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三十八話 新しい仲間

「リアラちゃんまたここでやるの?」


 フレイさんから嫌がってる声が聞こえる。私たちはダンジョンの前に立ちはだかるように立っている。


「安心してください、今回は蹴らないつもりですから」

「そこじゃなくて同じ場所でやると噂が本当だったんだーって思われるんじゃないかなって…レッドも何か言ってよ」

「実際のリーダーはリアラみたいなもんだからいいんじゃねえの?」


 そう言ってなんだかんだ私と同じように腕を組んで立ちはだかってくれるから案外乗り気なんじゃないかと思う。

 私たちはパーティ募集を見て加入したいという人をこれから面接と言う名の模擬戦を行うためにダンジョン前に朝から待っていた。


「通り過ぎていく冒険者の人から白い目線を感じるよー」


 実際その通りで、なんだこいつら?というような視線をもらいながら冒険者がダンジョンから出入りしてるのだから私たちは結構痛い行動をしてるのだけど気にしない。

 だってこの方がふぁんたじぃ!なんだもの。


 そしてフレイさんから文句が垂れながらも一向に来ないなぁと時間が過ぎていって昼頃になるときにその人は現れた。


 この世界に来て明るい髪色の人は少ないと思っていたけど、綺麗な青い髪を肩まで伸ばして、同じく青い瞳をした女の子。その服も綺麗な衣装で少し露出していて冒険者とは思えない。


「始めまして、レヴィ・ルラ・グランゼル。あなたが冒険者募集してた人でいいのかしら?」

「あ、はい。私が冒険者のリアラです」

「アハァ…ただのリアラなのね、ではリア?私をパーティに入れてくれるかしら?」


 吐息を漏らすように私の名前をねっとりと呼んできた。

 なんだろうこの人は、名前が苗字付きというのも気になるけど、インパクトがすごい。


「リアラ。こいつ多分貴族だぞ?」

「え、そうなんですか?」

「家名を持ってるのはそうだねー、それにこの人本人が爵位も持ってるんじゃないかなー?」


 緊急的に私たちは後ろを振り向いてこそこそと内緒話を始める。多分レヴィさんにも聞こえてると思うけど。


「貴族の人が冒険者するって普通なんですか?」

「私が知ってる限りだと聞いたこと無いけどなー」

「え、じゃあどうします?」

「とりあえず模擬戦したらどうだ?」

「打ち首になったりしませんか?」

「リアラちゃん手加減ちゃんとしてね!?」


 来たものはどうにもできないし、組合が教えたってことは多分だけど組合登録したのだと思うし。

 とりあえず模擬戦をしようと思って振り返ると、笑顔でこちらを待ってくれてる。


「アハァ…もう話し合いは終わったのかしら?」

「模擬戦も募集に書いてあったのは確認してますか?強者を求むということで私と模擬戦も募集内容にあったんですけど」

「やってもいいけど…私一人じゃ負けるわよ?」


 まさかの降参発言にどうしたものかと悩んでしまう。

 これは貴族だから入れてくれと言われてるのだろうか?


「そっちの赤い男を私に貸してくれないかしら?そしたら一回なら模擬戦もできると思うの」

「それだと模擬戦にならなくないですか…?」

「女の方でもいいわ、もしくはそうね…アハァ…この砂時計が落ちたら模擬戦開始にしてくれないかしら?」


 そう言って取り出したのは私が見覚えのある砂時計、何分で砂が落ちきるのか分からないが準備が良い。

 これはもしかしてだけど魔導の準備というやつだろうか?魔導が使えるならそれは私的にはかなり嬉しいのだけど。


「率直に聞くんですが、魔導の準備が必要だから待ち時間が欲しいんですか?」

「アハァ…分かってるなら話が早いわ。ただ、私の場合は魔導の準備が欲しいから必要なんじゃなくて模擬戦と言うから殺さないために時間がいるのよ」


 自信通りなのか、自信過剰なのかでいえば言った通りなのかもしれない。

 こんなところで爆発させられたら私は即死だろう。


「空撃ちできませんか?そこらへんに」


 私が何もない丘よりも下の方にある平地を指さすと、レヴィさんが何かを取り出して唱える。


「解き放て『龍の飛瀑』」


 呪文らしきものを終えると同時に高圧水が噴き出るように私の指さしたところを水が大地を削っていった。

 間違いなくこれを食らえば私の胴体はちぎれ飛ぶだろう。


「えと…とにかく採用ってことで!」

「アハァ…よかったわ。それじゃあダンジョンに行くのでしょ?行きましょ?」

「今からですか?」

「違うの?」


 今日は面接だけのつもりだったのだけど、どうしようかと後ろを向いて二人を見ると今の光景に唖然として固まっていた。


「レッド君?フレイさん?大丈夫ですか?」

「あ、あぁ…魔導なんて初めて見た」

「あのリアラちゃん?レヴィさん?レヴィ様?になんでダンジョン潜るのかとか聞かなくていいの?」


 それもそうか、貴族がわざわざダンジョンに潜るなんて聞いたこともないしそれらしい人も見たことないのだし、仲間になったのなら聞けることを聞く親睦会でも開くべきかな?


「レヴィさんこれから四人でご飯でも食べに行きませんか?」

「んー…いいけれど、その赤い二人も一緒なのかしら?」

「この二人もパーティですよ。レッド君にフレイさんです」


 二人は貴族になんて挨拶すればいいのか分からないまましどろもどろになりながらも挨拶する。


「代理でリーダーしてるレッド…です」

「槍担当してるフレイだよ…です」

「アハァ…リアは変なことをするのね」


 変なことと言いつつ笑顔だからそんな面白いことをしてただろうか?

 自己紹介も終わってアーライナで外食と言えば現代料理店くらいしかイメージないし、貴族相手にも美味しいと思ってもらえるだろう食事はそこくらいしか思い浮かばないのでそこに向かうことにすると大人しくついてきた。


 店に着くまでレヴィさんを見てると貴族って言うのは歩くだけでも綺麗なものだなと思える仕草で歩いてる。女性らしいとでも言えばいいのだろうか。


「ここのお店ですけど、騒がしいのとか大丈夫ですか?」

「どうせ静かなお店ないのに聞いてくれるのね、嬉しいわ。大丈夫よ」


 中に入ると、楽しく食べてた人達がレヴィさんを見ると一瞬静かになったが、こんなところに貴族がいるわけないとでも思ったのか騒がしさが戻った。

 私は空いてるテーブルまで三人を案内して、この場合椅子を引いて座らせるべきなのか悩んでるとレヴィさん一人で椅子を引いて勝手に座ったので安心した。


 そしてレッド君が顔を近づけてきたので耳を向けると。


「リアラどうするんだ?何頼んでやればいいかとか決まってるのか?」

「え、普通に牛丼でよくないですか?」

「上品さとか必要なんじゃないのかな?こうスープとかさー」


 フレイさんも会話に混ざってくるけど、それを面白い物でも見るかのようにレヴィさんはニコニコしてるので私たちが悩んでる姿を楽しんでるのかもしれない。


「フルコース料理みたいなことを言ってるんでしょうか?このお店にそんなもの無いですよ多分」

「くそっ…俺たちはなんて無力なんだ」

「大袈裟すぎませんか?レヴィさんも慣れた様子で座ってましたし美味しい物ならいいと思うんですけど」


 なにせこの世界の貴族に会うのは初めてだし、それに面接での対応したときの印象だけど。こちらに配慮して手加減してくれようとしたり。

 私の思ってた高飛車な貴族のイメージみたいなものより、ちょっと格好が肩出して露出の高い少女としか思えない。


「レヴィさん、何か苦手な食べ物あったりしますか?」

「スライムラディッシュが嫌いなくらいかしらね」


 田舎で食べてるものだからなのか、単純にねばねばが駄目なのかどっちだろう。


「じゃあ牛丼でいいしょう。すいませーん!牛丼4つください」


 注文だけしておいて、改めてお話をしようと姿勢を正してからレヴィさんを見る。


「この二人がずっと心配しちゃってるので聞いちゃうんですけどダンジョンになんで潜るんですか?貴族なんですよね?」

「アハァ…随分素直に聞くのね。リア、あなたリンリーは知ってるわよね?」

「ポーション屋さんですよね?」

「そこで面白い話を聞いたのよ。なんでも魔導を探る輩がいて、しかも全身溶けても生き返るようなことをしてのけた人がいるって」


 スゥーーー…っと息を吸い込み、心当たりが非常にある。というか私のことなのだけど、でもそれってダンジョンと関係ないのではないだろうか。


「魔導のことはむしろよく分かってないので教えて欲しいくらいです」

「開き直るのね。探ることそのものが罪だと知らないのかしら?」

「もうそこまで特定されちゃってるなら仕方ない気がします。それにレヴィさんが私を捕まえるにしてもわざわざパーティに参加してくれるのおかしくないですか?」

「アハァ…それはそうね、捕まえたいなら最初から嫌疑が出てる時点で捕まえちゃいいものね」

「じゃあどうしてダンジョンに?」

「探し物を探しにきたのよ」


 探し物とは?と思うけどそこまでプライベートなことに踏み込んでいいのか悩むラインだ。

 だけどダンジョンに探し物っていうと魔石とか魔物の素材とかくらいしか思いつかない、もしかしたら中層や深層の情報をレヴィさんが持っていて希少な物を探してるとかなら聞いても分からないだろう。


「それってどこの階層にあるのかとか聞いてもいいでしょうか?噂を聞いてるなら私達と一緒にいると変異種と戦うかもってことも聞いてるのではないですか?」


 もし奥深くにあるなら私がいるだけで階層ボスみたいな存在がいるかもしれないのでむしろ足手まといな気がする。ただ私からしたらレヴィさんの魔導はぜひとも仲間に入って欲しい。

 それでもなお死なせるわけにはいかないしちゃんと確認することは確認しておこうと聞くと。


「分からないわ」

「えと、私達と一緒だと変異種…具体的に言うとウェアウルフの魔人化したくらいの強さと戦うかもしれませんよ?」

「アハァ…私には分からないのだけれど、リアは何が心配なのかしら?」

「レヴィさんは強いかもしれないですけど私はそこまで強くないので守れるか命の危険とかが心配です」


 そう言ってみるとクスクスと笑って私の頬に手を添えて力強い瞳を私に向けて断言してくる。


「危ないときは守ってあげるわ」


 まさか募集をかけて、来たその人に言われるとは思ってもなかった。


「ついでに魔導のこと色々教えて欲しいです」

「無理ね。あぁ、断ってるわけじゃないわよ?教えるにしてもリアには魔導が無理という意味で無理よ」

「どうしてとか聞いてもいいですか?」

「二人きりになったら教えてあげるわ」


 なんだろう、口調がセクシーというかそういう言い方だからか妙に体がこそばゆい感覚の喋り方で喋ってくる。

 ただ今まで謎だった魔導について聞けるのはとても嬉しい。それでもわざわざ名指しで私に魔導が無理って言ってたのは昼に見せてくれた高圧水を噴射とかそういうのが無理ってことだろうか?


 ふと、横を見ればウェイトレスさんが私とレヴィさんのやり取りを見ていて頬を赤らめて食事を乗せたトレイを持って見ていた。

 レヴィさんに席にちゃんと座ってもらって、食事を置いてもらうと、食べ方を知ってるのか普通に食べてた。


「なんというか俺たち空気だな」

「私も守ってもらえるかなー?」


 二人は音を立てないように静かに食べてた。そこまでしなくていいと思うけど、やっぱり貴族ってもっと高飛車で『おーほっほっほ』みたいなそんなイメージが正解なのだろうか?

 そうなるとレヴィさんは普通じゃない貴族ってことなのかもしれない


「リアはこの食事好きなのかしら?」

「はい。私のソウルフードというか故郷の味に似てるんですよね」

「アハァ…そうなのね。それじゃあ好きなことは私と二人の秘密にしてくれないかしら?」

「はい?まぁいいですけど、二人と言うか四人の秘密にしておきます?」


 いまいち空気感が掴めないが、レヴィさんはレッド君とフレイさんのことをあまり良い印象を持ってないのだろうか?存在してないかのように振舞ってる気もする。貴族だから?


「あのー、レヴィさん?私たちと一緒だと報酬の話とかー…レッド代わりに言ってよ」

「お、おう。レヴィさん俺たちだとダンジョンで足手まといになる。リアラが山分けでいいとは言ってたんだけどレヴィさんはどうしたいとかあるか…ありますか?」


 どう対応していいのか判断に迷いながらレッド君が、そういえばそんなこと悩んでたなーという内容を聞いてきた。


「別に私はいらないわ。三人で分け合えばいいし、それにもう貴族と分かってるのでしょう?民から徴収するほど狭量ではないわよ」


 冒険者って徴兵されないとか聞いてたけどそれでも民扱いなのか。

 商業ギルドが幅を利かせてるとは思ったけど、貴族社会だと案外ちゃんとした感じなのかな?税収みたいなものとかも気になってくる。


「貴族でも組合に登録したら、レヴィさんは平民扱いにされるとかではないんですか?こう周り?他の貴族の人から下に見られるみたいな」

「リアが想像してるようなことはないわ。それに組合に登録しても貴族は貴族よ。お忍びで王族が遊びに行くこともある程度には自由だわ」


 それを教えても良いのだろうかと不思議に思いつつも、私と言う魔導を探る不届き者を見逃してる時点でやっぱりレヴィさんは良い貴族の人なのかもしれない。

 ちょっと雰囲気が独特なだけで。


「それくらい自由ならレッド君やフレイさんが普通に喋っても大丈夫そうですか?そろそろこの二人が口調崩壊しそうな気がします」

「アハァ…好きにしたらいいわ。少なくともこの都市にいる間は国王が来ても普通に話して問題ないわ」


 ちゃんと本人から許可をもらえて安心したのかやっと肩の力を抜いて二人がリラックスし始めた。

 ただなんだろうな、言い方が気になると言えば気になる。この都市にいる間ということは都市から離れたらちゃんと敬わなければいけない的なニュアンスなのだろうか?

 国云々を考えていたら魔物が襲ってきた件とかもレヴィさんなら知ってるかもしれないと思った。


「最近?国に魔物が襲ってきたって聞いたんですけどレヴィさんは何か知ってますか?」

「リアは不安症なのね。魔物が数万来たところで王都に攻めてる時点で負けることは無いわ」

「そうなんですか?魔導を使う魔物もいると聞いたんですけど」

「町や村ならいくらでも壊せるでしょうね。アハァ…王都は別なのよ?まぁ追い返すくらいしかしないでしょうけどね」


 絶対的な自信があるのか、それほどに特別な場所なのか。

 ただそれだと王都は安全だけど他の場所が安全ではないのではないだろうか?


「追い返すだけだと被害が広がるんじゃないんですか?」

「きっとあなたが聞くと残念がるのだろうけれど、この国の王族は王都以外守る気はそんなにないわ。領地を賜った上で、領内から出ないように気を付けた貴族が出ないと被害が広がるだけでしょうね」


 それは…どうなんだろう。がっかりはするけど、なんでそんな変な仕組みをしてるのか分からない。

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