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四十七話 小さな約束

 ベッドにはフレイさんと私が一緒に寝ることになってレヴィさんは一人で寝ることになった。


 食事や温水で体を拭ったりをしたからいいのだけど、フレイさんがちょこちょこトイレに行ってることが気になった。


「レヴィさん、私、思ったらトイレしてないんですけど」

「回路を刻んだ者は基本不要よ、不純物も体内に収まってるものは放出されていくわ」

「え…それって回路を刻んでない冒険者とかはどうしてるんですか?」

「知らないわ。携帯トイレでも使ってるんじゃないかしら?」


 なんだ携帯トイレって。おむつみたいなものだろうか?思えば私がそもそもトイレを気にしたことが無かったから気にしてなかったけどゲンボウさんやディズさんがトイレで離席したってこともなかったような。


「井戸の件でもそうでしたけどそれも魔道具か何かですか?」

「街まで発展したところに畑がないの気になったことないかしら?」

「そういえば見なかった気がします」

「この都市もそうだけれど、ある程度発展したら魔道具が配給されるわ。そうなれば基本魔道具でなんとかしてるわね」

「仕組みを知りたいです…」


 そう聞いたところでフレイさんがトイレから戻ってきたのでまた後日という流れになってしまった。

 ただ眠ろうとしても中々寝付けなかったのでちょっと風でも起こしてから眠ろうかなと思い立ち上がっていつものように風を起こそうとしたら部屋中を風が吹き荒らした。


「なななななにー!?」

「リア!なにしてるのかしら!?」


 私もただいつものように眠る手順を踏もうとしただけなのにいつもと違う反応が起きて驚いている。


「えと、分かんないです!」


 部屋が散らかってしまったけど、今から片付けていると眠る二人にも迷惑だし。そもそも起こすようなことをしてしまったけど…。


「明日片付けるので…今日は寝ましょうか」

「なにか毎回起こさないと気が済まないのかしら」


 そう言われても仕方ないので言葉を心に留めて、変なことをしたからか一応は眠れそうな気がして瞼を閉じる。




 朝になると、二人はまだ眠っていたので静かに片づけをしながら過ごしていたらレヴィさんが先に起きて部屋の惨状を見て小さくため息を漏らしていた。


「リアは変なものを食べちゃったのだから注意してから今後は何か試してちょうだい。もしくは私に一言言ってからにしてほしいわ」

「はい…すいません」


 魔石を食べたときもレヴィさんがリンリーさんに言ったりとお世話になったのだからちゃんと言うとおりにしようと思いつつレヴィさんはまた魔石の加工を始めてしばらくするとフレイさんも起きた。


 朝食をレヴィさんが求めて以降、ウィルスさんが朝食を運んでくるようになったのをありがたく感じながら私たちは朝食を済ませた後はフレイさんと話しながら今日はどうしようかなと思っていたらレヴィさんがクリフさんに会いに行くと言い始めたので見送りながらどう過ごすべきか悩む。


「リアラちゃんたしか装備新調したいって言ってなかったっけ?ダンジョンには間に合わないかもしれないけど一緒に買い物行く?」

「それもいいかもしれませんね」


 フレイさんと一緒にゴドさんのところに顔を出しに行くことにして、あとは適当にぶらつくのもいいかもしれないと思って宿を出て向かうことにした。


 一概に防具と思ってもたしか次に装備を買うとしたらと相談したときは鎧と言われていたからどんな鎧ならいいだろうかと考える。

 金属鎧を今なら買えるくらい稼げているのではとも思うがせっかくお金持ちになったのだし恩返しもしつつお世話になったお店で買い物をしてあげたい。




「前に言ったことを忘れたのか?うちは革を扱うが金属は扱わねえぞ?」


 あー、そう言われればそう言ってたなぁと思ってしまった。


「リアラちゃんてそもそもなんで鎧付けるのー?」

「やっぱり痛いからですかね?それに安全じゃないですか」

「私はリアラちゃんが鎧付けて可愛くないのは嫌だなー」


 それは私だっておしゃれできるならしたいとは思うけど防御力に可愛いを求めてそう簡単に手に入るものではないだろう。


「お前らは防具を何だと思ってんだ…」


 ゴドさんも呆れたように呟き、そして思案気な顔をして顎に手を添えて「まてよ?」と考え始めた。なにかあるのだろうか?


「可愛けりゃいいんだよな?」

「おじさん何かいいものあるのー?」

「そりゃ鎖帷子を適当に着けて上から服着りゃいいけど、防具が可愛いって言ったらやっぱグランダの毛皮を使った防具じゃねえか?」


 それを聞いて私はゴドさんの話をもう聞く意味はないかなと思い鎖帷子を買おうと思ったらフレイさんがグランダの毛皮に反応してしまう。


「それ可愛いの!?グランダってあの綿毛鳥でしょー?」

「あれなら防御力はないが防水だから便利って代物くらいだが。とにかく加工しやすい。それに限る」

「リアラちゃん!一緒の服選ぼうよー」

「一緒ですか?色違いとかないんですか?グランダがどんなものか私よく分かってないんですけど」

「色はグランダによって変わるから色の指定とかはできないが勝手に色違いになるぞ」


 ダンジョンの4階層はグランダの生息域と聞いてたし案外結構人気な魔物なのだろうか?それにしたってイメージしにくいからどうしたものかと悩んでいるとフレイさんとゴドさんが話を進めていく。


「リアラちゃんは白が合うと思うんだけどおじさんどうにかならないかなー」

「白はすくねえな…黒や緑が多いんだが在庫的に厳しいな」

「私は青とか水色みたいなのがいいなー」

「もっとすくねえな…茶色とかグレーならあるんだがな」


 さっきからゴドさん黒系の色を述べてるけど在庫整理したがってる?

 私は黒でいいのだけど。フレイさんがもう見本を見せて欲しいと言ってどの色にするか決めていく。


 まぁ…鎖帷子を別で買ってその上に着ればフレイさんも満足してくれるだろうと思って眺めているとどんなふうにするのか決まったのか金額の話になっていた。


「一着あたり銀貨40枚でどうだ?」

「どうせもっと買うんだからまけてよー、四着買うよ?」

「むしろ仕事量増えて俺が大変なんだから38枚が限界だ、それにそこの奴は金額に関して文句言わずに買うぞ?お前がケチに見られていいのかよ?」

「リアラちゃんの交渉役は私だからいいんだよー、それにリアラちゃんが着て人気が出たらおじさん儲かるでしょ?」

「服のためだけに銀貨支払ってまでそろえてくれそうな奴がいたらそうかもな」

「組合ではリアラちゃんすごく目立ってるんだからすぐに元が取れるよー」


 いつの間に交渉役になったんだろうと言うのは無粋だとして、二人のやりとりはそれこそ交渉役に任せて店の陳列してるものを見てみるがどれも代わり映えのしないものばかりだ。


 ブーツは今のところまだなんとかなってるし今のうちに予備を作ってもらうというのもいいかもなーと思っていたらフレイさんが私の所に来て買い物が終わったようだ。


「金額はいくらになりました?」

「一着35枚!私とリアラちゃんで二着ずつだね」


 防具…ていうかもう本人たちも服と呼んでいたし服にしては高い買い物を済ませてフレイさんに銀貨70枚を支払いつつ、金属鎧が売ってそうなところに向かう。


「まだ何か買うのー?」

「ええ、素直に鎖帷子買えばいいのだと気づかされたので買っておこうかなと」

「重たくない?それにダンジョンの中だと暑いかもしれないよー?」

「暑いのは嫌ですけど、重いのは問題ないので大丈夫ですよ」


 雑談しつつお店を適当にぶらついていたら鎖帷子を売ってる店を見つけて銀貨50枚で購入してサイズ合わせでしばらく時間を要すると言われたので軽く体のサイズを測られてそれだけで済んだ。


 もっとしっかり測らなくていいのかとも思ったけど鎖帷子は肌着の上に着るものだし少し余裕を持たせるのと、購入した鎖帷子だと袖や裾をある程度整えればいいくらいなので明日には出来るのだとか。


 私が選んだのは大人用だったと思ったけど在庫に小さいサイズもあったのかもしれないと思いつつ手軽に済ませれるならそれに越したことは無い。


 あとは昼食でも食べて過ごそうかとフレイさんと話し合っていたら。


「リアラちゃん!」


 フレイさんとは違うもっと幼い声が後ろから聞こえて振り返ると古着屋で出会ったミーミちゃんがそこにいた。


「どうして…こなくなったの?」

「えと。なんと言いましょうか。ダンジョンに挑んでる私を見るとミーミちゃんが辛いかと思いまして」

「それも嫌だけど、リアラちゃんがこなくなるのはもっと嫌!」


 どうしたものかと悩んでいたらフレイさんがミーミちゃんに近づいて話し始める。


「ミーミちゃん?私も冒険者なんだよねー。リアラちゃんと一緒にダンジョンに行ってるんだー」

「お姉ちゃんも…?」

「そうだよー、リアラちゃんて傷ばっかり負ってすぐに心配しちゃうよねー、分かるよー。お姉ちゃんもね、冒険者なんて嫌だって思うときもあるけどさ、それでも何かしてなくちゃいけないってなってそれがお姉ちゃんやリアラちゃんにとって冒険者だったんだよね」

「お店で働くのはだめなの?お母さんはそうしてるのに」

「私はそれでもいっかなーなんて思っちゃうよー。けどリアラちゃんはお店でも働けるんだろうけど冒険者じゃないとできないことをしようとしてるからお店はだめかなー」


 私がやろうとしてることを代弁するようにフレイさんがミーミちゃんと話していく。もしかしたらフレイさんは私が強さに拘ってなかったら6階層以降にも挑もうとしなかったかもしれない。

 それはお店で働いてもいいし、先日話した商人の人と恋愛するでもいいし。そんな未来もあったかもしれないようなことを話していく。


「この都市もさ、いろんな人が働いてるよね?それと同じようにお姉ちゃんたちも別のやり方で危ないかもしれないけどリアラちゃんはさきっと強くなってお姉ちゃんやミーミちゃんが心配しなくてもいいような人になるから大丈夫」


 期待されすぎるのも困るけど、それも信頼されてるからと思えばこそばゆい気持ちになるものでフレイさんが私のことを強くなると言ってくれるのは嬉しい。


「それじゃあリアラちゃんまたおうちにくる?」

「いくいくーお姉ちゃんも一緒に今度行くから待っててよー」

「約束します。いつ…とかは決めれないですけど必ず行きますから安心してください」

「うん…がんばる…」


 何を頑張るんだろうと思うけど、きっとこの子はこの子で今まで私がこなかった寂しさやこれからの寂しさに頑張るのだろうと思った。


「ミーミちゃん、ごめんなさい。本当は気まずくて会ったらミーミちゃんの悲しい顔を見てしまうのではと私は逃げていました」

「ううん…ごめんね…あの時のことずっと後悔してたの…もっとお話し本当はしたかったの」


 こんな幼い子を悲しませてしまったのなら私の責任だろう。まったく良い歳して子供を泣かせるなんてと自分に嫌気が差してきそうなくらいに。

 ただ偶然とはいえここでフレイさんがいてくれてよかった。きっと私一人だったら言い訳ばかり並べてこの場を誤魔化すことしかしなかっただろうから。


「フレイさんもありがとうございます」

「なになにー?リアラちゃんもお姉ちゃんって思ってくれるのかなー?」

「実は私30歳以上なんでフレイさんは妹ですね」

「あははー。それならリアラお姉ちゃんって甘えようかなー」


 フレイさんが冗談で言ってきたのに対して精神年齢に限って本当のことを言うと冗談に捉えてもらい、今日はミーミちゃんと遊べないのでまたいつか遊ぼうと二人で約束をしてちょっと遅い昼食に向かう。



 行くところは相変わらず現代料理店なのだが、今日はフレイさんと同じものを食べようと思いピザを一緒に食べた。


「リアラちゃんて本当にクリフさんて人のこと好きじゃないの?」

「またその話ですか…?フレイさんに分かりやすく言うと吟遊詩人で唄われた存在が本当に現れたみたいな感じですよ」

「分かりやすい!けどさー私もクリフさんを見たことないから分かんないけどリアラちゃんが誰かを好きになることって想像しにくくて。それなら信用できる人がいいんじゃないかなー?って」

「レヴィさんにすごい止められてたじゃないですか、私が信用しててもその人が必ずしも良い人だとは言えませんし」

「リアラちゃんって会話するとやましい気持ちがあってもその人が離れていきそうだねー」


 失礼な。モテたことが無いから分からないけど、そういう性格してるのだろうか?ま、まぁ、誰かと恋人的な何かになるとか想像してないから別に良いのだけど。


 ただ人間的な何かが損失してたりしないかという不安の方が出てきてしまう。


「私からしたらフレイさんは騙されやすそうで心配ですね」

「リアラちゃんの方が騙されやすそうだけどなー」

「むぅ」


 実際騙されたとかないよね?と過去を振り返るがなかったはずだ。むしろ無さ過ぎて私ってモテてる方なんじゃないだろうか?


 ゲンボウさんに無償で街まで連れてってくれたし、ディズさんも稽古を付き合ってくれたし。そうだ依頼で受けた見張りの仕事なんかは好評だったし!私はモテている!

 なんというか考えると空しくなったのでこれ以上は自分を上げることを考えるのはやめておこう。


 その後も宿に話しながら帰り、私がベッドで座るとフレイさんが私に笑顔を向けてくる。


「夜にクリフさんが来るかもしれないなら私はお邪魔かなーと思うんだー」

「変なこと考えてないで休みましょう。お店歩き回って疲れてるんじゃないんですか?」

「もー。知ってますよーだ、どうせレヴィちゃんがクリフさん連れてきてもダンジョンの話とかしかしないんだろうなーって」


 ダンジョンの話をするならレッド君も6階層までとはいえパーティを組むからできればここに呼んだ方がいいのではとも思うけど。

 ただ。ただ、私としてはあの村から出て行ってから何があったのか聞きたいこともあるから少しは昔話をするかもしれない。



 二人でダラダラと過ごしてるとノックの音が聞こえてウィルスさんが来たのかと思ったらレヴィさんの声が聞こえた。


「連れてきたわ。入るわよ」


 そう言ってドアを開けてレヴィさんが私達を見た後に後ろを見て連れてきたのは私が何度も思い出していた英雄の姿。


 その姿を見ると思わず立って近くに行くと体を包み込むように抱きしめられた。


「リアラ。会えてよかった。とても心配していたよ」

「私も…無事で良かったです。心配してました」


 ちらりとフレイさんの方を見るときゃっきゃとはしゃいでいて、レヴィさんの方を見ると意外に口をぽかんと開けてこちらを見ていた。

 レヴィさんがそんな口を開けてる姿が珍しくてなんだろう?と疑問を抱きながらも今はただクリフさんが生きててよかったと思う。

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