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四十話 国の片鱗と勧誘

 魔導のことにしても、国の状況にしても、規模が壮大で今まで村や街での光景を見て、兵士たちの話を聞いて。その内容の裏では亜人の長命種が恨みで戦争を仕掛けてきて、それも国の思惑。

 内乱が起きないように必要悪として役立ち、文明を少しでも発展させようと古い考えを嫌う…。


 レヴィさんは私が何とも言えない顔をしてるのを見てクスクスと笑いながら見ている。

 はっきり言ってどうしようもない。多分この話の問題点として何が一番駄目なのかっていうのは魔物だ。


 魔石が生まれる以上魔物が出てしまって家畜もまともに育てれない状況で食料状況が絶望的なこと。それと同時に魔物の区別の仕方は凶暴性の有無とかいう不確定要素。


「ちなみに聞くんですが、王族が腐ってるというのはなんでしょう?聞いたところ一応筋は通って国に混乱を起こさないようにしてる気はするんですけど…」

「それは口に出せないようなことをたくさんしてるからよ。アハァ…それこそ恨まれても仕方ないことをたくさんしてるわ」


 もうお腹いっぱいになってしまうくらいにどうしようもないと思った話を聞いたのでレヴィさんがあえて濁して言ったことに甘えて私もベッドに転がる。


 強くなりたいと漠然に、それでいて目標があったけどどうだろう。こんな話を聞けば私のやってることは狩人と同じで害獣駆除をしたいと思ってる人と言った立ち位置なのだろうか。

 街の復讐でもある魔物を倒したいとか、国とかがやばいのでは、と思って焦っていたけどレヴィさんの言う通り国がそれほどに強いのなら私のやろうとしてたことは規模が小さい…というかなんというか…


「アハァ…話を聞いてどう思ったのか聞きたいわ」

「もっと上手く管理すれば余計な被害が出ないと思います…もしかしたら私が考えることは無駄かもしれませんが」

「それは魔物に対してかしら?亜人に対してかしら?」

「どっちも…ですかね?魔物の被害が出ればその分文明は遅れるんじゃないんですか?それに亜人に対しても争う以外の解決方法はないんでしょうか?」

「それはこの国を敵にするしかないでしょうね」


 国がそういう方針だから国そのものをどうにかしなければいけないということだろうか。

 だとしたら、国を壊さないといけないとなった時に考えれるのは戦争だろう。


 国を良くしたいから戦争しますって私はそこまでして国を変えたいと本気で思ってるのか?それに商業ギルドも結託してるっぽいし、個人で出来ることなんてたかが知れてる。


 横を見れば楽しそうな笑顔で私をみるレヴィさんがいる。

 ふと、レヴィさんがどう思ってるのか分からなくなった。知ってる人は知ってるということを今更一人増えたからと言って教えてくれて、魔導に関しても口外禁止なのを簡単に教えてくれる。


 王族は腐ってると断言してもいる。貴族は王族に仕えてるものなのではないだろうか。


「レヴィさんはダンジョンに探し物を探しに行きたいって言ってましたよね?それってなんでですか?さっきまでの話しだと暇つぶしで探しに行くとかでしょうか?」

「まだちゃんと答えを聞いてないわリア。あなたの考えだと国を敵にするしかないわ」


 そこをそんなに気にすることなのかと思いつつ、諦めのようなものを伝える。


「私が個人で国を相手に良くしようとか大規模すぎて勝てる気もしないですし…」

「リアがダンジョンに行く理由は魔物が原因なのでしょう?」

「たしかに魔物を倒したいと思って強くなりたいと思いましたけど、その魔物も国は放置しちゃうならどうしようもなくないですか?」

「だったら貴方の本当の目的は、その復讐心は魔物を放置した国が相手なんじゃないかしら?」


 なんだろう、それはそれで責任転嫁な気がするのだけど。いや、言ってることは分かる。

 国がそういう方針でやろうとしてるから結果的に街を犠牲にして、王都は保身で自分たちだけ守って生きれる生活をただ平穏と過ごしてると思うと思うところはある。


「レヴィさんは何が言いたいんですか?」

「普通何度も死にかけながらダンジョンに死に物狂いで挑み続けて、それでも最下層に行こうと求めてる…常人の考えじゃないわ。現に貴方の傍にいた赤髪の二人は強くなりたいと心底思っていたかしら?」


 二人はお金を安定に稼げるためにダンジョンに潜ろうとしてたはずだ。フレイさんの話では英雄譚を聞いて憧れ冒険者を目指していたはずとも聞いてる。

 それは言い換えれば強さを求めてる気がするけど。


『俺じゃリアラの足手まといになる。ただ生活面プラスの報酬がもらえる程度の手伝い』


 たしかそんな感じの言葉をレッド君が話していたのを思い出す。

 彼らは生きるために、生活のために稼ごうとしていた。パーティと言うのも私が信頼できるからとリーダーを任せようともしていた。

 それは果たして強くなるためだろうか?


「レヴィさん、もしかしてなんですけど…反乱を起こそうとしてるんですか?」

「アハァ…私は国の現状をリアに伝えただけに過ぎないわ。どうしてそう思うのかしら?」

「二人のことを部外者として私と二人きりになろうとしてたこと。そして私が強さを求めてダンジョンに挑むために強者を求めていたこと…いや、リンリーさんですねきっと。リンリーさんから私が魔導を探ろうとしてるのを確信的に私が強さを求めてることを分かったうえで組合に行くとパーティ募集をしてるのを確認して確信した…」


 これは憶測だ。ただレヴィさんがなんで私に近づいてきたのか分からない。ダンジョンの探し物に挑むならそれこそやっぱり最下層に行くような冒険者を選べばいい。

 となると私に声なんてかけるよりそっちとパーティを組めばいい。


 それをしないで強さを求める私、そして最初に一つだけ質問していいか聞いてきたのはダンジョンに何故挑むのか?という質問。これも憶測だが、普通の冒険者は贅沢をしたいがためにダンジョンに一攫千金を望むとか言うのが一般的なのではないだろうか


「いや…疑問が今浮かびました。なんで私が魔導を使えないものが刻まれてると分かったんですか?もしかしてレヴィさん私の体内覗けたりしますか?もしそれが本当に見えてるなら私がレヴィさんのお眼鏡に叶う存在だと分かってここまで教えてくれたんじゃないんですか?」

「アハァ…」


 笑顔を強めて私の頬に手を添えて優しくなでてくる。

 この子は…国家に疑問を抱き、そして国をさも悪いように説明してきた。


 誘導されてるような気がする点もあるが、話的に事情をある程度把握していて私に嘘をついてる可能性もある。だがここまでわざわざ私に説明する義理がレヴィさんにあるのか?



「反乱を起こして、その国を相手に戦力を求めてるんですか?」



「アハァ…アハハハハ…貴方の期待に応える内容を私は持ってるわ。だって貴方…異界の存在なのでしょう?」


 どこまでその目で見えているのか分からない。ただ私が表向き記憶喪失と言って誰にも言ってないことを彼女は知ってる。

 どうやって知ったのかとか私には分からない。それでもそこまで知っていて、知ったうえで私に今まで説明していたということは憶測だったけど、それが確信に変わりつつある。


「やはり分かりません。私のことを知ったのはつい最近ですよね?それでどうしてそこまで知ってるんですか?」

「知らないふりをしないのね。別にそんなことは実際に見てしまえばどうとでもなるようなことよ、私の眼球も魔導を使うために魔導回路を刻んで魔力の流れを見ることが出来るもの」


 というと神経に刻むという痛いやり方を眼にまで施しているのか。見る限り少女のようなその姿とは裏腹に知識もため込んでいて正気を狂うようなやり方で魔導を使えるようにするというのは貴族全体がそういう方針なのだろうか。


「アハァ…疑問に思ってるだろう顔をしてるから言うけれど、これは貴族がやらないようなことよ。ただでさえ少ない貴族がそんなことをして駄目になったらもっと少なくなってしまうかしら」

「レヴィさんは貴族じゃなかったんですか?」

「貴族よ。それでも貴方が思ってる貴族というものは簡単に作れるし、簡単に死んでしまう。そして貴族全てが王族に忠誠を誓ってるなんてことはありえないのよ」


 実際に目の前に反乱を起こそうとしてるだろう人がいるのだからそうだけど、それにしたって急展開すぎる。

 私と仲良くもない、知り合って当日。異界の存在と言うのは前世を持ってることだろうと思ったけどそれを看破したとしても信用と言うものが無いんじゃないのか。


「私は国を相手にするなんて考えれませんよ。たしかにこの国の方針は色んな人を見殺しにして結果的に良ければいいみたいなことしてるのかもしれませんが、それでも私は戦争そのものが反対ですから被害が広がることをしたくはないです」

「それじゃあリアは国がしたように無辜の人々が蹂躙され犯されるそれを見殺しにしてもいいというのかしら?」

「そう言われると心が痛いですけど、レヴィさん一人の言葉を聞いて確信が持てたわけじゃないですし、実際に国の人の話も聞いてみないとそんな大事に決心なんてつかないです」


 小さく呟くようにレヴィさんは「真面目ね」と優しく口にすると私の頭を抱きしめてきた。

 言ってることを淡々と告げるのに雰囲気や態度がどこまでも優しく包み込むような行動をとるレヴィさんはきっと真実を告げてるのだろうと思う。

 それでも私が今日だけで情報がパンクしてるときに簡単に手伝いますなんて言うことも、止めることも違うだろう。


「別にいいわ。リアはたまたま見つけたから欲しくなっただけだし気が変わったらいつでも声をかけていいのよ。歓迎するわ」

「それならついでに聞くんですが、異界の存在ってどう見えたんですか?」

「貴族でもないのに色々な言葉を知りすぎているところよ。見えてるものは普通の人じゃないなと思うくらいで、そんな特異な人間が必要以上のことを知っていたら勘づくわ。良かったわね知ったのが私で」


 というと発言には気を付けた方がいいということだろう。

 いまいちこの世界について分からないことが多いのでどこまで話していいのかとかも考えていたけどレヴィさんが自然に話すものだから知っていて普通なのかと思ったらそうではないことも口走っていたようだ。


 そう言えば故郷の味がするとか牛丼の話のときに内緒にしてと言っていたけど、それもそういうことだったりするのだろうか。


「他の人が知ったらどうなるんですか?」

「アハァ…王都に連れて行かれて拷問でも受けるかもしれないわね」

「…冗談ですよね?」

「王族は腐ってるわ。試しに王都に一緒に行ってみる?」


 冗談ではなく本当に拷問されそうな気がしたので遠慮はしておくけど、そんなことを簡単にされるのだとしたら牛丼などを広めた最初の異世界人はどうなったのだろうか。無事だといいけど。

 いや…おかしくないだろうか?仮にその人がいたとして私がその料理を故郷の味と言って好きだと言ってなんでレヴィさんは知ってるのだろう?


「今まで異界から来た人ってどうなったとかレヴィさんは知ってるってことですか?」

「知ってるわ。そして今も生きてることも知ってるわ」

「……拷問を受けているんですか?」

「歓待される場合もあるわ、ただ歓待されない場合もあって基準は私では分からないわ」


 その歓待されない場合と言うのが拷問ということか。そして歓待された人が料理を広めたりしたということだろうか。

 聞けば聞くほどきな臭い内容に王都には行きたくなくなったけど、それにしたって同じ故郷の人達が苦しんでるかもしれないというのは良い気分がしない。


「リア。きっと貴方は私を選んだ方がいいわ。だってそんなに優しいんですもの」


 母親にでも言われるように、学校の親身な教師が教えてくれるように、耳心地が良い言葉を囁いてくれる心配を帯びた声色が無意識に信頼したくなるように聞こえる。


 一緒に寝泊まりするというわけで、レヴィさんを目の前に考えるのは失礼かもしれないけど一応考えておこう。




 まず一旦まとめるとして。第一に国はとんでもなく放心主義で自分たちが届かない範囲は貴族に領地を与えてほとんどそれ任せにしている。

 そして戦争に関しても商業ギルド上層部も知っている上で亜人の国が仕掛けてくる戦争を利用して人間至上主義を掲げて亜人という悪を立てた上で民が王族に反旗を翻さないようにコントロールしている。


 さらに異世界人の存在については何かしらの基準で判定して歓迎する者とそうでない者を分けて王都に匿っている。

 これに関してはレヴィさんもあまり深くは知らなそうなので一旦置いておくとしよう。


 そして貴族は簡単に作れるというのは魔導を施す作業のことかもしれないということ。どんな手法をしてるのかは知らないけど人間の体内を弄繰り回して貴族を生産して、ただその貴族は王族に忠誠を誓ってるかと言えばそうではい者もいる。

 最たる例としてレヴィさんがそうだ。


 反国家心を抱いてるレヴィさんは、仲間がどれだけいるのかは分からないが何かを企んでいて王族が転覆することを望んでいる。


 これらは正直私が関与できることはほとんどないだろう。レヴィさんも強制はしてこなかったから私選択肢が委ねられてると思っていい。

 ただ強さを求めた上で私がどれだけ強くなっても誰かを救っても街を救っても悪足掻きにしかならなくて今の状況が良くなることは無い…


「レヴィさんまだ起きてます?」

「どうしたのかしら?」

「戦争を起こさずに国を良くする方法とかないですか…?私の知ってる世界では戦争は起きていたけれど平和に生きることもできた世界なんです」

「リアはこの都市を見てどう思うかしら?平和だと思わない?平和を享受することなんてやろうと思ったらできるのよ。ただそれは生まれだったり、状況が違えば変わるものよ。たまたまリアは平和と平和じゃないときがあって知ってるだけで平和に生きたいのなら北の聖教会をおすすめするわ」


 たしかにそうなのだろう。そして私はどっちつかずの状態で強くなろうとか誰かを守りたいとか言ってる。


「国を良くするために争うなんてリアからしたら変に聞こえるかもしれないでしょうけど。それでも戦わなくては、犠牲を出さなければ守るものも守れなくなってしまうわ。貴方が引き連れてる赤い二人は貴方と比べて弱く守られるべき存在でしょ?それを連れて危険なところに連れまわすのも同じことが言えるわ」

「戦力差があるからパーティを組むべきではないという話ですか?」

「それもあるけど、リアの場合は二人を大切に思ってるのに死地に向かわせようとしている。それは何か理由があるんじゃないかしら?例えば自分の命を守るための保険だったり、リアの場合今言ったことは無いとしても。例えば二人を強くするために自分の時間を割いてあげたり。強者を求むというわりに甘いことをしてると面白かったからいいのだけれど」


 それはどこまでも正論なのかもしれない。私は足りないものを補えたらいいなと思って三人と新しい人を迎えてダンジョンで鍛えれたらいいなと思ったけど、成長速度が違うのだから強くなりたいだけなら強い人と一緒にダンジョンに挑んだ方が効率的だし。


「レヴィさんは二人のこと弱いと思いますか?」

「アハァ…少なくとも装備が駄目ね。それにあの赤い二人は二人で一人みたいなものでしょう?どちらか欠けたらその時点で戦力として期待できないならあの二人を仲間として迎えるなら守らなければいけない負担が二倍になるだけ…弱いわけではないわよ?ただ邪魔にはなるわ」


 私よりも二人のことをちゃんと見てあげてたのかと感心もしながら聞き入ってしまう。

 どちらか欠けた後のことまで考えてくれていたのかとかもそうだけど、あの二人ともレヴィさんは初対面なはずだし。


 考えが、私の思慮が単純に浅かったなぁと自分に呆れてしまいそうになる。

 もしスライムの変異種が襲ってきたときフレイさんを守るのが遅れてしまったら?そしたらきっとレッド君は怒り勝算もなく突っ込んでいたかもしれない。結果的に私も辛勝だっただけにそれで全滅してしまっていた。


 次にウェアウルフの魔人も私が前線に出てほぼ一人で戦っていたわけで、その後日にレッド君自らが戦力として役に立たないから荷物持ちにと自分から言ってくれたじゃないか。それを私はみんなで強くなれたらなども思いながらリーダーを押し付けてパーティをそのまま維持した。


「気楽にいきましょ?明日はどうせダンジョンに潜ってもそこまで深くは入らないのだから」

「あ、忘れてました。結局探し物はなんなんですか?」

「それもいずれ分かるわ。そのために必要なものが来るまで時間もあるしダンジョンを楽しみましょう?」


 まぁ、私としてはこれ以上の問答をしてさらに考えてしまうより、純粋に強くなっていくほうが分かりやすいし、いいのかもしれない。

 ただ探し物とやらが見つかったらレヴィさんがパーティを外れて私一人になった時に強くなろうとダンジョンに挑めるのかが不安だ。


 レッド君達も6階層あたりできっと十分な稼ぎを得れるようになってその後は危険を冒さないだろうし、その先も踏まえてパーティ探しをもっと私個人でやった方がいいのかもしれない。


「明日が楽しみねリア」

「レヴィさんが楽しそうならなによりですよ」

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