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四十六話 こいばな

「じゃあさ、二人は気になる人とかいないのー?」

「アハァ…リアのことは気になってるわ」


 それって魔導的な観点の話じゃないだろうかと突っ込みたくなったがそれを指摘して正解だとしても空しいのでやめておく。


「その…リアラちゃんがいいなら止めないけど…二人とも綺麗だもんねー」


 笑いながらフレイさんが信じてしまいそうになってるじゃないか。

 私としては恋愛をこの世界に来たときは考えるよ余裕があった気がするけど、それも今では遠く感じるくらいに強さの渇望があったから考えて来なかったけど私の恋愛対象って男性なのだろうか?心的にはどっちつかずだからなんとも言えないけど前世ではちゃんと女性に魅力を感じてたはずなんだけど。


「私はそもそも恋愛とかよく分かってないですね。強くなりたい気持ちばかり追いかけてきたので」

「いずれは引退しなきゃいけない冒険者なんだしさーちゃんと考えないとだよー?未婚は寂しいよー」

「レッド君がいるじゃないですか」

「いや兄だし…てか同じ冒険者してると結局このままじゃ開拓生活に戻っちゃうだけだよー」


 そういえばこの国の人は商人をやってる人が多い気がする。村はあぶれた者が働かされる感じだろうし結婚とかそういうの考えたら冒険者って名が売れてる人ならともかくそうじゃないならどこかに雇ってもらって余生を過ごすのだろうか?

 そもそも名が売れた冒険者とか会ったことも聞いたこともないんだけどどうやって広まるのだろう?


「冒険者って結局どうなることが多いんですか?」

「アハァ…ほとんどは兵として雇用されたがることが多いわ。腕自慢とかいうのを雇ったりね」

「私は嫌だよー…ずっと戦い続けるだけの人生はなー…」

「兵って言っても私が会ってきた人は戦争経験者だったり雇用された人ばかりだったんですけど」

「兵と言っても王国兵としてよ。領主の元へ行く人もいるけれど腕が認められたら手元に置いておくでしょうね」


 ということは私が会ってきた人達は強かったと思ったけどあれよりももっと強い人を領主や王国は雇って置いているということなのか…。


 自分の身が大事とはいえそうなってくると強いものの周りしか守れないのではないだろうか。


「赤いのからしたら貴族の愛人になれるように頑張ったら夢があるんじゃないかしら?」

「貴族の愛人て楽しいのかなー?」

「紹介してあげましょうか?貴族なんてものは大抵変な輩が多いから喜んでくれるわきっと。それこそ赤いのが言ってた聖教会みたいな扱いをしてくれるわよ」

「奴隷みたいなもんじゃんそんなのー!」

「聖教会は…奴隷はいないわよ…」


 本来伝えたかった事とは違ったのか呆れたようにレヴィさんは言うけど、実際はどうなのだろう?

 魔導オタクみたいなレヴィさんしか見たことないから分からないが、フレイさんが子供を大事にしたいと思ってる人なら魔導回路を刻まれる貴族というのはある意味奴隷みたいな扱いをされてると言ってもいい気はする。


「この国は同姓同士の恋愛とかはあるんですか?」

「ないわ。生産性のないことを基本はこの国は認めてはいない…けどまぁそう言う趣味の人がいるとは思うわ。勝手にする分には特に咎めたりはしないわ」

「リアラちゃんは女の子が好きなのー?」

「いえ、聞いてみただけです。貴族も同姓同士の恋愛するのかなって思いまして」

「アハァ…私のさっきの発言を真に受けたのかしら?」


 そうではないが単純に興味本位で聞いただけなので聞き流しておいて。

 私は今まで漠然と強くなることばかりで未来の、将来のことを少し気になったくらいだ。


「フレイさんはどんな恋愛したいんですか?」

「んー…無難に商人やってる人かなー?」

「それなら聖教会に行けば良い人が多いわよ」

「レヴィさんて聖教会の回し者なのー…?聖教会のおすすめが激しいよー」


 平和に過ごしたいって考えたら店舗を構えてる商人だろうか?露店とか巡ったら案外素敵な出会いがあるんじゃないかなとも思うけど…。


「実際聖教会は商業ギルド本部があるくらいですしレヴィさんの言う通り商人ならそっちに行った方がいいんじゃないですかね?」

「リアラちゃんもー、聖教会の噂悪いものばっかりであまり行きたくないんだよねー…」

「レヴィさん、商人って聖教会の悪い噂を立てたりするんですか?」

「立てるわ。この国で行商をする上で他国の悪い噂を立てることを契約されて行ってるし…そうね、唯一吟遊詩人だけは信じていいかもしれないわ。あの人たちは言い回しが分かりにくいから国から放置されてるわ」

「えー…じゃあ吟遊詩人と恋愛かなー?」

「儲からないことをやって貧困になるだろうからやめておいた方がいいけど…赤いのがそれでいいなら止めはしないわ」


 少ない稼ぎで組合に依頼して詩のネタを求めてるくらいだし本当に貧困なのだろう。


 なんなら都市でダンジョンを唄った物語はほとんどが罵倒だったくらいだ。それなら大人しく聖教会が良いと思うけどそんなに悪い噂しかないのか。


「レヴィちゃん!」

「なにかしら?」

「おー、レヴィちゃんて呼んでもいいのー?」

「別に気にしないわよ好きに呼びなさい」


 二人は微笑ましいなぁと思いながら、私は私の終着点を考える。


 元々生きたいと思って始まった私の人生は強くなることで守りたいものを守っていけたらということを考えて今はまだ通過点にいるようなものだ。


 それなのに強さに終わりなんか見えなくて目指す先を見失ってきてる気がする。


「リアラちゃんが何か物憂げな表情をしてる…あやしいなー」

「赤いのは無遠慮すぎるわ、リアの過去を知ってるならこれ以上あまり恋愛話はやめてあげなさい」

「待ってください二人とも!まるで私が過去に好きな人がいたみたいになってませんか?西の話は友達の話ですよ?それと英雄を語り継いでいかなきゃという使命です」

「固い考え方ね…吟遊詩人が向いてるんじゃないかしら?」

「それに生き残ってる人もいるんでしょ?英雄の人達は尊敬するけど知り合いはまだいるんじゃないのー?」


 そう言われて思い浮かぶのはゲンボウさんだけどあの人は妻帯者だ。ほかには名前を聞けてなかった安宿の人とか…あとは生存不明の朝組の人達やディズさんだけどほぼ絶望的だろう。


 あとは…と思い浮かべるのは最初の英雄であるクリフさんか、夢の影響でどうにも残酷な映像を思い返してしまうが。最初はあの背中に憧れて強くなりたいと思ったものだ。


「街の生き残りは王都に向かったのでしょう。英雄の中でもしかしたら生きてるかもしれない人がいるかもしれませんがそれもほぼ絶望的だと思ってます」

「どんな人だったのー?」

「そうですね。ちょうどフレイさんと同じように赤い髪が特徴の凄腕の剣士でしたよ」

「剣士って言われるとレッド思い浮かぶからやだなー…」


 そういえば彼も剣士だったか。他の特徴を言った方が良かった。


「瞳が青かったですね。そこは二人と違うところですよ、それに色んな知識を持ってレッド君より旅慣れてると思います」

「レッドと交換したいくらいだねー」


 心の中でレッド君ごめんと謝りながら比べるように発言してしまう。

 ただフレイさんを喜ばせてあげたいだけでレッド君を下に見てるわけではないから許してほしい。


「アハァ…瞳が青ね。クリフのことかしら?」

「え?レヴィさんクリフさんを知ってるんですか?」

「知ってるも何も応援を呼んで来た人がクリフよ」


 来た?ということは生きてる?

 いやそもそもなんでクリフさんが…?


「リアラちゃん固まっちゃった…さてはクリフさんて人が好きな人なのかー!」

「あれはおすすめしないわ。聖教会の狂った方よクリフは」

「えと、話に追いつけないです。私が最初に会った人がクリフさんなんですけど」


 最初に会ったと言ったところでレヴィさんが作業を止めてこちらに訝しんだ顔で見てくる。

 フレイさんは意味が分かってないから「結構歳取ってる人なんだー」って呟いてるが。


 レヴィさんが私の言いたいことを汲み取ってくれたのか少し考えながら話し始める。


「推測は少しはしていたけれど、クリフが関わってるなら私の考えも案外当てはまるものかしら?ただそうなってくるとリアはクリフにあまり会わない方がいいんじゃないかしら?」

「どうしてでしょう?むしろ生きてて良かったと思ってますし。ただその村でクリフさんが三日で戻ると言って三日以上経っても戻ってこなかったんです。だから私は旅をして」

「さっき言った通りよ、聖教会で一部の狂った思考の持ち主がクリフよ」

「でもそれじゃあレヴィさんが人柄はまともって言ってたじゃないですか!」

「落ち着きなさいリア。聖教会について少し話した方が良さそうね」


 いつかはあの森に探しに行けたら、せめて骨の一部でも残っていたらと思っていたのだ。

 私の数少ない生きたいと思っている人の行方がそこにあるならできれば今すぐにでも会いに行きたい。


「アハァ…聖教会が何を信仰してるかって話になるのだけれど。そこは赤いのが噂をある程度知ってるわよね?」

「悪魔!あとは神様とか魔物を信仰したり亜人を信仰してるとか?亜人や魔人を含めた平和を象徴?するものとかーあとはー…」

「もういいわ。聖教会が信仰してるのは表向き何の変哲もない宝石よ」

「えー…宝石ってキラキラしてるあれー?」


 そんな何の変哲もない宝石を信仰してる?いやそもそも宝石と言っても色々種類があるはずだ。それ以前に宝石を信仰してるってなったら鉱山にでも出向いてるのか?


「表向きって言ってるでしょ、その実は魔核結石。魔石を信仰してるのよ」

「それって魔物信仰と同じじゃないですか?」

「違うわ。魔物は魔石のための栄養と考えるような思考の持ち主なのよ」


 そこまでして魔石を信仰する意味が分からない。

 それなら表向き宝石と言っても実態としては魔物信仰と変わらないんじゃないだろうか。


「ただでたらめに魔石を集めてるわけではないのだけれど…まぁ、リアのために言っておくわ。魔核結石はどういう基準か宝石と似たような性質を持っていたりするのよ。つまり私が魔石を扱うのと同じように宝石を加工すれば同等かそれ以上の威力の魔導が使えるわ」


 そう言って取り出すのはいつも見せてくれる魔石たちと、現在加工中の魔石も見せてくれる。

 そして懐から大事そうに取り出したのは綺麗な色をした宝石。それはレヴィさんが施してるような加工がされてあって模様が綺麗に輝いてる。


「これはただの宝石かしら。貴族が一定の魔導を極めたら宝石を加工して奥の手として用意しておくのよ。ただこれ以上の効果を見込めるものが聖教会が信仰してる魔核結晶と呼ばれるものよ」

「それがどうして信仰されてるんですか?信仰されるってことは何か理由があるんですよね?」

「奇跡を起こせると言われているわ。死者を蘇生するとも不老不死になるとも。本当の所は使ってみないと分からないわ」


 死んだ人を生き返すことができればそれはたしかに奇跡だろう。

 そんな大層な物を大事に信仰して大きくなったと言うのか…。


「いや、それでも分からないです。信仰してるのが奇跡を起こす結晶だったとしてどうして狂ってるんですか?」

「リアラちゃん落ち着いてー、レヴィちゃんが困っちゃうからねー」

「アハァ…魔核結晶がどうやって手に入るかわかるかしら?リア」


 どうやってと聞かれると宝石と同じように鉱山から掘り当てたりとかだろうか。

 ただレヴィさんが狂ってるという理由にはならない、それなら魔核結晶とわざわざ呼ばれている…結晶ではなく魔核。


「魔人とか魔物ですか?魔物を栄養と考えるってことは極稀に魔核結晶を生む魔物が現れるってことですか?」

「そうよ。そしてそのために魔物を殺すし、魔物化しそうな人や亜人を魔核結晶が生まれるかもと言う理由で魔石を人に食べさせて魔力暴走を起こしたりするような一部の連中が狂ってるわ」

「私が出会ったときのクリフさんはそんなことしそうな人とは思えませんでしたけど」

「それはそうよ。貴方の場合はむしろ魔人にならないように回路が刻まれているもの。だから貴方に興味を示す方がおかしいわ」

「魔石って食べたら魔人になるのー?」


 フレイさんがいることを確認してレヴィさんと一緒にヒートアップしてた私も落ち着きを一旦取り戻す。


「食べたら基本死ぬわ。だから赤いのは食べないようにしておきなさい」

「うん。死んだ人見たことあるから大丈夫だよー」


 実際に食べた人いるんだ。その人はどういう気持ちで食べたのかは分からないけどフレイさんが食べることは無いだろうから安心しつつレヴィさんを見ると困ったような顔をしている。


「アハァ…クリフはたしかに英雄と呼ばれているけれど、全部を信じては駄目よ。少なくとも私の協力者と言ったらリアなら分かるでしょう?」


 そういえば国家転覆を企んでいるレヴィさんだったけれど、一緒に来た人が協力者ともなればクリフさんも一緒になって企んでいるんだ。


 そんな大事に手を貸しているのだろうから表の顔や裏の顔くらいあるかもしれないと納得してしまい私も困ってしまう。


「私としてはリアには安全な人と生涯を共にしてほしいわ」

「え、そこまでの人とは思ってませんよ?というか恋愛は考えてないって言ったじゃないですか」

「アハァ…私の心配を返して欲しいかしら。リアがあまりにも積極的になっていたから心配したわ」

「えーでもリアラちゃんはクリフさんのこと思ってるからそんなに会いたかったんじゃないのー?」


 私が勝手に尊敬してるに過ぎない人だクリフさんは。

 初めて見た剣技に、そしてそれ以上を上回る剣技をする人を今まで見たことが無かったから。


「どうでしょう…レヴィさんの協力者と聞いたら私のことを置いて行って旅に出たのかもしれないと思い始めてきました」

「急に悲観的ね。人柄はまともって言ったでしょう?どうせ信仰対象の魔核結晶を探し回るのに夢中になってたとかそんなオチだとは思うわ」


 結晶フェチだったということを聞いたら聖教会というものが本当にまともな組織なのか不思議になるが。奇跡を起こせる結晶なんてそれはたしかに信仰されてもおかしくないような代物だろう。


「ただクリフがそう簡単に約束を破るとも思えないのよね。リアに関係してることを調べていたのかとも思ったけど。とにかくダンジョンに潜るのは二日後なのだから明日は私が話してくるからリアは大人しくしていなさい」

「はい…大丈夫そうだったら私のことを聞いてもらうこととか大丈夫ですか?」

「問題なければ明日の夜には呼んであげるわ」


 フレイさんが「やっぱり気になるんだー」と茶々を入れてきたがそれは置いといてもかつて私が追いかけていた人が実際に生きてこの都市にいるんだと思ったらまた心が熱くなりかけてしまう。


 聖教会についてはなんとも怪しい集団という風な印象だけど。どうしてクリフさんがそれに所属してるのかとか、国家転覆を手伝おうとしてるかとか色々気になることだらけではある。


「リアラちゃんはさークリフさんに会ってそれが恋愛だって思ったらどうするのー?」

「おすすめしないわ。やめておきなさい」

「レヴィちゃん甘いよ、恋は人を狂わすっていうんだから」

「元々狂ってる人と付き合ったらリアまで狂っちゃうじゃない」

「話を聞いた感じクリフさんはそもそも私を好きにならないと思いますし、どうせなら私は好かれたいです」


 そう言うとレヴィさんは満足そうに作業に戻って、フレイさんは私と同じように思うのか「告白とかされてみたいなー」と言いながらクリフさんの話題はここで終わった。


 レヴィさんの話しでは私を置いて一人で行くような人でもないとのことらしいし、なにか不安がっていたけれどなんのことだろうと考えてみるとクリフさんが狂ってると言ってたしもしかしたら魔核結晶がらみなのかもしれない。


 実際にどんな見た目をしてるかは分からないけど宝石みたいな見た目と思ったら夢の内容を思い返す。


 あの時、幼い私が持っていたのは、あれがもし魔核結晶だったなら幼い彼女は何を願い刻んでいたのだろう?


 そして夢の結末はクリフさんの手で彼女の内側から取り出された魔核結晶だったはずだ。


 いや…夢の話なんてしても仕方ないだろう。ただ嫌な夢を見て、それがたまたま重なっただけ…そんな偶然が本当にあるのだろうかと私の心にどこか疑心があるが今は考えるべきではないだろう。

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