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五十話 アーライナ魔窟4階層

 4階層で私達はグランダが走ってる光景を見ながら進んでいた。


 グランダがどんな魔物なのかと言えば頭が綿毛のダチョウだろうか?ただ走る速度がそこそこに速いのと好戦的ではないところが不思議だ。

 特になんでダンジョンがこのグランダを用意したのかが分からない。


「レヴィさん、あれって襲ってこないんですか?」

「アハァ…リアは私に毎回聞いてくるけど他の連中に聞いてもいいのよ。別にいいのだけれど。グランダは元々草食だったはずよ人間を襲っては来ないし、かといって好き放題走り回るから害獣ではあるわね」

「魔石って凶暴になるんじゃないんでしたっけ?」

「凶暴になった結果が意図的に襲っては来ないけれどぶつかるのも気にしない程度に走り回るわ」


 海でいうマグロみたいな生き物なのだろうか?泳ぎ続けてないと死んでしまうような。


 しかし走り回ってるのをよく観察してると3階層と同じような作りをしてる4階層の木々にぶつかりながらも木をへし折っても走り続けてるのを見ると確かに凶暴そうだ。


 たまにこちらに向かってくるグランダがいればそれに対してクリフさんが足を切断したあとに首を斬って私達に被害が出ないように配慮して倒してくれる。


「これって魔石いくらくらいなんでしょう?」

「銅貨10枚くらいだな。ダンジョンのグランダは結構儲かるらしい、素材も銅貨30枚くらいはするって聞いた」


 レッド君が解説してくれるのを聞いて、案外5階層6階層目指さなくてもレッド君なら4階層で十分儲けれるんじゃないかと思った。


 それにしてもここまで私達の出番が全くと言っていいほどなかったので4階層の変異種もクリフさんがあっさり倒してくれるんじゃないかなと思いながらレッド君に現在地を聞く。


「5階層に行くためにはあとどれくらいなんです?」

「ちょっと待ってな地図見るから。もう少しか?クリフさんがすげえからな順調すぎるほど進んでるな」


 レッド君が尊敬の眼差しを向けてクリフさんを褒めている。気持ちは分かるけどレッド君も強さを求め始めて無理とかしないか心配になってしまう。


 もう少しという言葉の通り、少しの時間歩いて進んでいると急に周りが暗くなった。


「上だ!全員下がれ!」


 クリフさんの叫びと共に後ろに下がればドスンと木を地面を潰して空から降ってきた。

 その姿の全貌は巨大という他言い表すことがないほどにでかく、上を見上げても頭が見れなかった。


「これがグランダの変異種ですか」

「レヴィから聞いてたが本当に変異種が現れるんだな」


 クリフさんがそう言いながら巨体に向かって剣戟を浴びせ胴体から血を噴出させるが特にダメージらしいものは無く巨体は起き上がる。


 太い足はこれまで見てきたグランダのものと類似していてグランダが巨大になっただけなのかと思っていたらクリフさんがその足に吹き飛ばされた。


「「クリフさん!?」」


 レッド君と声が被さりながら心配するが、くるっと一回転しながら着地して口の中に溜まった血を地面に吐き捨てながらこちらに近づいてくる。


「レヴィ、あれどうにかならないか?」

「貴方なら飛んで首を斬り飛ばせるくらいするんじゃないかしら?」

「多分だがブレスを吹いてくるこいつは」


 なにをどうやってそう思ったのかそう言ってレヴィさんを頼ってきて、レヴィさんは溜息を吐きながら魔石を取り出す。


「解き放て『龍の飛瀑』」


 使い勝手がいいのかレヴィさんが良く使う魔導っぽい高圧水を噴射させて胴体に向けて削るように当てると悲鳴のような大音量の鳴き声を放ち始めた。


「クェエエエエエエエエエエ!!」


 あまりの大きさに鼓膜が破れたんじゃと不安に思うほど脳内に響き頭がぐらぐらしつつ、クリフさんがフレイさんを担いでレッド君と私を手繋いで一緒に走る。


「―――――」

「――――――――――」


 レヴィさんと何かを話してるのだろうけどさっきの音が残っていて二人がなんで無事なのか疑問だけど助けてもらいつつ後ろを振り返ると巨体を思うがままに地団太を踏んでるグランダの変異種は暴れていた。


 ある程度距離が離れたと思ったら巨大グランダの足がこちらに向かって進んできていてフレイさんを雑に降ろしたクリフさんが足に向かい突撃して剣を刀身が明らかに足りてないはずなのに片足を斬り捨てた。


「あれどうなってるんですか?」

「―――――――――」


 多分レヴィさんが答えてくれているのだろうけど上手く聞き取れず。その後はレヴィさんも巨大グランダに向けて魔導を使い始める。


「―――――――」


 高圧水とは違って砂嵐のようなものが真っすぐに螺旋を描いて巨大グランダを再度貫いていく。

 そして足が傾き、胴体も傾いていってそれがバランスが取れずに転んでいるのだと気づいたときには地震がおきたように振動してまともに立てなくなり倒れる。


 とてもではないが3階層までのなんとか人のサイズをギリ届く許容できるものなら何とかなっていたがクリフさんがいなかったら果たしてどうなっていたのかと思うほどに何も役立ってない。


 その後も何とか耳をどうにか治したいと願いつつレヴィさんの声を聞く。


「レヴィさん、何か喋ってくれませんか?」

「さっきから色々説明していたのだけれど回復してなかったのね。あとはクリフがなんとかするから放っておいて大丈夫よ」

「そうなんですか?ありがとうございます」


 レッド君達はまだ回復してないのかそもそも起き上がってこなかったので死んでるのかと心配して脈を確かめて生きてることを確認する。


「グランダってあんなに育つんですか?」

「普通は育たないわ。それ以前に私が想像してたのは怪鳥の類が変異種かと思ったらグランダが巨大になっていたなんて予想外だったわ」

「クリフさんがいてくれてよかったです」

「それにしたってグランダの変異種がこんなに強いなんて思わなかったわ」


 階層を降りるごとにどんどん強くなってる気がするし、このまま降りれば私なんて太刀打ちもできないくらいに強い魔物なんてゴロゴロいるだろう。


 巨大グランダを仕留めてきたのかクリフさんは戻ってきて、その手には魔石を持っていた。


「待たせたな。リアラはもう回復したのか?」

「はい、心配かけてすいません」

「無事で良かったよ、心配してたからさ」


 あれだろうか、私のことを幼いというか最初に泣きついていた印象が強いのかクリフさんはとても心配性な気がする。


「それよりもどうするのかしら?二人の回復を待ってから一度戻ってまたダンジョンに挑むの?」

「いや、進もう。次がオークの変異種というのなら俺がさっさと倒した方が効率がいいしミノタウロスも俺なら問題ない」


 圧倒的自信があるのかクリフさんは平気な顔をして言ってるが4階層を颯爽とレヴィさんの力を借りていたとは言え巨大な魔物の攻撃を食らっても平気な顔してるのだからそれくらい本当にしそうだ。


 私としては二人の回復を待ちたいが、クリフさんは二人を両肩に担いで行く気なので大人しくついて行く。


「クリフさんはどうやってそんなに強くなったんですか?普通のやり方じゃないですよね?」

「俺か?そりゃあ努力とかもしてるんだけど、レヴィからある程度は聞いてるんだろ?聖教会では英雄を作るために特殊な訓練をやってんだけど…まぁリアラが知ってもいいことはないな」


 それは魔導回路を刻んだりとかそういうのだろうか?それにしてもレヴィさんが魔導でクリフさんが肉体?的に強くなるのだとしたら魔導回路とは相当奥深いのかもしれない。


 クリフさんについて行き5階層に向かう階段にたどり着くと、クリフさんが地図を出していないことを思い出してそれも聞いてみる。


「地図持って無いみたいですけど、どうやって道を把握してるんですか?」

「ダンジョンとはいえ空気が流れてるからな。それを感じるところが出入り口と把握してるし、ほかでいえばそうだなぁ…ダンジョンは魔力の流れが特殊で奥に行くほど濃密な魔力をしてるんだよ」


 そういうものと言われたらそうなのだろうけどそれならレヴィさんも見えるのかとレヴィさんに聞こうとしたら私が質問するのを分かっていたかのように教えてくれる。


「私には無理よ。魔力の流れを読み取ることは出来てもそこまで正確ではないしダンジョンの魔力は漂っていて流れとかを分かるのはクリフが特殊なだけだわ」


 どんどんクリフさんが、英雄と呼ばれるほどの存在が人間離れしてるように思えて、そうまでしないとここまで強くはなれないんだと思うと私はいつになれば追いつくことが出来るのか。


「5階層に続く階段があるな。二人が回復するのをそこで待とうか」


 ちゃんと回復を待ってくれて安心したけど、二人からしたら今まで1階層ずつ攻略していたのに2階層越えともなると疲れとか…いや、主に戦っていたのはクリフさんとレヴィさんなのだからあまり疲れてはないのかな?それでも移動で疲れてるかもしれないしある意味で助かる。


ゆっくりと遠くの方でグランダが走ってるのを見かけながらオークの変異種とはどんなのだろうかと考えていたら二人が回復してバランスがまだふらついているが声が聞こえるようでクリフさんが体調などを聞いて確認していた。


 私はレヴィさんにオークの変異種について聞いてみる。


「オークの変異種、それとミノタウロスもですけどどんな変異種だと思いますか?」

「アハァ…オークに関してはそもそも猪の変異種なだけあって普通にオークの上位種が出てくると思うわ。ミノタウロスも同じね、牛の変異種が二足歩行の牛で武器を使ってきたりするからそれが出てくると思うわ」

「そういえばオークは豚…じゃなくて猪の変異種なんでしたっけ?」

「まぁ豚と言えば豚ね。猪も変わらないと思うわ。ただ豚の魔獣は暴食を行ってくる害獣ね、畑の食料を根こそぎ食べてはどこでもどんなものでも食べて迷惑をしてるわ。豚も変異種はオークだしね」


 どんな違いがあるのかは分からないけど、豚の変異種もオークだとして猪の変異種もオーク。なぜ種別が違うのにどちらもオークなのだろう?と疑問に思うが似通ってるからだろうか?


「豚のオークも猪のオークみたいになるんですか?」

「見た目に近いこそあれ豚のオークの方が美味しいってくらいかしら?ただあくまで変異種の話よ?」


 そう言われれば普通に山を走っていたときに四足歩行の猪もいたけれど、あれはもしかしたら獣かもしれないし魔獣かもしれないしと私が見ても分からないのか。


 レヴィさんやクリフさんの眼なら見えるのかもしれない。


 これから戦うであろうオークについても聞けたところで兄妹が歩けるくらいに回復して5階層に向かう。


 一気に真っすぐと進んでるがダンジョン内部なので時間間隔がいまいち分からない。どれくらいの時間が流れているんだろうと思ってたら5階層はジャングルと呼べるような場所が広がっていた。


「ダンジョンて世界観バグってませんか?」

「リアラちゃんはどんなのイメージしてたんだろー?」


 私が疑問を言葉にしてそのまま言うとフレイさんが話して、その後にクリフさんがわざとらしい咳払いを入れた後に話し始める。


「ダンジョンってのはダンジョンそのものが今まで蓄えた知識や記憶をそのまま具現化するように魔力を使ってるんだ。だからそうだな…ダンジョンが作りたいものが作られているって感じだな!」

「クリフ貴方。前に私がダンジョンについて聞いたときには知らないと答えなかったくせにリアに対しては流暢に喋るじゃない」

「最近知ったからな」

「どうだか?」


 相変わらずレヴィさんはクリフさんに食って掛かる言い方をしているが。それは置いといてもダンジョンの内部はダンジョンさん?性別があるかは分からないがダンジョンの意思をそのまま反映してるのか。


 でもそれなら何も知らないダンジョンからは何も生まれてこないのだろうか?それともダンジョンに入ってきた獣やらなにやらを覚えてからそれを生まれさせるのか。


「ダンジョンて魔物なんですよね?それなら元々はどんな生物だったとかあるんですか?」

「それも俺が答えようか。レヴィは知らないだろうし、ダンジョンはわりとなんでもなるって言えばいいのかな?人間も獣も植物だってダンジョンになる可能性がある」

「サラッと凄いこと言ってませんか?ダンジョンになるって岩?洞窟に体を変形させるんですか?」

「アハァ…私だって知ってることくらいあるわ。ダンジョンとは魔導の失敗作とも成功作ともいえる成れの果てと呼ばれていて複雑な魔導回路を刻んだその先がダンジョンに進化するわ」

「ってレヴィが言ってるけど。魔導なんて知らなくてもダンジョンは生まれるから貴族の話を聞いても結果的にいやあダンジョンはなんでもなるっていうのが一番わかりやすいだろ」


 レヴィさんの方が説得力があるのだけど、クリフさんの話の通りなら魔導が関与してるのかしてないのかいまいち分からなくなってしまう。


 二人のやりとりを一応聞きつつも兄妹二人が。


「なに言ってるのか分かんないやー」

「俺たちだけ置いてけぼりだな…」


 そんな意気消沈するように呟きながら進んでいく。


 そしてクリフさんがいることで現れる四足歩行の猪とオークがちらほらと見かけるのだがクリフさんの強さで忘れつつあるがここはダンジョンなわけで本来は危険なのに談笑しながらも進めているという不思議な気分も味わっている。


「お?今回はあいつか?」


 何かを見つけたのかクリフさんは歩きづらいジャングルの中を走って行き、獣のような鳴き声がして戻ってくる。


「え?もう終わったんですか?」

「さすがに斬りやすかったら手こずったりはしないから安心しな」


 私達が前に進むとそこには両腕を切断されて倒れている猪の鬼とでも呼ぶべきか。角を数本頭から生やし、金属製の槍を切断された腕に持っていて。生きていたら強そうと思えるオーガの時と同じくらいのサイズのオークがいた。


「いくらなんでもクリフさんが強すぎませんか?」

「ははは。まだまだだけどそう思ってくれるなら嬉しいな」

「この槍って私がもらってもいいのかなー?」


 さりげなく槍を拾ってきたフレイさんだけど、重たそうにしてるから扱いきれないのではないかなと思っていたが。クリフさんからは「とっとけとっとけ」と言われて喜んでいるのでいいだろう。


 4階層で悪戦苦闘を虐げられていたからもしかしたら5階層も苦戦するかと思っていたのに拍子抜けの状態でクリフさん達はそのまま6階層に向かい出す。


「今日だけでどこまで進む気なんですか?」

「レッドを6階層まで運んでやるんだろ?それなら今日はそこまでだろ」


 レッド君が居たたまれなそうな顔でいるが私もフレイさんも何もせずにここまで来てるから安心してほしい。

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