助けて! 悪役令嬢様!
「貴方も転生者なんでしょう!? きちんと悪役令嬢として動いてくれないと困るじゃないの!」
そんな感じで、転生ヒロインさんに絡まれました。
御機嫌よう、転生悪役令嬢です。
とある乙女ゲームの世界。
そこに転生した私は勿論早々に察しておりました。
ヒロインも転生者の可能性があるわよね、と思って調べてみたらやっぱりドンピシャ☆
ただ、ヒロインがどのルートを進むのかしら、と思って様子見していたのだけれど、どうやら王道シナリオルートの王太子を狙う事にしたらしい。
王太子は私の婚約者である。
もうこれだけで大体お分かりですわね?
そう、ヒロインを虐める悪役令嬢、エンディング前のイベントで大勢の前で悪役令嬢は今までの悪逆非道な行いを周囲に暴かれ、王太子直々に婚約破棄。ヒロインを虐めていた悪役はその後何もかもを失って、ようやくヒロインは愛する王太子と結ばれるのであった 完ッ!!
という、わかりやすい断罪とかざまぁとかいうやつよ。
何もかもを失う、といっても命までは失わない。
修道院とかに一時的に収容されて清く正しく美しく、世のため人のために働く事で罪滅ぼしを……といったところである。
娼館に売り払われるとか、処刑されるとかじゃないのでとても穏便。
ただ、私はあえてヒロインに何もしなかった。
私の婚約者に馴れ馴れしく近づくんじゃないわよ! とばかりに牽制したりもしなかったし、なんだったら王太子がヒロインさんと接近してキャッキャウフフしてるのをしらーっとした目で一瞥する程度。
他の友人のご令嬢に「よろしいんですの? あれ」と言われても私はにこりと微笑んで「えぇ、いいのです」と返すだけだった。私がそんななので、私の代わりにあの身の程を弁えない女に目にもの見せてやる! とばかりに行動に移る者はいなかった。一応釘も刺したので出たとしても、私から余計な事を……みたいな目で見られる事になるのだ。
折角私のためにと行動したのに余計な事しやがって、みたいに思われたら浮かばれない。それどころか逆に私に目をつけられるとか、行動損でしかない。
マトモな頭を持っていて、それなりの損得勘定が働く相手なら手出しなどするはずがないのだ。
けれども、そういった愛する二人を引き裂かんばかりに次々に迫る妨害が本来ならば二人の愛を更に燃え上がらせる燃料になるわけで。
山も谷も見どころもない恋愛模様など、平坦すぎて全くこれっぽっちも盛り上がらない。
例えるならば予備知識も何もかも一切知らないまま見る初めてのフランス映画、それも年代物で白黒のやつ、とか場合によってはサイレントムービー。
そしてそれを見たのが年齢一桁台とする、という感じで言うと、まぁ、そりゃ退屈極まりないだろうなと。
アニメの方がまだ馴染みがある年齢にいきなりそんな高尚なもん見せたって、面白いと思ってくれる可能性はとても低い。まだ単発ガチャ一発目でお目当て引く方が可能性ある。
ともあれ、何の盛り上がりもない二人の関係は、可もなく不可もなくとても普通で今一歩進展しないままだった。友人以上恋人未満、くらい。
そんな状況を良しとするヒロインさんではなかったらしく、こうして行動力溢れる彼女は直々に悪役令嬢に物申しにきたというわけだ。
「そう言われてもねぇ……」
「何よ、断罪がイヤっていうならまぁ、そこら辺こっちだってどうにか多少は融通きかせてあげるから」
割と話の分かるタイプのヒロインさんである。
こういうの普通、悪役令嬢は悪役令嬢らしく私のためにざまぁされろ、とか言いそうなものなのに。
「いえ、そうではなく。面倒です」
「面倒って、アンタ……」
「だって、貴方が王太子とくっついたところで二年後には死ぬんですのよ? どうせ死ぬのに何故わざわざそのためにわたくし自ら余計な手間をかけねばならぬのです」
「えっ……?」
「あら? ご存じないのですか?」
「えっ? ちょ、えっ!? なになになに、どういう事!?」
「転生者のくせに続編はご存じなかったのですか?」
「知らない、だって私が知る限り出てなかったわそんなもの!」
ふむ、どうやらお互い前世で生きていた年代は若干ずれがある模様。
ヒロインさんはどうやら一作目しかプレイしておらず、ましてや続編が出るなどという情報すら知らないままこちらに転生したようね。
「私がこの乙女ゲームをプレイした時には、シリーズものとして続いていて、確か……6まで出てたんですよ」
「びっくりするくらい続いてる!?」
「えぇ、わたくしもびっくりです。生憎3で一度止まって、久々に4に手を出そうとしたら既に6まで出てたというので驚きですね」
なんで途中でシリーズ追っかけるの止まったかっていうと、ゲーム機が違うから。
3まではともかく4からは新しく出たハードに移行しちゃって、気軽にポンとハードを買えなかったのだ。
他にもいくつかプレイしたいゲームソフトが出る、となれば買ったと思うんだけど、その頃はまだそうじゃなかったし、確かにこの乙女ゲームをプレイはしてたけど、このシリーズのためだけにゲーム機買う程ではなかったのよね……あと丁度仕事が忙しくなって、ゲームしてる余裕もなかったってのもある。
それでもようやく暇ができて、よーし久々に色んなゲームで遊ぼっか、と思って調べてみたら、他に手を出してたシリーズものやら、他の新作やら気になるのが色々出てたのもあって、思い切ってハードを購入したわけだ。そしてその頃には乙女ゲームの4作目は廉価版が出ていたのでついでに買ったに過ぎない。
まぁ、一応時系列的に繋がりがあるとはいえ、4は1のかなり後の年代なので、今を生きる私たちには関係のない話ね。
「とりあえず続編の2なんだけど、前作ヒロインが王太子とくっついたルートとして話が始まるのね」
そう切り出せば、ヒロインさんはとっても真剣なお顔で耳を傾けた。
「オープニングで既にヒロインさん死んでます」
「なんでっ!?」
「なんでと言われても。まぁそういうわけなので、王太子とくっついたら二年後には死ぬのよ。原作パワーできっと。
だから、こうして王太子ルートに行こうとしてるヒロインさんを見て、生き急いでるなぁ、ロックってやつね、と思っておりましたの」
「だから手出ししてこなかったの?」
「えぇ、だって二年後には死ぬんだから、わたくしが手を下す必要あります?」
きっぱりと告げればヒロインさんは乾いた笑いを上げるだけだった。
先の事がわかってるなら、余計な手間は省きたいじゃない?
二年後に死ぬのわかってるけどそれでも今どうしてもお前を殺したいの! というのならともかく、そうじゃなかったら二年後に死ぬしなぁ、で生温かくスルーしとけばいい話。
「な、なんで? なんで私死ぬの?」
「まぁ、まず、ゲームにリアル持ち込み始めると設定が重たくなるのは言うまでもありませんね。あまりにもふわっふわな設定だと現実味が薄すぎてプレイヤーの感情移入が難しくなるから、適度に現実味を持たせるのは仕方のない話なんだけど……
まず貴方、貴族としてのマナーとか知識とかそこまでないでしょ」
「そりゃあ少し前まで平民だったもの、それが実は母親は貴族の血を引いていたとかで引き取られたばかりよ。貴族の知識だのマナーだの、わかるわけないじゃない。前世普通の日本人が貴族に馴染みなんてあるはずないし」
上流階級の生まれであっても、日本に貴族は現代だともうないものね……ちょっと育ちの良い感じを出すくらいならどうにかなっても、完全に貴族として、となると難易度高めなのはわかる。私も幼い頃は苦労したもの。
「そんなマナーもなってないし、知能も猿みたいなレベルの顔と愛嬌だけが取り柄の雌猿を王妃にするのって、王家の人間オッケーすると思います?」
「ひっどい言い草……いやでも、言われてみれば……?」
「シンデレラストーリーはあれ、あくまでも王子とくっついて結婚してめでたしめでたし、で童話部分は終わってるけど、本当は怖い童話の方だといじわるされた姉に復讐かましたりしてるし、ドロドロしてるじゃない?
でもって現実だと結婚はゴールじゃなくてスタートなのよ。もしくは墓場」
「墓場はもうそれゴールでは?」
「人生のね」
だから二年後に死ぬのよヒロインさん。
そう言えばヒュッと息をのんで固まった。
「いくら貴方が頑張って王妃として相応しくなろうとしても、一朝一夕でそういうのが身につくはずもなく、マナーを教える教師は突然やって来た山猿を淑女にしなきゃいけないし納期は決まってるしでストレスマッハ。
戴冠式までに間に合わせようとすれば、それはもう地獄のレッスン。寝る間も惜しむどころか寝かせてくれると思わない事ね。いい? 短期間で必要な知識や情報頭に叩き込まなきゃいけなくなるから、テスト前の一夜漬けなんてもんじゃないのよ。むしろ一夜漬けのテスト勉強の方がよっぽどイージーモードね。赤点取らなきゃ一応はどうにかなるもの。
でも王妃教育は一夜漬けしてその後覚えた事を忘れるなんて事、許されないのよ。
今受けてる学校の授業がとても優しいものなんだ、って思う程度にはハードモードね」
ところでヒロインさん、貴方、この学校での成績は? と聞けばピシッという音が聞こえそうな勢いで固まってしまった。成程、あまりよろしくないのね。知ってた。
さて、そんな自由時間? トイレと風呂と食事の時が休憩時間でそれ以外はありませんよとばかりのスケジュールでもって王妃に相応しい女性として鍛え上げられていくヒロインさんだけれども。
二年後には死ぬのよね。
「正確な情報はわからないけど、諸説としては二つ。
一つ、そんな地獄のスケジュールで毎日デスマ淑女レースしてた結果疲労が抜けず過労死のように死んだ。
一つ、どれだけ鍛えても全く身にならない無能さに王太子が見切りをつけてあいつ処分しよう、となってこっそり処分。
どっちにしても、二年後には身分の差を乗り越えて結ばれたはずの貴方は儚くなってるって寸法ですわ」
前者ならまだしも、王太子に見切りつけられてあいつを殺せ、が真のルートだったら可哀そうよね。まぁ無能の分際で王家に入ろうとした末路と言われてしまえばそれまでなんだけど。
「大体、綺麗なドレスと宝石で着飾ってニコニコしてるだけでいいわけないものね。それでいいなら人形にでもできるもの。なんだったら、国一番の美人にその仕事してもらえばいいわけだし。でも、美人だけで務まらないのよ王妃って。愛人あたりなら頭が悪くても見た目と愛嬌が良ければどうとでもなりますけれども」
悲しい現実を突きつければヒロインさんは何とも言えない顔をした。
乙女ゲームの内容通りに進めていけば、まぁ、多分王太子と結ばれる事も可能と言えば可能だろう。けれどもその後に待ち受けている王妃になるための諸々は、一作目のゲームには描かれていないし、続編ではしれっと文字だけで流されている。
一作目のヒロインがあまりにもあっさり死んでいるという事実に、前作をプレイした人たちは思わず驚いたものよ。
「ちなみに、貴方が死んだあとの王妃の後釜にはわたくしがなります。
一度は修道院に収容されるわけだけど、元々王妃としての教育はそれなりに受けていたし、多少ブランクがあっても即戦力として使える人材なのもあって、続編では色々なすれ違いがあったけれど元鞘に戻った感じになってるわ。
ね? それ知ってたらわたくしが貴方に何かしでかそうとか、面倒なのでしないって言ってもわかるでしょ?」
どっちにしても最後にはくっつくのだ。
正直他の女にコロッとやられて自分に婚約破棄告げた男と元鞘とかマジかよ、って思う部分もあるけれど。
でもまぁ、自分の今後の身の振り方を考えると、王妃になってた方が色々と安全まであるのよね……
「えっと、それじゃ、王太子以外のルートに行ったら……?」
「今から相手を変えるんですの? 王太子殿下とそれなりに仲良くなって周囲でそこそこ噂にもなっているというのに? 逆に男を手玉にとるビッチ、みたいな感じになりそうですけど……」
「でもでもでも、死ぬよりマシなはずよきっと!」
「そう言われましてもねぇ……続編にも今作の攻略対象者の方が数名出てたり、その後どうしているかがちらっと出てきたりしてますけれども……
まず、宰相の息子、彼は隣国に留学していた従兄が戻って来た事で、自分の立場が脅かされると思ったのか余裕のない態度でいつもカリカリしてる感じになってしまいます。
続編でも一応攻略対象者ではあるけれど、正直乙女ゲームというよりはカウンセリングか介護ですわね、彼のルート」
そう言えば、ヒロインさんはすんとした表情になった。
王太子の次に人気ありそうなキャラだったはずなんだけど、続編でああも落ちぶれるって事……ある? とは思いましたもの。まぁ、でも、そういうダメンズが良いというお嬢さんもいたようなので、前作とは別の層からの人気を掻っ攫っていきましたわね。
「次に騎士団長の息子でしたか。彼は、その……後を継ぐはずだった騎士団長の座を辞退して辺境へ赴きます」
「なんで?」
「俺より強い奴に会いに行く、というどこぞの格闘ゲームの主人公のような事をのたまって、常に戦いがある場所に身を置くためです」
なおこちらは次回作の攻略対象ではない。
「仮にあなたが今からそちらに狙いを向けたとして、結婚したら一緒に辺境行きでしょうね。王都と違って向こうは生活も多少不便が出るでしょうけれど……それでもついていくというのであれば、わたくしから口添えしてもよろしくてよ?
まぁ、辺境での生活は間違いなく男所帯でむさくるしく、野郎まみれな事もあってノンデリカシーな連中も多くいるでしょうし、セクハラとモラハラが日常茶飯事だと思っておいていいでしょう。
そういう環境でものびのび幸せに過ごせるというのなら止めませんが」
そう言えばヒロインさんはふるふると首を横に振った。何度も、何度も。
可憐で守ってあげたい乙女でいるよりは、肝っ玉母さんにでもなった方が過ごしやすい環境だけど、ヒロインさんがそうなれるかは微妙なところ。
「宮廷音楽家に史上最年少でなった彼に関しては、続編でなんと結婚しております」
「えっ?」
「しかもお相手はなんと妖精界のプリンセス。なので、こちらを相手にしようとしたら、妖精の姫とキャットファイトする可能性がとても高いですね。妖精の魔法で貴方が別の生き物に変えられてしまうかもしれません。生きてればマシでしょうか。
そうでなくとも、妖精の姫と相思相愛になっちゃうので、そうなると貴方、お妾さんみたいな感じで常に二番手、みたいな扱いになるでしょうね」
「惨め!」
仮に今彼に手を出してくっついても、後からやってくる妖精の姫が運命の相手とばかりにくっつくのであれば、そりゃあ惨めだろう。
「ちょっとまって、最初の宰相の息子は? カウンセリングか介護って言われてたけど」
「次回作の攻略対象なので、次回作のヒロインさんと奪い合う可能性があるし、しかもその場合既に貴方は主人公でもなくなるので次回作のヒロインさんに主人公補正とかヒロイン補正があったら勝ち目はないですけど」
そうでなくともメンヘラと言ってもいい相手の介護とか、したいのですか? と聞けば今のは聞かなかった事にして下さいと言われた。
ちなみに次回作のヒロインさんは若干ダメンズスキーの気があります。この人には私がいなくちゃ駄目なんだわ、みたいな感じで軽率にクソ面倒そうな男とも恋に落ちます。しっかりしろ。
「あとは……隠しキャラの旅の魔導士でしたか。やめておきなさい。彼、次回作で闇堕ちしてラスボスになってヒロインさんに倒されますのよ」
「闇堕ち回避とかできそ?」
「無理でしょうね。もう闇堕ちの原因既に回収済みでしょうから。彼にとって死んでほしくなかった人が既に死んでいるという事実を掴んだので、恐らく今はその元凶を探しているところじゃないでしょうか。
それでも彼の傍にいるのであれば、多分……その、魔導人形の素材とかにされる可能性がとても高いのですが……えぇと、人間をやめる予定は?」
「あると思ってんの?」
「異世界転生した以上種族の変更とか今更かしらと思いまして」
「流石にそこまでぶっ飛んでないんだわ私も」
「それで、他の攻略対象でしたっけ?」
「なんでもないです。私何も言わなかった。そう、言ってないわ」
ぶんぶんと音が出るくらいの勢いで首を横に振るヒロインさんは、今までの発言を無かった事にしたいらしい。まぁ、誰とくっついても未来が……なんというか、お先真っ暗なのよな……
かといって誰ともくっつかないノーマルエンドは、どっちかっていうとバッドエンド扱いだし。
学校卒業後に親が持ってきた縁談によって強制的に嫁がないといけないのよね。
しかも相手はあまり良い相手とも言えない。
ヒロインさん、母親が貴族の血を引いていたとはいえ駆け落ちで家を出てきたので、貴族の家に迎え入れられたとはいってもヒロインさんを慈しんで家族として愛していこうってわけじゃなかったし。
そう考えるとヒロインさんも中々に人生ハードモードよね。
「えっ、えぇ……そんな、それじゃ一体どうしたらいいの……?」
ヒロインさんも自分の今後の人生があまり明るいものではないと察し始めたようで、頭を抱えてぶつぶつ呟いている。
そうよね、乙女ゲームの世界にヒロインとして転生したら普通イージーモードだと思うし、人生勝ったなとか思っても仕方ないわよね。
ところがいざ蓋を開けてみればコレ、じゃねぇ……
転生ガチャ大爆死と言ってもいい。
「ね? わたくしが貴方をわざわざ虐めないの、わかるでしょ?」
そう言えばすっかり青ざめた顔で頷かれた。
だってこれで虐められたらもう悲惨が過ぎる。折角耐えて素晴らしい人生が待っていると思いきや、お先真っ暗ですもの。しかも場合によっては死ぬ。まだ若いのに……
しかも頼りになる仲間らしき人が誰もいないとか、そりゃあ逆境に耐えなきゃいけないタイプのヒロインにありがちではあるけれども、実際に誰も味方がいない状況とか心折れるわ。
「ところで、将来的にわたくしの侍女を一人増やしてもいいんじゃないかしら、とか思っているのだけれどもね?」
あまりにも可哀そうなので、あえてそう言えば。
数秒何を言われたかわからない、みたいな顔をしていたヒロインさんではあるけれど、私の意図を理解したらしい。
「肩を! 揉みましょうか!? それとも靴を舐めますか!?」
「しなくていいわよそんな事。攻略相手によって多少キャラ変するタイプのヒロインとはいえ、貴方それ対わたくし仕様って事? 求めてないわよ下僕キャラは。
ま、侍女といってもわたくし将来的に王妃なので、貴方にもそれなりのマナーや品性とか知性も必要になりますけど、少なくとも貴方が王妃になるよりかは難しくないでしょうし、それに……わたくしが見繕ったマトモでそこそこちゃんとした相手との恋愛とか結婚も望みがあるかもしれませんわね。
馬鹿みたいな贅沢はできなくとも、人並みの生活はできるはずよ」
「一生愛した」
「愛を告げる相手が間違ってるのよねぇ……」
「何から始めればいいですか!? 出来る事はなんでもやります!」
あまりの変わり身の早さに驚くけれど、ヒロインさんも自分の人生がかかっているのだ。仕方がないのかもしれない。
攻略対象の男は頼りにできないし、家族はもっと頼れない。
他に頼れそうな相手もいない中、前世が恐らく同じ世界の同郷出身者でもって、こっちの世界でもそこそこ権力持ってる相手、となれば元は悪役令嬢だろうともヒロインさんから見ればとっても好物件。
まぁ、私がヒロインさんの立場でも逃がすものかと思うわね。
「貴方の今後の頑張り次第と結果でご褒美もあるから頑張りなさい」
「イエスマム!」
アイアイ! とばかりにビシッと敬礼までされた。
下僕キャラは求めてないといったのにそれは何? 部下? わんこタイプの従者キャラ?
住んでた時代はちょっと違うかもしれないけれど、まぁ、元の世界の話とかできる相手と考えれば私もいい拾いものをしたと思う。
ちなみに。
今まで一緒にいた王太子からあっという間に距離を取ったヒロインさんに王太子殿下も不思議に思って話をしたようなのだけれど。
その頃にはすっかりわたくしに懐いた子犬みたいにヒロインさんはクラスチェンジしていたので。
おめめキラキラさせて私の偉大さを語り始めた事で、殿下が大変困惑していた事だけは述べておこうと思うの。
解せぬ、みたいな顔をして殿下が私にそんな話をするものだから。
「殿下とお話ししていくうちに、婚約者が気になったみたいで。それでわたくしの方にやってきたのですわ。すっかり懐かれてしまいました」
とりあえずそういう事にしておいた。
実際殿下も婚約者である私の事を可愛げのない女みたいな感じでちょっと気に食わない部分もあったみたいだし、それをヒロインさんとの話題にも出したみたいなので、切っ掛けを作ったのが自分であるという自覚はあったらしい。うん冤罪☆
結果としてヒロインさんはすっかり私に懐いたし、ぺっかぺかの笑顔で私の事を殿下に語るヒロインさんに毒気を抜かれた模様。
ヒロインさんと私の関係はそもそも間に王太子殿下が挟まっていた程度なのに、そこすっ飛ばしたら途端に仲良しになってる事も殿下にとっては不可思議だったらしい。
彼女があんなに簡単に自分の婚約者の良いところを見つけられたのに、自分はそれに気付けないとかまるで自分に人を見る目がないみたいではないか、と思ったらしく、少しずつではあるが殿下が歩み寄ってきたのもあって。
不仲拗らせて婚約破棄、みたいな展開になるような感じでもなくなってしまった。
ヒロインさんを虐めたりしてなかったから、冤罪吹っ掛けられるかそうでなくとも最初から最後まで愛なんて芽生えないだろうなと思ったりもしてたのに。
ま、ヒロインさんは死亡フラグが折れて私も修道院だとかの面倒要素すっ飛ばして普通に結婚する流れだし手間が省けてお互いによきよき、というところかしら。