくるほど想いがこもったものだった。
この日は3人共に目が腫れるほど泣いていた。
月日が経ち悠月は中学3年生になった。
祖父の亡くなった2日後にはまた妖怪について調べていた。立ち直りが速いのか、何時までもクヨクヨしてないで前向きに考えようと思ったのか。両親もその速さに驚いていた。
この時悠月は調べると同時に陣を書いたり、狐の窓のような呪いを実践していた。
実際やってみたものの当然見える訳もなく、しかし諦めが悪いのかその日から毎日のようにやり続けているようだ。
学校が休みである土曜日、その日は生憎の雨だった。
悠月は部屋でゴロゴロしていた。
「あー暇だぁ・・・なんか面白いこと起きないかなー」
宿題も終わり暇を持て余していたその時、窓の外を見ると雨は相変わらず降っているが日が差しているではないか。いわゆる狐の嫁入りと呼ばれているもの。
それを見た悠月は玄関に行き、狐の窓をやってみた。
「けしやうのものか ましやうのものか 正体をあらはせ
けしやうのものか ましやうのものか 正体をあらはせ
けしやうのものか ましやうのものか 正体をあらはせ」
数秒経ったが見えないかと落ち込んでいた時だった。
ふと、何か見えた気がしたのだ。驚いた悠月は思わず解除してしまった。
気のせいかいや、しかしもしかしたらともう一度やってみた。
すると、今度はハッキリ見えるではないか。
「うわっ!!」
思わず声に出してしまった悠月は目の前の光景に唖然としてしまった。
なんと見えてしまっているのだ。しかも妖怪はこちらを見ているではないか。
目が合った気がした。
まずいと思った悠月はすぐに家の中に入り自分の部屋へ戻った。
(夢なのか?)
頬をつねる。痛い。
(見間違いだろう。きっとそうだ。)
そう思いながら、窓を見ると妖怪らしきものはいなくなっていた。やはり見間違いだったかと安心し、その日は何事もなくいつも道理に過ごし一日を終えた。
次の日朝起きて窓の外を見る。やはりいる。見間違いなどではなかった。
息を吸って思わず
「まじかぁ・・・」
溜息と同時に言葉が出た。見間違いでも勘違いでもなかったのだ。
朝食を食べ、外に出るとやはり居る。普通に会話しながら歩いている。
目の前の光景にため息をついたとき後ろから声が聞こえた。
「お前さん妖が見えるのかい?」
「え・・・うわっ!!」
後ろを振り向くと、顔が猫で尾が2つあるではないか。しかも二足で立っている。
驚くと同時に後ずさりをする。
「済まない。脅かすつもりはなかったのだ。」
そう猫の妖怪(おそらく猫又と言われるものだろう)が謝ってきた。
「私はハツナと申す者。実は貴方に頼みがあってここに来たのだ」
そう言った猫の妖怪ハツナは何故か悠月に頼みごとを持ってきたのだった。
狐の窓について詳しく知りたい方またはやってみたい方はお調べください。
ただし、やるならば自己責任でお願いいたします。