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三十二話 アーライナ魔窟1階層一

 明日に一緒にダンジョンへ行こう。そう話し合いは終わって受付でパーティ申請をした後は各々の宿に戻る。

 紳士の人になんて説明したものか悩むが、印象的だった赤髪のことを言えば大丈夫かな?


「おや、帰られましたか」


 馬屋の方に着くと、食事を運んできてくれたのかと思ったが食事もトレイも無いし、よく見れば紳士さんは私が住んでる藁のところを掃除してくれてた。

 そんなに汚してないとは思ったけど、もしかしたら毎日私のいない時間を見計らって掃除してくれてたのかなと思うと本当に見た目に違わず紳士的なおじさんだ。


「今日はこの後、自主訓練と言いますか。パーティを組めたので明日にダンジョンに行くことになりました。それでなんですけど私、リアラに会いに来る赤髪の同じくらいの年齢の子が来るかもしれないです」

「なるほど、畏まりました。それではその方が来たら案内させてもらいますね」


 そう言って新鮮?な藁を敷いてくれて宿に戻っていった。

 こんなお金にならないような私に対してお客さんとして対応してくれるのは見た目のおかげもあるかもしれないが私もあんな風に格好よくなんでもこなせるような人になりたいものである。


 今日は結局ダンジョンに行かなかったけど、することもなくなったのでなんちゃって魔導の続きをしつつ夕食の時間まで潰して。食事を持ってきてくれた紳士さんに感謝しつつ食べた後も片付けたのちに鍛錬をして空に月が昇り綺麗なそれに目掛け風を飛ばして疲れ果てたところで藁にダイビングして眠る。


 この風を起こすことが何の役にたつのかも分からないし、土だってほんの少し隆起するだけ。結局なんちゃって魔導の自己強化をした方が役に立ちそうで放出は睡眠のために魔力を放出してるだけで終わる。



 目も覚めて、井戸水を浴びに行き。レッド君達が来ないうちに着替えていつ頃来るか分からないので適当に素振りだけして時間を潰していると、紳士さんに連れて来られた二人が来た。


「もう起きてたのか。こっちに来ても良かったんだけどな」

「寝顔見れると思ったのにー!」


 寝顔を見てどうする気なのだろう。それは置いといて紳士さんに感謝しつついよいよダンジョンに潜るのだと思うと緊張する。昨日はぶらりとしてたけど今回は二人がいるのだから役立たないといけない。

 紳士さんからは「いってらっしゃいませ」と声をかけてもらい、フレイさんが手を繋ごうとしてたけど私の籠手だと多分握りづらいと思ったのか腕に絡みついてきた。


「あんましつこく絡むなよ?」

「私は親睦を深めてるだけだよー、ね?リアラちゃん!」


 どう言えばいいのか悩むところで、私的にはこれが普通なのか分からないし。同年代のパーティが組めたらそんなに嬉しいのなら下手に断っても傷付かれるかもしれない。


「身長的に私の腕に捕まるの態勢きつくないですか?」

「これ私嫌がられてるのかな?それとも心配されてるだけなのかな?」

「どっちもじゃね?」


 嫌がる要素は特にないので嫌ではないのだけど、単純に動きにくい…

 それからもフレイさんは離れることは無く、のんびりとダンジョンの丘まで進む


「ダンジョンってどんな魔物出るんですか?」

「1階層はスライムだな。種類によって倒しにくいが倒せる奴だけ倒して進んでいく。フレイが主に担当する。槍の方が魔石を狙って突いて体から分離させやすいし魔石が抜けて時間が経つと動かなくなる」

「倒したー!って思っても生きてることあるから魔石飛ばしても死体に近づかない方がいいよ!」


 魔石を飛ばすと死ぬ?スライムと言えばゲル状の生き物で無性生殖を行うアメーバみたいなものじゃないのだろうか?あとは硫酸みたいに人間の皮膚を溶かしたり?


「スライムって強くないんですか?」

「天井にだけ気を付けておけばそんなに強くはない」

「リアラちゃんはダンジョン初めて潜るって言ってたでしょレッド。外の魔物とダンジョンの魔物はどういうわけか魔石さえどうにかすれば時間が経つと死ぬんだよね」


 まさかダンジョンの子供だからみたいな?それならダンジョンの魔物は外の魔物と違って弱体化みたいな措置がされてるのかな?

 それがダンジョンの意図なのかはたまたダンジョンが生んだ魔物の特性なのかは分からないけど弱いに越したことは無いから別にいいか。


「打撃が効かなかったりします?」

「スライムはねーリアラちゃんが思ってるより面倒くさい生き物なんだよ。一応生きてるわけだから体内に入ろうとしてくるものは抵抗されて一瞬で突かないと魔石まで槍も届かなかったりするんだよね」

「ゲル状の生き物なら勢いよく殴れば吹き飛ばせたりはするのかなと思いますけど」

「げる?どうかなー?殴ろうとして飲み込まれたりとかは聞いたことあるけどそもそも触ろうとしないしなー」


 たしかなんとか現象みたいな感じで片栗粉やら何かとかそもそもゼリー状なら普通に殴れると思ってたけど。ただ自分を分裂とかじゃなくスライムの総合体が死ぬなら一つの生物なのかな?分からない!


「実際にやってみりゃいいんじゃねぇか?石でも投げてぶつければリアラの言ってること分かるだろ?」


 それもそっか。わざわざ危険を冒してまで殴り掛かって試す必要はないんだ。

 ただスライムの脅威はダンジョンだと死ぬと聞いて安心はしたけど、外ではどうやったら死ぬのかスライムが外にいたら倒すことできるのかな?火でも使わないと蒸発させれずに苦戦するのでは。

 それともナメクジと同じように塩でも撒けば殺せたりする?


「リアラちゃんは戦うの格闘なの?」

「あー、一応解体ナイフは持ってますけど基本殴るだけですね」

「じゃあ武器を買うために今日は頑張って稼いじゃおー!」

「3階層は様子を見て考えるが、そんな潜るつもりはないからな今日は…」


 フレイさんがいると明るい気分になれるからありがたい。いつも考えてばかりだからちょっと気が抜けるが、レッド君がしっかりしてそうなので大丈夫だろう。

 逆に私は1階層では役に立たない可能性があるかもしれないので小石を見つけたら拾いつつ、なぜかフレイさんも手伝ってくれたのでそんなに時間がかかることもなくダンジョンに着く。


「それじゃ行くか?準備は大丈夫か?」

「はい」

「索敵はよろしくねー」


 そう言ってレッド君、フレイさん、私の順番でダンジョンにはい―――

 私が足を踏み入れた瞬間ダンジョンから強風が起こって3人後ろに吹き飛ばされた。


「なんだ!?」

「いったーい」


 二人の様子を見ると、よくあることではないのだろう。何かダンジョンで異変でもあったのだろうか?


「これは…過去にもこういうことってあったりしました?」

「俺は聞いたことないが…まぁダンジョンならそういうこともあるのか?」


 3人で尻もちをついてたのを起き上がって、また強風が吹くかもしれないと思いながら中に入ると今度は特に何も起こらなかった。


「なんだったんだろうね?さっきの」


 ダンジョンも魔物なのだから何かしらの意思があってのことだとは思うけど、可能性としてはダンジョンの魔石を誰かが壊したとか?

 もしくはダンジョンが強い魔物を生んだとか?


 なんにしても良い事が起きたとは思えないし、ただここで中断を提案してもいつダンジョンに潜るの?ってなるし。

 レッド君の方を見ると問題ないと判断したのか私たちに確認を取りつつダンジョンへ入る。


 少し下り坂のような構造でなだらかな階段のような部分もあり、転んだらそのまま落ちていきそうなところを進んだら、平坦な通路が広がっていた。

 丘を掘ったらダンジョンの全貌が見えるのか気になるところではあるが、岩の魔物っていうくらいだし岩がむき出しになるだけかもしれない。


 ただ通路を進んでいくと人が4人くらいは並んでもいいくらいの広さになってきて、二人が並んで歩くのを二歩後ろについて行くようにする。

 一応天井なども見るが湿ってる様子はないし。それに…そうだ、明るいのだ。洞窟と言えば暗くて当たり前なのにこのダンジョンは人が見えるくらいに明るい、とはいえ奥の方は見えないという謎仕様。


「なんでダンジョンなのに暗くないんですか?」

「ふふん!私が教えてあげましょう!ダンジョンの岩は人がいると明るくしてくれてるかららしいのですよ!」

「ということはダンジョンは人が来たと分かっていて明るくすることで獲物を呼び寄せるんですか…」

「リアラちゃんて難しいこと考えるね…」


 光る苔みたいなものが実はあるとかではないのならダンジョンが食べるためにやってるのは間違いないだろう。そうなると1階層にいるスライムはさながら唾液みたいなものか。

 内臓と言う名の魔石に近づいてくると消化器官が働いてより強い魔物を出すとか?


「止まれ、フレイ二匹だ。行けるか?」

「何色してるー?」

「どっちも今回は緑だな」


 むぅ?色が違うのか、一体どういう仕組みで色が違うんだろう?てっきり大きさで分けてると思ってた。

 色ごとに消化力とか違うのかな。


「それじゃ、行ってくるね」


 そう言うと短槍を構えて魔石がふよふよ内部を移動させてるスライムに槍を突き刺すようにして押し出した。もう一匹に対しても動きが鈍く、狙いをしっかりと定めて魔石を飛ばす。

 そのあとは落ちた魔石を拾ってこっちに戻ってきた。


「リアラちゃんどうだったー!」

「すごいですね!一撃でした」

「そうでしょー」


 私もいつか長物の武器を手に入れたら試してみたい、ちゃんと狙ったところに突き刺すこともそうだけど、スライムの抵抗力が気になるし。


「今のうちに石を投げてみたらどうだ?」

「そうですね、試してみます」


 優しく投げても仕方ないので、石を振りかぶって思いっきり投げると表面に当たりどぷんと沈むように飲み込まれた。

 勢いが足らなかったのかスライムのクッション性が高すぎるのか。もう一個試してみたくて今度は怪力だと思われるくらいなので掛け声と一緒に投げる。


「『強く飛んで』」


 願いを込めて投げるとさっきより格段に速くぶつかりスライムの半分が壁に飛び散った。もう半分はぷるぷると震えながら萎んでいく。


「すご!」

「リアラは投擲もできるんだな」


 威力が足りなかったから最初は飲み込まれたのだろう。そうなると抵抗を上回る打撃を加えたらスライムがどうやって生命維持してるか分かれば私も倒せないことはないかもしれない。

 とはいえ飛び散ったスライムの残骸がまだぷるぷるしてるのであまり良い倒し方ではないのだろう。


「投擲に関しては命中精度良くないので期待はしないでくださいね?」

「それでも牽制はできるだろ?これからは俺も石集めておくよ」


 多分ゴブリンとか相手でも普通に投げても意味ないだろうからその分、掛け声をしないとだめだろうけど、これも何回まで投げれるか分からないから期待はしないでおこう。


 私たちはいつ死ぬか分からないスライムを横から抜けて進むと、再度スライムがいてフレイさんが仕留める。

 今度は青色だった。


「スライムの魔石って値段いくらくらいなんですか?」

「一個銅貨1枚だな。たまにでかいスライムがいると上手く倒せさえすれば銅貨3枚くらいにはなるけどフレイの槍だと短くて相手にしないな」


 長い槍さえ持ってればダンジョンの魔物頻度だとお小遣いくらいの稼ぎにはなるみたいだ。

 それでも小さいのを簡単に駆除していく方が早く儲かりそうだけど。


 私は1階層の地図を見ると寄り道?してることに気づいた。


「これはどこに向かってるのでしょう?」

「雑魚でも数をこなせば小銭にはなるってのと、あとリアラのさっきの投擲を見たらでかいのに通じるのか気になった…だめか?」

「いえ、大丈夫ですよ?ただあまり何回も投げれるか自信はないので期待はしないでくださいね?」


 そうして行き止まりになるとは分かりつつ移動して道中にスライムが増え始めていてそのたびにフレイさんが対処していく。

 数が多すぎると足場が確保できないらしく、一旦倒して、帰り道に減ったスライムを倒しつつ魔石を回収するという流れらしく、頃合いを見計らってレッド君が移動をするように先導していく。


 1階層のマップを全部覚えてるのか地図を出してる様子は無いし。こうやってずっと稼いできてたんだろうと思うとその武器とかはかなりの日数かかったんじゃないだろうか。


「誰も倒してなければここにいると思うんだが…リアラいけるか?」


 曲がり角を曲がってみれば少し大きめの広間みたいな行き止まりのところでかなりの数のスライムがいた。

 それと奥に鎮座しているでかいスライム、私の身長ほどはあるそれはその分、魔石も大きい。


「これってスライムが合体してるとかそういうやつですか?」

「それはわかんないけど…手前のやつをいつもは仕留めてあいつは放置するだけだったんだ、試しに石を投げてくれないか?」

「はいはーい!私リアラちゃんの投擲見てから作業はいる!」


 そんな期待されても。さすがにここまで大きいと思ってなかったので多分通じないと思うのだけど。

 とりあえず近づけるところまでは近づいて石を思いっきり振りかぶって投げる。


「『強く飛んで』」


 石は速くスライムの胴体にぶつかりそのまま沈んでいく。やはりだめだったか…サイズが大きいとその分大きい石をというかあのサイズなら岩を投げなければだめだろう。

 それならと思ってもう一度石を持ってスライムの端を狙うように投げてみる。


「『強く飛んで』」


 すると思ったところとは違うけど端に当たり多少飛び散らせることに成功はしたけど、これじゃ石を大量に用意しないと削りきれないだろう。


「駄目っぽいですね…」

「いや、むしろダメージ与えただけでもすごいと思う」

「リアラちゃん元気出して!手前のやつ倒してくるからね!」


 そうしてでかいのにあまり近づかないようにしつつ手前のスライムをある程度魔石を弾き飛ばしたあと、一旦ここまでに来る途中のスライムまで戻り、スライムを駆除して。また広間に戻り駆除を繰り返す。


「毎回これしてるんですか?」

「2階層だとコボルトがいてそこで稼いでもいいだろうけど、どうせなら拾えるもの拾いたいだろ?」


 私が動いてるわけではないから別にいいのだけど、フレイさんの負担大きくないか心配になる。

 魔石拾いはレッド君がここでは率先して拾ってるけど私も拾えそうなものは拾いつつ手伝い、スライムを見ると赤、ピンク、白、グレー等色んな色がいてカラフルだ。黒色なんかは魔石がどの位置にあるのか目視できないから多分これが放置するタイプのスライムってことなのだろう。

 着色料でもつけて育ててるのか食生活が違うのか、目に痛いテーマパークのカラフルな光景だ。


 道中ではあまり稼げないと思っていたけど、ここの数を合わせればもう魔石50以上は集まってるのだろうから日銭を稼ぐ分にはスライムで良さそうだ。私には向かないということを除けば槍持ちは1階層を拠点にしてそうなきがして聞いてみる。


「ここってあまり人気ないんですか?」

「んー、戦える人はさっさと下に行って素材採って帰るから面倒くさいここは不人気なのかな?」

「どんな素材持ち帰るんでしょう?」

「ミノタウロスとかオークとか?どの階層まで潜ってるのか分からないけど食用は高いからねー」


 もしかしてあの牛丼てミノタウロスのお肉だったりするだろうか?いやもしかしなくてもそうかもしれない、魔物って食べてもいいのかと思うが、ミノタウロスは魔獣?獣だから良いのかもしれない美味しかったし

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