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三十一話 パーティ

 まだ太陽は昇ってない時間に起きて、一応組合の方で掲示板を確認しに行く。24時間営業なのが結構助かる。夜になると私がやれることほとんど少ないし。

 組合はいつも通りと言うべきか飲んだくれがテーブルに突っ伏して寝ている。酒一杯の値段が気になるところだ。私もいつかは組合で寝泊まりすることを視野に入れたい、それくらいお金を節約して装備を整えていきたい。


 掲示板の方は特にめぼしいものもなく。清掃関連の依頼が多いくらいかな、そういえばここでは見張りの仕事がないんだなと思ったら、荷物の検品とかしてたからさすがに組合に任せれることが無いのかもしれない。


 まぁ、ダンジョンは事後報告で良いと言われてたし。あとは行ってみよう、行かなきゃわからない。


 東門に向かって歩いてると、冒険者っぽい人がちらほらといるからダンジョン帰りなのかこれから清掃などをするのか。その人たちを見るたびに基本的に冒険者はパーティ単位で動いてそうで、私みたいなソロは絶対数が少ないかもしれない。

 ダンジョンがあるからなのか、元々パーティで依頼を達成して報酬を分配しているのかは分からないけど。


 特に見張りとかもおらず東門は開門されてる。危なくないのかな?人通りが多いから許されてるとか?

 なんだか久しぶりに都会から外に出た感覚がして空気を吸い、吐く。


 たしか丘にあるとか言ってたからもう少し先だろうと進んでいくと。丘上に家?と洞窟っぽい見た目の地面から明らかにおかしいように岩が突き出たと思わせる洞窟があった。

 けどこの隣の家はなに?ダンジョンに対して見張りをしてる誰かがいるのかな?一応挨拶するべきか悩んで、こんなところで暮らすただの人がいるわけないかと思ってノックしてみる。


 ガチャリとドアが開いて顔を見せたのは、見覚えがある。たしか最初の組合で受付してくれた人だろうか?


「リアラさんですか、ようやく来たんですね。てっきりすぐに来ると思ったんですが準備をちゃんと…服は綺麗になってますけどそれ以外は変わってないですね」

「お待たせしました?装備に関しては作ってもらってる最中で今日はダンジョンを少し様子見しようと思ってきました」

「慎重なのは良い事です。リアラさんまだ誰ともパーティを組んでいないですよね?」


 寝起きなのか目をこすりながら聞いてくる。もしかしたらパーティを組んでないことを心配してくれていたのだろうかと感謝しつつ誰とも組んでないことを告げると。


「それなら貴方とパーティを組みたがってる子がいるんですけど、組んでみませんか?」

「えと、それはいいですけど?なんで。えとお名前聞いてもいいですか?」

「私ですか?フェルンです、それとも組みたがってる子ですか?一応規則として名前を組合員が勝手に出さないようにはしてる…というのは伝えておきますね。ただ今回は組合にパーティを募集と依頼が直接来てまして。その子たちはレッド君とフレイさんですリアラさんと近い年齢の方ですよ」

「フェルンさんですかよろしくお願いします。レッド君とフレイさんも覚えておきますね。色々気になるのですが…」


 まずどうしてフェルンさんがわざわざこんなところにいて、私を待っていた?のか聞いてみると「そもそもリアラさんは来て間もないですし、私くらいしか姿を把握してませんでしたから私が受けました」とのことで。パーティ募集って本当にあったんだなと思い、ただ掲示板の方に貼ればよいのでは?という疑問も浮かんで聞いてみる。


「掲示板でパーティ募集するのもよくあることではあります。大抵はすぐ募集が終わりますしその方が人は来ますね、ただ年齢まで制限をかけるとそれを把握してるのは組合員であって冒険者同士だと年齢を詐称して近づいて不和を起こすなどもあって、レッド君たちはそれを危惧して組合員に依頼をしたのでしょうね」


 ということは必然とレッド君とやらが私が書いた15歳という詐称した年齢に近いのだろう…なんかごめんなさい…。

 私自身、自分の身体の実年齢が分からないので許してほしいが、理由は少しずつ分かってきた。


「それなら最初、私が組合に冒険者登録しに来たときに話してくれたらよかったんじゃないですか?それとも最近の依頼ですか?」

「さすがに初対面でいきなりはしませんよ。レッド君達と再度確認を行わないといけませんし、私が良くても判断するのは彼らですから」


 つまりそれっぽい人がいましたよーと告げると、その人と組みたいと言われてようやく行動を起こせるという二度手間をしてたということ?かな。

 事情はとにかく分かったのでオッケーなのだけど、あとはその人らとどうやって会うかだ。


「私としてもパーティは願ったりかなったりです。顔合わせみたいなものはどうすればいいんでしょう?」

「毎日顔を出すようにレッド君達に言ってあるので今日聞いてみます。リアラさんも来ますか?それともダンジョンに入られますか?」

「んー…」


 悩む。非常に悩む。悩んでいる理由としては主に二つ、なんちゃって魔導を今回は試してみたいと思ってダンジョンの1階層に挑もうと思ってたこと。

 そしてダンジョンの儲かり具合、具体的に言えば魔物の頻出頻度を確認したいこと。


 逆にパーティの顔合わせを先に済ませばなんちゃって魔導は極力控えるとしても怪力で誤魔化して、私の足りないところを補ってくれる人達とさっさとダンジョンに潜る日程を決めれる。そうすれば私としてもありがたいし、向こうもわざわざ毎日組合に顔を出して待ちぼうけさせてるのだろうし。

 なによりフェルンさんが以前言ってたパーティを組んだ方が地図を相手が持ってるかもしれないとか、どんな魔物が出るのかを知ってるかもしれないと思うと安全面では顔合わせの方が良い。


 リスクとリターンを考えてみると、そもそも一人ではいつでも来れるし、顔合わせした方が無難かなと思い始める。パーティを組んだからと言って一人で潜っては駄目というわけではないし。

 私がパーティを組んでも一人でダンジョンを潜ることを顔合わせの時点で確かめておけば組合の方に説明もついでにできるだろう。


「一緒に顔合わせに向かいたいです」

「やっぱり慎重なのですね。良い事です。それでは行きましょうか」

「ここはいいんですか?」

「他の組合員に頼みます。元々私はここの見張りは別の方の仕事でしたし、少しの間留守したからといって問題はないですよ」


 ちなみになんで兵士や冒険者が見張りをしてないのかと聞くと、個人の感情を持ち出してダンジョン帰りの冒険者を危険に合わせてしまわないかと、アーライナのダンジョンは国が管理してるというわけではないらしく。それなら中立を位置付けしてる商業ギルドでも国でもない組合員が管理するという立ち位置になったらしい。


 ダンジョンは利益を生む。ふと吟遊詩人の唄を思い出すがそれと同時に魔石が排出されるダンジョンを国が運営してないのはどういうことだろう?と疑問も浮かぶ。

 商業ギルドの名前が出たということは国と不仲だけどダンジョンの利益はどっちも欲しい、だけど争いの火種になるくらいなら?みたいなことだろうか?


 私が今まで聞いた感じだと魔導という武力を国が使い。金銭で人数を商業ギルドが勝ってるという感じかもしれない。商業ギルドの本部が北の聖教会という膝元にあるのも気になるが、実際に行ってみないと分からないことだらけだ。


 結局来た道を引き返して組合に戻ると。寝ていた人達も起きてどこかに働きに行ったのか、さっき来たときとは違う冒険者が飲んだくれてる。

 私はフェルンさんについて行くとカウンター近くに椅子を置かれて、座ると組合を見渡すような位置のため。それは逆にテーブルで飲んだくれてる人達からしても同じで組合の私がまるでマスコットキャラみたいな感じになってる。


「あの、フェルンさんこの位置はさすがに恥ずかしいんですが」

「テーブルの方に移動しますか?」

「そうしてください…」


 空いてるテーブルに着くとそこから何をするでもないのでぼーっと冒険者たちが闊歩する組合を見る。

 槍、剣、斧槍。盾のみ?短剣2本。など冒険者が持ってる武器を見つつ防具も見てみたが大抵の人は良い質の防具を着込んでる。ということは武器もそれなりの値段の物を揃えてるということだろう。

 ただパーティを見ていると盾のみを所持してる人が1パーティに一人はいる気がする。いないところもあるが数が多い。


 それからも数時間は経ってるであろうけど特にレッド君とやらが来ることもなく。冒険者の話を盗み聞きしてると、盾持ちの人は主に荷物持ちっぽい。

 防御も担当するが荷物持ちか、たしかに素材を手に入れても持ち帰らなきゃいけないわけだし、ただ肝心の荷物を入れる物はどれだろうと思ったが、解体場の方で袋ごと預けてるのだと分かった。


 また長物を武器にしてる人が結構見かけるのだけど、これは突いて攻撃をしてるのかと最初は考えていたが斧槍も結構見るところ振り回せるくらいの広さはダンジョンにあるのかもしれない。


 誰かがまたドアを開ける音が聞こえてちらりと横見すると、どこかかつての英雄を彷彿とさせる赤髪の少年、そして同じく赤い髪をたなびかせる少女が入ってくる。

 名前の通りに赤いんだなとレッド君であろう人物を見ているとフェルンさんの所に並び何か話したあと、フェルンさんも一緒にこちらへ来る。


「リアラさん。こちらの方がレッド君、フレイさんです」

「リアラです。よろしくお願いします」


 二人の武器はレッド君が剣を持っていて、私とは違ってちゃんとした革鎧やらを装備している。どうやってそんなにお金を貯めたのかぜひともきになるところだ。

 フレイさんに限っては服装は動きやすそうな恰好で肘や膝など関節各所に最低限の防具をつけて武器は短剣と短槍を持ってる。


「私たちのパーティに入ってくれるって聞いたけどほんとう!?」

「フレイそんなにがっつくなよ、まだ顔合わせだから…」

「だって女の子だよ!男の子が来ると思ってたもの」


 最初は凛としてそうな女の子だと思ったけど愛想がよい元気な女の子なんだなとフレイさんの印象が変わる。逆にレッド君はなんかやさぐれてる?


「それでは私は組合の方に戻らせていただきますね。依頼は達成ということでこれ以上は失礼します」


 フェルンさんは案内を終えて、いくらで依頼を頼まれていたのかは知らないが最後まで丁寧で仕事のできる人だなぁと見送る


「それでそれでリアラちゃんはパーティ入るんだよね?」

「待て。そもそも名前名乗ってないだろう?俺はレッド。こいつはフレイ、妹だ」

「よろしくお願いします。パーティについてはこれから話を詰めていきたいと思います」

「リアラちゃんかたーい!もっと気を抜いていいんだよ」


 私の頭を撫でたり抱き着いてきたりとやたらスキンシップが激しいフレイさんを置いといて、話が出来そうにレッド君を見ると、分かってくれたのかとりあえず椅子に座ってくれた。

 フレイさんは私の隣に椅子を持ってきて座ってくる。


「俺たちは主に2階層までを狩りしてる。それ以上を潜りたいと思ったら二人じゃきついと思ったから募集依頼を頼んだんだ」

「それでは年齢が近い方を選ばなくても良かったんじゃないですか?実力があればその方がいいと思いますけど大人の方が腕は確実ですし」

「そこは隣にいるそいつの我儘だ。俺はどちらかと言えばそっちの方でも良かったけど、ただ俺らがパーティに入れてもらったり歳上のやつだと舐めて報酬分配で面倒になるかもと…フェルンさんが言ってたからだな」


 実際にそんなことあるものなのかと思うが、冒険者で私たちくらいの年齢層が少ないというのはどうだろう?いくらなんでも都市くらいの規模になればそれなりに冒険者を目指す人もいるんじゃないかな?


「私以外にも冒険者はいると思うのですが、それこそ年齢も近くて女性の人も」

「ダンジョンに潜るやつがいねぇんだ。良くて外の魔物討伐くらいなら小遣い稼ぎで手伝ってくれるやつもいるけどダンジョンに潜るとなったら嫌がるやつもいるし、実際に何人かはすぐにやめちまった」

「ダンジョンて不人気なんですか…?」

「才能なんて言葉は俺は嫌いだけど、ダンジョンは死亡率高いからな。俺たちは2階層までだけど3階層以降はそれこそもっと死亡率が高くなる」


 たしかディズさんの言葉を思い出すと、ダンジョンに行くやつは夢を見る馬鹿?だったっけ?堅実な手段でならレッド君の話的には2階層までで小遣い稼ぎすれば、今着てるレッド君たちの装備分は稼げるということだろうか?

 一応この辺りも聞いてみるか。


「私はダンジョンに潜ったことがありません。2階層まで慣らす必要もありますし、その報酬分配はどのように行うのでしょう?」

「基本全部みんなで山分けだ。宝箱が出てもそれが必要な物じゃなければ売って山分けするか、もしくはパーティ内で使いたい奴に優先するし、欲しいものが被った時は次の宝の優先権を渡すようにする」


 元々用意してた説明なのか、ちょっとフェルンさんみたいな説明だと感じてフェルンさんを見るが応対していて忙しそうだった。

 こんなしっかりとした条件が整ってるなら別に問題は特になさそうではある


「リアラちゃんは一人でダンジョンに行こうとしたんだよねー?それならダンジョンのこと教えてあげるよー?」

「まぁ、どちらにしても私もパーティは入りたかったです。ですがその前に聞きたいのですが今後予定をどうやって合わせるんですか?」

「そうだな。同じ宿に泊まるのがいいんだが、リアラはどこに泊まってるんだ?俺たちはゴブリン嫌いの宿屋に泊まってるんだけど」


 まさかここでその名前を聞くとは思ってなかった。満室って言ってたからそれなりに人気だろうによく入れたものだ


「私は、名前は覚えてませんけどドアに羽?みたいなのが描かれてる宿屋です」

「羽?どこだ?」

「それって!あの高い宿じゃないの!グリフォンの巣宿!」


 どこだそれ?と思うが、グリフォンてたしか鷲?の四足歩行の生物だっけ?羽のマークがそんな生物を模してるなんて大層なネーミングセンスだと思う。


「高いのか、じゃあ金には困ってないのか?」

「困ってますね」

「困ってるのにそんなところに泊まってるのか…」

「私と一緒の部屋にすれば宿代節約できるんじゃない?」

「フレイさんは個室で泊ってるんですね」

「レッドもいるわ、ただベッドを一緒にすればいいんじゃない?」


 3人で寝泊まりか、節約面ではたしかに良いとは思う。ただあの紳士さんに申し訳ないと思うのもまたある。

 いっそここで三人で馬屋生活をするなんてどうだろうか?そうすればたった銅貨10枚食事を三人合わせても銅貨40枚で済むという、これいいかも?


「聞いてみるのですが、ゴブリン嫌いの宿屋は宿代いくらで食事代はいくらですか?あとご飯美味しいか気になります」

「寝泊まりは銅貨30枚だな、食事は10枚で、飯は――」

「リアラちゃんの泊まってる場所と比べたら不味いだろうから期待しなくていいと思うわ!それに今更宿の質を下げるより私たちがリアラちゃんの所に行った方がいいわよ」

「そうは言っても高いんだろう?俺たちの有り金合わせてもすぐ底を尽きちまうぞ」


 これは、さすがに馬屋で寝泊まりしてることを言った方がよさそうなので説明するか。


「あの二人とも、私が寝泊まりしてるのはその宿屋の馬屋です。だから二人が想像してるのと違いますよ」

「「馬屋?」」


 私が宿の人の好意で馬屋で寝泊まりしてもらえるように頼んだことを説明するとレッド君は「その手があったのか」と感心してフレイさんは「臭そう…」とシンプルに胸に響くお言葉をくれた。


「だとしたら…どうするよ?」

「私はみんなで一緒がいいとおもう!」

「住んでるところは分かるみたいですし、当面はこのまま現状維持でいいんじゃないですか?」

「そう、だな」

「えー」


 帰ったら紳士さんに私を訪ねて来る人がいるかもと伝えないといけないな。


「それと、パーティで動かない日があれば個人的にダンジョンに潜りたいとも思ってるんですがそれはいいですか?」

「日を跨いでいく時はパーティの一時解散とかになるなそれ、組合に言えば通るのか?」

「どうせ私とレッドは二人で行動してるし、三人の時は一緒に顔を出すって伝えればいいんじゃないの?」

「それもそうか、大丈夫だ。だけど伝言は残してほしいしダンジョン以外の依頼の時は相談してほしい」


 なんとか許可ももらえたし、すり合わせはこの辺りだろうか?他に何か言っておかなければならないことはあるかなと考えても、思い出したりしたときにその都度聞けば良いだろう。


「それでは私で良ければパーティをよろしくお願いします」


 私の対応が丁寧すぎるとフレイさんに抱きしめられるが、距離感バグってるのはフレイさんの方ではないだろうかと思う。

 レッド君に至っては呆れた目をしてるし。

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