五十六話 残った人達
今日もクリフさんはやってきた。昨日クリフさんが隠し事してるのかと疑ったし謝ろうと思っていたのだけど今日のクリフさんは珍しくレヴィさんに用があるのかノックして入った後レヴィさんを見ていた。
「なにかしら?見られていると不快なのだけれど」
「言いたいことは分かるだろ?」
「分からないわ。貴方いつもは私のことを無視してるじゃない」
「そうか。まぁ俺も人のことは言えない方だからいいんだが…俺には言ってもいいだろ?それにリアラが昨日困ってたぞ」
「昨日リアとは話したし、貴方に言うことは特になにもないわ」
私が困ってたというあたりで避難した人達のことかと思って、避難したなら別に良いではないかと思ったがクリフさんとしては先に伝えてほしかったらしい。
私も先に伝えてほしかったとは思ったので何とも言えないが。そんなに不味いことなのだろうか?
「まぁいいか。リアラ今日はどうする?」
「ミーミちゃんのところに行こうと思います。避難してるか気になるので」
「その、誰か分からないけど一緒に行こうか?」
「別にいいですけど来ても面白くないですよ?」
私はレヴィさんに行ってきますと告げて外に、昨日と同じ足取りで西に向かう。
「組合の方はどうだったんですか?」
「残るやつは残ってるって感じだな。レヴィの悪い癖だな…相談せずに行動したりするのは」
「私は人のことあまり言えないのでそこまで注意できないですね…」
わりと面倒をかけてしまってるし、レヴィさんとは違って私は迷惑を実際にかけてるわけだし。
一応現代料理店だったりを覗いたりしながら働いてる人を確認しつつ都市を見て回るが結構な人数がいるように思える。
冒険者もいるし戦争になってもこれだけ人がいたら食料とかに困ることはないだろう。
西は人通りが少なく感じるがお店のほとんどは避難したのだろうと思い。服屋も一軒一軒覗いて行くと残ってる人は残ってる。
ミーミちゃんのお店を開くとそこにはおばさんがいてミーミちゃんも店番をしてたのか私を見ると喜んで近づいてくる。
「リアラちゃん!本当に来てくれた!」
「約束してましたからね。会えて嬉しいです」
ミーミちゃんを撫でながらおばさんに向かって疑問に思ったことを聞く。
「でも避難はしなくて良かったんですか?避難勧告を組合から出てると思うんですけど」
「うちはそこまで移動できる自信がなかったのよ。むしろリアラちゃんは残ってて大丈夫なの?」
「私は大丈夫ですよ。危ないことしてるわけじゃないですしね」
「そうなの?冒険者だから心配してたわ」
おばさんが心配してくれるけどこっちには戦争の首謀者二人が付いてるのだし、国に対して私は攻めるとかはしないから大丈夫。
むしろレヴィさんがこの都市のことを気にかけていたからおばさんとミーミちゃんの方が心配だ。
「今日は遊べるの?」
「あー、外に待たせてる人がいるんですよね…」
「遊べないの?みんなどっか行っちゃう…」
そうか、ミーミちゃんみたいに避難しない人がいたらミーミちゃんの知り合いが避難したら離れ離れになってしまうのか。
そう考えると遊んであげたくなるが…クリフさんに聞いて一緒に遊んでもらおうか。
「ちょっと待っててくださいね」
「うん」
外にいるクリフさんを呼んで中に入って欲しいことを伝えると特に気にした様子はなく入ってくれた。
「クリフさん、この子がミーミちゃんて言うんですけど一緒に遊んであげてくれませんか?」
「俺がか?別にいいが…お嬢さん俺はクリフ。ミーミでいいのかな?」
そのキザな挨拶は毎回しなければいけないルールでもあるのだろうか?
「おじさんも冒険者なの?」
「おじ…そうだな似たようなものだし、ここでは登録してないけど冒険者もやったりするよ」
「無職なの?」
「リアラ。俺は無職かもしれない、すまない」
私に謝られても困るのだけど。
というか別にこの大陸に住んでる人は無職と呼べる人ばかりなのではないだろうか?冒険者もある意味無職みたいなものだし。
「ミーミちゃん私も無職なのです。でも無職の人に無職と言ったら、やっば何もしてない人って思われてる!って焦っちゃうんですよ」
「お母さんが働いてない人とは将来を共にしちゃだめって言ってた」
ミーミちゃんがそう言うとおばさんが目線をずらしていたから本当に言ってたのだろうなと思うし。事実商人とかそういう人を相手にした方がいいだろう。
特にミーミちゃんなんて古着屋を相続するかもしれないのだし逆玉の輿みたいな感じでモテるのではないだろうか。
「お母さんの言う通りですね」
「リアラ?」
「ミーミちゃんはダメ男に騙されないように気を付けないといけませんよ」
「リアラ?」
別にクリフさんは正確に言えば聖教会の英雄なのだから無職ではないだろうと思うが…なんか執拗に私の名前を呼ばれてもおばさんに変な誤解をされたらどうするのか。
外で遊ぶと言っても遊べる場所がないだろうと思っておばさんも暇してたから特に文句もないようだし。四人でほどほどに喋って過ごして今日は帰ると決めてからのんびりと過ごした。
「クリフさんどうでした?」
「なんか疲れたよ俺は」
そんな話をしながら宿に向かう。ミーミちゃんとおばさんの話しでは残ってる人もそこそこにいて案外ミーミちゃんの遊び相手は残ってる人もいるらしいから安心してほしいと話を聞けたりした。
そして今日も帰った後はだらだらと過ごすんだろうなと思ってクリフさんに送ってもらい。部屋に戻る。
「おかえりなさい」
「ただいまです」
「お腹すいたわ」
「また食べてなかったんですか?ちょっと作ってきますね」
レヴィさんは加工してばかりでそれ以外のこともできるはずなのに案外ずぼらだったりするのだろうか。
私が食事を用意すると美味しそうに食べてくれるが、昨日とほとんど変わらないものしか出せないのが申し訳ない。
「私にもレヴィさんの作り方でリットーゲッカを教えてくれませんか?」
「アハァ…私のは魔導で素材を持ち込んだりするからそれを覚えないとできないわ」
「メモが必要かもしれませんね…」
「作り方も材料も書いておくからいつか作ってくれたら嬉しいわ」
それは嬉しいのだけど必要な機材とかも出してないだろうか?いやウィルスさんも作ってたからこの宿屋で作れるのかな?
「明日はどう過ごすのかしら?」
「結構聞いてきますけどもしかして寂しかったりします?」
「勝手にダンジョンに行かれたら困るから聞いてるのよ」
「さすがにそこまで無鉄砲ではないですよ」
「そう。ちなみに聞くのだけれど寂しいと言ったらどうするのかしら?」
「一緒に過ごしますよ?」
「アハハ。ありがとうリア」
最近は笑ってくれるなぁと思いながらレヴィさんと一緒に今日も過ごす。
あまり話題に出したくないから言わないが国家転覆の件は大丈夫なのだろうか?ほとんど魔石ばかり加工しているし、クリフさんも私と適当にぶらついてるだけで何もしてない気がする。
そしてそんな日が続いていく。
基本私が言いださないと何も食べないレヴィさんだと気づいてからは朝食も作るようにして。調味料も宿に残ってたものを味見して何か作れないかなと色々考えてみるが特に思い浮かばなかったので現代料理店の人はまだ残っているので器と布を持ってお持ち帰りでお願いしたり。
クリフさんは相変わらず暇そうに私の手を隙あらば繋ごうとして来るのでそれも気分で受け入れたり受け入れなかったり。
ダンジョンに入るにしてもクリフさんがいたら私の出番もないしと思って。戦争が終わったら王都に行くなら多くの人に英雄がいたと語り継ぐ程度のことはしようと思ってミーミちゃんに私の英雄達を教えて練習してみたりして過ごしていく。
何日もして今日の夜もお持ち帰りしてレヴィさんに喜んでもらおうと思ってクリフさんと外に出ると隙があったのか手を繋がれた。
「リアラ来てくれ」
「どうしたんですか?」
そう言って歩き出すのは東の方で私はなんとなく嫌な予感をしつつ付いて行く。
「話がしたいならそう言ってくれればナップサックに器とか入れて出たんですけど」
「そしたらレヴィが気づくかもしれないだろ?」
「そうですかね?」
一体幾つ加工すれば気が済むのか分からないくらいに毎日新しい魔石を加工してるから気づかないと思う。
ダンジョンの近くに来てようやく手を離してくれたのでクリフさんの話を聞く態勢になる。
ただ多分というか確実に国家転覆絡みの反乱についてのことなんだろうなと思っている。
「悪いとは思ってるし口に出さないようにするとは言ったが伝えておきたかった」
「私は中立でいるつもりですよ?」
「最近のリアラを見ていると余計にでも思ってしまうんだ。だから聞いてほしい。俺たちはもうすぐ行動を起こす」
やっぱりその話だったかと思い、諦めた私にまた何を言うのだろうと思ってしまう。
「リアラがそれでいいなら俺もそれでいいと思う。ただ忘れないでほしい。もし俺に助けてほしいと思ったら、どうにかしてほしいと思ったら言って欲しい」
「…・…まぁ、はい」
結果レヴィさんを殺すなら頼むことは無い。私にそんな気持ちが無いのだから頼むことはないだろう。
「話は終わりですか?」
「あぁ…俺は味方だと覚えておいてくれたらそれでいいんだ」
「じゃあ行きましょう?自堕落な生活をしているし、もうそろそろこの暮らしも終わりだと思ったらミーミちゃんに挨拶とかもしないとですね」
「そうだな」
私が不機嫌なことを察したのか口数が減ったクリフさんを引き連れてお持ち帰りの料理を宿に持ち帰る。
「おかえりなさい」
「ただいまです」
もう何度もやりとりした内容を繰り返しながら今日は牛丼を持ち帰ってきてレヴィさんと一緒に食べる。
「しかしあの男も大概ね。毎日飽きもせずに良く来るわ」
「レヴィさんが昔に言ってましたけど本当に暇なんでしょうねクリフさん」
それにしたって私が不機嫌になると分かっていながらまた話題を持ち出してきたのは心構えとかを確認したかったのかもしれないと思うと申し訳ないことをしたかなとも思う。
「リアは――」
「明日ですよね?暇ですよ」
「アハァ…毎度聞かれたらさすがに飽きられてしまったかしら?」
「飽きては無いですけどお馴染みのやりとりは好きな方ですよ」
「それじゃあ明日なのだけれど私に時間をくれないかしら?」
「珍しいですね?レヴィさんの方からそう言ってくるの」
いつも聞いては終わりのやり取りだったのに明日は私と何をしたいのだろう?
「明日は野宿をすることになるかもしれないわ」
「野宿ですか?ということは移動ですか?」
「そうね。ただ都市の近くで野宿をしたいのよ」
ピクニックにでも行くのだろうか?外は危なくないのか気になるが私が起きてれば大丈夫かな?
「見張りって順番にしたりするんですか?」
「リアは寝ててもいいわ。私とクリフが起きているから」
「クリフさんも一緒だなんてそれこそ珍しいですね。レヴィさんはクリフさんと行動あまりしたくないのだと思ってました」
「別に一緒にいたいとは思ってないわ。ただちょっとダンジョンにも入らないといけないかしら」
それって前に言ってた探し物のことだろうか?もしくは魔石が足りなくなったのかな。
なんにしてもレヴィさんの方から誘ってきたことが嬉しい。
「しばらく動いてなかったから私も戦闘したいかもしれません」
「いえ。多分1階層で十分だわ」
それだと私は戦力にならないかとも思い。平和続きだったから運動しないといざという時不安になってしまう。
久しぶりと言うこともあって一応ナップサックや剣、斧槍を確認しつつ明日に備える。
「リアは…いえ。なんでもないわ」
「それは気になるパターンのやつです。言ってくれないと後悔しちゃうやつですよ?」
「後悔。そうねリアは後悔しないために生きようとしてたものね」
「諦めちゃいましたけどね」
「私が言うことではないかもしれないのだけれど、諦めなくていいと思うわ」
今日は心が揺さぶられる日なのか、諦めさせた張本人が言ってくるとさすがに困る。
「どうしてそう思うんですか?」
「優しい人は報われて欲しいと思うのは我儘かしら」
「我儘ですよ。レヴィさんに諦めさせられたんですから。でもせめて諦めないようにレヴィさんは守るつもりでいます」
「アハァ…優しいのね。ありがとうリア。その気持ちはとても嬉しいわ」
疲れていたのか、レヴィさんが先に呟きながら眠り始める。
毎日魔石ばかり弄ってたまには外に連れて行くべきだったかと考えて、時間があるときは散歩にでも連れて行こうと思った。
明日か…なにするのだろう?探し物は1階層にあるとも思えないし、そもそも探し物がなんなのか結局聞けずじまいだ。
少しでもレヴィさんの負担を減らしてあげれたらいいのだけど。そうすれば私も一緒に反乱者の仲間入りか…それも悪くないのかもしれないなんて思えるくらいにレヴィさんと一緒に過ごしてる気がする。




