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四十五話 平穏

 目が覚めるとレヴィさんの温もりが無くなっていて起き上がるとテーブルで魔石の加工をやっていた。


「おはようございます」

「アハァ…体調はどうかしら?」

「体がちょっと怠いくらいです。私ってどうなったんですか?」

「私が悪いのだけれど、まさかそんな即実行するなんて思ってなかったわ。リアは少しの間、眠っていたわ」

「少しっていうと1日ですか?」

「一週間と少しよ」


 それは少しなのだろうか。

 私からしたらかなり眠っていたんじゃと思うけどレヴィさんからしたら気にしない程度の範囲がそれくらいなのだろうと思いどうしようと思っていたら作業をやめたレヴィさんが片付けている。


「リアの体をちょっとだけ調べてみたけど凄いのね、本当に体に魔石を馴染ませるなんて」

「元々はレヴィさんが言ったんじゃなかったでしたっけ?」

「ゴブリンの魔石程度なら問題ないと思っていたのよ、そしたら勝手に変な物を食べるんだもの」


 そんな落ちていたものを拾い食いしたかのように言わなくても。いやまぁ実際はそうなのかもしれないけど。

 しかし調べていたとはどう調べていたのだろうか。私としてはそこが気になる。


「食事でもしましょうか。それと赤い女が心配してたわよ、もう少ししたら来るだろうから一緒に連れて行く?」

「連れて行きましょう?ずっと疑問に思ってたんですけどあの二人を赤い男や女と言ってるのって何なんですか?」

「言ってなかったかしら?私の眼は魔導回路を刻んでいるから人を見分ける時は魔力の流れ方で人を見てるのよ、だから視力が低下して見づらいから特徴で判断してるわ」


 そんなデメリットがあるとは聞いてない。もしかして体に回路を刻むのって痛いだけではなくもっとほかにもデメリットがあったりするのだろうか?


「あれ?でも分かるなら名前で呼んでもいいんじゃないんですか?」

「色んな似たような名前を憶えていたらキリがないじゃない、それなら今後も関わると思った人だけ覚えておく方がいいわ」

「そういうものですか」

「そういうものよ」


 私とは違って色んなところを歩き回って大陸の地図も持ってると思ったらそれこそ数え切れないほどの人達と出会ってるのだからきっと覚えきらないのだろう。

 レヴィさんの頭脳なら覚えれそうな気もするけど、それこそ今後も関わってもいつ死んでるかも分からない人を覚えても仕方ないというやつなのだろうか。


 私と生死の価値観が違うからこそなのかもしれないと考えてレヴィさんの片付けてる姿をぼーっと眺めていたら視線に気づいてこちらを見てきた。


「アハァ…なんなのかしら?さすがにずっと見られると気になるわ」

「あ、ごめんなさい。暇だから見てました」

「病み上がりだから仕方ないのかしら?」


 そんなやりとりをしてるとノックしてウィルスさんが入っていいか確認を取った後にフレイさんを連れて部屋まで来てくれた。


「リアラちゃん!なんか変な物勝手に食べてお腹壊して体調崩してるって聞いたけど大丈夫なの!?」

「たしかに変なものは食べましたけど、もう大丈夫ですよ」

「なんでもかんでも食べたらだめなんだよ?そんなお腹すいてるなんて思ってなかったよー」


 魔石食べたとは言えないし、レヴィさんも多分そんな感じでお腹壊してるとか言って誤魔化したのだろうけど一週間近くもお腹壊してるで誤魔化せるものなのかと思うとフレイさんが誰かに騙されないか不安だ。


「少々よろしいでしょうか?ベッドが二つある部屋についてなのですが確保しておりますが今日から移動されますか?」


 ウィルスさんが会話に入ってくるタイミングを計っていたのか、以前に言った通り確保してくれていたのかと思うと私が答えるよりもフレイさんが喜んでこちらを見てくるので苦笑しつつウィルスさんに今日から移動することを伝える。


 レヴィさんもそれを見越していたのか荷物を持って案内される部屋に行こうとし始めたので私も荷物を持って行こうとしたらフレイさんが慌てたように。


「私荷物持ってきてないよー!」

「夜に持ってくればいいじゃない、とにかく部屋がどこか知ればいいでしょ?」


 レヴィさんとやりとりしてるのを微笑ましく思い、これで赤い女呼ばわりしなければ二人とも仲良しに見えるのだけどなと思える。


 ウィルスさんが案内してくれたところは一人部屋よりも広くベッドも二つ置いてあったり、テーブルが4人まで座れるところだったりするくらいでそこまで部屋が様変わりしたというわけではないが。ちゃんと綺麗なところだ。


「すごい綺麗!なんかこの生活に慣れたらだめになりそうだなーってなんとなくわかる!」

「フレイさんが泊まってるところは汚いんですか?」

「そんなことないけど、なんていうんだろう?ちょっと埃っぽいかも?」


 そう言われるとウィルスさんがどれほど清掃を心がけているのか分かる気もする。

 馬屋で寝ていたときから藁をわざわざ変えて丁寧に掃除してくれていたし。


「宿なんてベッドとテーブルが綺麗に使えれば問題ない気がするわ」


 私の貴族イメージとは違って実用的なのを好むんだなとレヴィさんは荷物をテーブルに置くので、私も荷物を置いて食事に三人で出かける。



「美味しいものって言っても結局ここなんですよね」

「仕方ないわ、実際にこのお店がメニューも豊富だし便利なんだもの」

「私はあまり来ないから嬉しいけどなー」


 私達は現代料理店に来てそれぞれが好きな物を頼んで食べる。私はもちろんのこと牛丼である。

 病み上がりに重いもの食べても大丈夫なのかとも不思議だったけど思ってたよりお腹がすいていたのでおかわりしつつ食べきる。


「そんなにお腹すいてたんだねー」


 フレイさんの誤解が確信に変わったようにしみじみと言われると恥ずかしい気持ちを誤魔化すように別の話題がないかなと考える。


「そういえばなんですけど、レヴィさんの言ってた人ってもう来てるんですか?」

「来てるわよ。リアの成長も見たいところだけど私の用事を優先するように攻略して二人の狩場を確保した時にリアが自分の腕を確かめればいいんじゃないかしら」


 毎度のことながら先のことを見据えて考えているんだなと思いつつも。来てるなら来てるで挨拶しなければいけないだろう。


「フレイさん達はもう会ったんですか?」

「ううん?会ってないよー、リアラちゃんの方が心配だったし!」


 そう言われたら私が体調不良の時にみんなで仲良し懇親会みたいなことをされてたらと思うと寂しいかもしれない。

 どんな人なのかなと思ってレヴィさんに再度聞いてみる。


「強い人なんですよね?どんな人なんですか?」

「聖教会が選んだ…そうね…英雄?かしら?」

「疑問形なんですね。なんというか人柄が良くないとかでしょうか?」

「いえ。どういう立場なのかと考えたら答えにくい人なのよ。人柄で言ったら良い方だと思うわ」


 この国のことを色々聞いたからあれだけど、聖教会がどんなところなのかいまいち分からない。

 ただ会話を聞いていたフレイさんが俯いてた顔を上げて目を輝かせていた。


「聖教会ってあれでしょー!頭がとち狂ってる連中の巣窟とかいう!しかもそんなところの英雄って相当すごいんじゃないかなー」

「待ちなさい。聖教会は狂ってると言っても一部だけよ、まともな方が多い?わ?」


 途中から自信がなくなったようになって疑問視し始めたのは思い出した人物がまともじゃない連中を思い出したからなのか。ただその話を聞いて目を輝かせるってどうなのだろう。


「フレイさんは何か聞いたことあるんですか?」

「色んな話があるからなー…一番噂になってるのは魔物を操ってこの国を滅ぼそうとしてるとかー?」

「あながち間違ってないわね」

「間違ってないんですか!?」


 なにをどうしたらそうなるのかは分からないがレヴィさんは博識だから多分本当のことだろうけどどっちだろうか。

 魔物を操ってる方なのか、国を滅ぼそうとしてるのか。


 いや国を滅ぼそうとしてたら商業ギルドが近くにいるのにそんな大胆なことはできない…?それなら魔物を操る方が本当なのかな。


「他にどんな噂が流れていたとしてもこの国や東の国よりも北の聖教会がもっとも安全な場所だと言うのは覚えておいた方がいいわ」

「じゃあ洗脳されたりとかは嘘なのかなー?」

「それは嘘よ」


 なんでもかんでも噂になりすぎてると思うが、これも何かの陰謀なのかとおもうと悲しい気持ちもある。

 レヴィさんの言う通り確実に安全な場所がそんな洗脳とか悪い噂が出れば避難するのは最終的に王都以外の選択肢がこの国にはないだろう。


「話を戻しますけど英雄って言われるくらいの人がよく来ますね?結構な距離があるでしょうここまで」

「アハァ…暇なのよ。どうせすることないなら呼んで手伝わせた方がいいかしら」


 そんな身も蓋もない、仮に本当に暇だとしてもレヴィさんが呼べる人物という時点で不穏な気配しかしない。

 私は極力関わらないようにと思っていたけどその人からも国家転覆を勧誘されたらどうしようか。


 話の途中で紅茶などをおかわりして、コーヒーが無いことを悲しみつつ飲んでどんな人かを再度思うが人柄が良いなら別にいいかと思って話題を変える。


「レッド君達は最近はどう過ごしてたんですか?」

「武器の整備とか。あ、リアラちゃんの装備も整備してもらいに行っちゃったから大丈夫だよーレヴィさんに頼まれたからね」


 ナップサック内を確認してなかったけどグローブとかも直してもらったのだろうか、ありがたいけど確認してなかったので今お礼を言いつつ続きを聞く。


「あとは今のうちにパーティ募集をレッドがしたりとかかな?それと組合からはダンジョンに行く時はせめて二日前には言って欲しいって言われたかなー?」

「じゃあすぐに行こうと思っても無理なんですね」

「私の方であとで言っとくよー」


 何から何までしてもらってありがたいような申し訳ないような気がするけど特にすることがなくなってしまう。


「それじゃあどうしましょうか?適当に買い物行きますか?」

「欲しいものがないわ。それよりもリンリーにお礼でも言ってきたら?リアのために夜中でもあの時来てくれたわよ」


 そう言えば気を失う前にリンリーさんを呼んでくるとか言ってたような気がする。

 私としては迷惑をかけたのは主にレヴィさんだったから忘れていた。


「それじゃあ私はリンリーさんの所に行きますけど二人はどうします?」

「私は組合行って宿の荷物をさっさと移動させるかなー?」

「時間があれば基本的には魔石の加工かしら」


 各々やることが決まってからは飲み物を飲んだ後は別れて行動をする。

 できればレヴィさんが一緒に来てくれた方がいいけどさすがに最近というかレヴィさんに会ってからなんでもかんでもレヴィさんに頼りきりな気がするので大人しく一人で行くとして。


 さて、どう感謝して謝ったものだろうか。まずどうお世話になったのかも分からない。



 悩みながらも自然と歩いてると目的地に人が込み合っていても着いてしまうわけで、どうしようなんて思いながらもドアを開けるとリンリーさんが受付で目を開いて驚いてこちらを見ていた。


「あの…お世話になったと聞きまして感謝とかを言いに来たんですけど。ありがとうございます」

「あんたが生きてることにまずびっくりした…変なことをする子だとは思っていたけどあんたはもうちょっとなんでもかんでも慎重になるべきさね」

「おっしゃる通りで…」

「せっかくレヴィ様がいるんだから最初に図々しかったように頼ればいいんだから」


 冷やかし気分で入って色々質問したりお世話になったことを思い出しながら、たしかにあのときはもう少しリスクについて配慮してたような気がする。


「今でも結構お世話になっちゃってまして申し訳なくなったと言いますか」

「それで夜中に叩き起こされたこっちの身にもなってほしいんだけどね」


 その後もお説教が続いて、頷くくらいしかできなかったのでひとしきり言うと満足したのか戸棚からマナポーションを取り出して渡してきた。


「とりあえずこれでも飲んどきな。まだ起き上がって間もないんだろう?」

「えと、なんでこれ飲むんですか?」

「レヴィ様があの夜に飲ませろって言ってたから効き目があるってことなんだろうさ、あたしに聞かれても効果は良く分からないからレヴィ様に聞いといで」

「ありがとうございます…?」


 とりあえず腰に手を付けて一気飲みして、ぷはー!と言いつつ試験管のような入れ物を返すとジト目で見られて困るがせっかくもらったのだからこの場で飲んで返した方がいいと思ったのだけど持ち帰れ途言う意味だったのだろうか。


 なにはともあれ目的も果たしたし、満足して帰ると。フレイさんとレヴィさんも部屋にいてフレイさんはベッドでゴロゴロしながらレヴィさんは作業中だ。


 ベッド二つしかないけどどうしようって今更ながらに思って空いてる方に座るとフレイさんが私のベッドの方に移動してゴロゴロし始めた。

 あれかな?犬とか猫のマーキングみたいな感じだろうか?


「レヴィさん、リンリーさんからマナポーションもらって飲んだんですけどあれってなんなんですか?」

「アハァ…心配してくれたのねきっと。マナポーションは飲めば栄養があるわ、それに単純に自分の魔力を活性化させるのよ。リアの今回みたいな場合は自分の魔力を増やすことで抵抗力を強めるかしら」


 フレイさんの手前若干ぼかしながら伝えてくれるが、本当に魔力を増やす効果あるんだなって思うと普通の貴族は魔力を魔石で補ってるならそんなにいらないんじゃないかな?と思う。

 それ以上を聞こうと思ったらフレイさんもいるし多分聞けないかなと思ってまた暇になってどうしようと悩んでいるとフレイさんが唐突に声を上げた。


「あーーー!せっかく三人集まったんだからもっと楽しい話しようよー」

「びっくりするじゃない。アハァ…楽しい話っていうとなにかしら?」

「んー…レヴィさんは貴族なんでしょー?それなら貴族の恋愛話とか聞きたいかも」

「基本はそうね魔導の相性によるかしら、それぞれが使う魔導の理解度が高いことで次の世代に二人から理解を得れるようになるし、逆に無能な貴族は一般人と恋愛をするかしら」

「その一般的な方の恋愛話しがいいかなー…魔導とか分かんないし…」


 個人的な理解度でいえば、魔導回路をどう刻むか親が話し合ってるのだろうか…?なんというか子供に虐待をしようと考えてるような実験をしようとしてるような気がしてレヴィさんがまともに育ったのはレヴィさん個人の人柄なんだなと…いや国家転覆しようとしてるんだったこの子。


「それこそ貴族だからとかそんなの関係ないわ。無能の烙印を押された貴族は次の世代からは貴族ではなくなるのだから」

「夢がないねー…じゃあ私の周りにも元貴族の人とかいたのかなー?」

「安心していいわ。無能と判断されたら生きてる貴族はほぼいないもの」

「そっかー」


 本当に理解してるのか怪しいが納得してるならそれでいいかと二人の会話を聞いていたら矛先が私に代わってきた。


「リアラちゃんは好きな人とかいないのー?」

「私ですか?みんな好きですよ」

「ちがうよー…恋愛話だよー…」


 分かってて答えたけど、実際恋愛とか言われてもよく分からないから困る。前世を合わせたらいた気もするくらいしか記憶にないのだ。

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