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三十話 古着屋の娘

 私は久しぶりに眠れた。なんで?とも思うが。

 原因と言えば昨日やっていたなんちゃって魔導検証が原因なのだろうけど。それで疲れて眠ったのか。

 太陽はまだ昇ってないからそんなに深く眠ってたわけではないはずだけど寝れたということが少し嬉しかった。


 日が昇ったら今日はミーミちゃんと遊ぶ約束をしてたし、とはいえ早朝に向かっても迷惑かもしれないから昼少し前くらいにたどり着くようにしようかなと決めて。

 ちょっとだけ再度魔導検証しようと思ったら右腕が筋肉痛になってた。


 これは今までのことを考えると魔力で補填しきれない分を身体本体が疲弊したからなのかな?

 うーむ…分からない。とにかく早く治れーってさすってるとなんとなくだが筋肉痛が和らいだ気がしたので多分魔力が願望によってなにかしら作用してるとは思うんだけどな。


 では井戸は水が湧けという願望で無限に水が湧いてくる?死にそうになれば火事場の馬鹿力が起きて九死に一生を得る?そこまで都合の良いものでもないだろうし…だめだ、起きても考えてたらお腹すいてきた。

 お腹すくってことを実感してることに自分で驚くが、燃費の良い身体は少なくとも魔力の恩恵ということは間違いないはずだ。


 ただそこから魔導へ発展させる工程が分からない。自然現象を利用するより自分の拳を強固にするイメージで完成されたものが出来たのも訳が分からない。

 体内で行う魔力と外で現象を起こす魔力の用途が別物ととりあえずは結論付けておくしかない。そして常時強くなれるように明確なイメージを常に考えておくこと。


 あれ?よく考えたら魔力で補っていたのだとしたら今まで腕立て伏せとか筋トレしてたけど筋肉は付いてない?見た目に影響しないと思えば聞こえはいいけど、魔力頼りになってる身体なのかな?

 それでも意味はないかもだけど何もせずに時間を待つのも嫌だし、時間になるまで筋トレはしておこう。



 太陽が昇って外も賑わってきたところで筋トレをやめて。井戸で水浴びをして。馬屋に戻り着替えて黒いワンピースでミーミちゃんの所に向かう。本当は白い方がいいのだろうけど、井戸の場所で裸になると人目も気になるしそこまで恥じらいは捨ててない。


 私がお店に着くと、おばさんが私に気づいて近づいてきた。


「リアラちゃん来てくれてありがとう。ミーミなんだけど今日が楽しみすぎて少し寝坊してるみたいなの」

「あらま、それじゃあもう少し時間を空けて戻ってきましょうか?」

「それなんだけどゴドさんが貴方に伝えたいことがあるから来て欲しいって言ってたわ」

「誰ですか?私ゴドさんていう人知らないんですけど」

「えっと、なんだったかしら。確か靴?ブーツだったかしら?その件で話したい事があるって言ってたんだけど」


 あぁ、防具屋のおじさんだ。ゴドって言うのかあの人。


「分かりました。私が頼んでいたブーツの人だったんですね名前知らなかったです」

「よかった。それまでにミーミは起こしておくから良かったら行ってきて?」

「はい!むしろ教えてくれてありがとうございます」


 近場だしすぐに終わるとは思うけど、伝えたい事とはなんだろうか?

 作るのに材料が足りないとかだったら私はあまり協力できないきがするのだけど。


 歩いて5分もしないような距離なので、お店だしノックも必要ないと思ってドアを開けるとカウンター越しに何か作ってるゴドさんがいた。


「すいません、呼ばれたって聞いたんですけど」

「お、嬢ちゃんか!よかったぜちゃんと俺の紹介した服屋にいったみてぇでよ」

「安くて良いもの買えたのでこちらこそよかったです。それで何か伝えたい事ってなんでしょう?」

「それなんだけどな…わるい!四日で仕上げるって言ったがもう二日ほしい!思ったより小さいのが難しくてよ。金属も合わせちゃいるんだが嬢ちゃんの言う丈夫ってなると小さい分脆いというか。ちょっとぶ厚めな、最初に買おうとしてくれたブーツより重くなりそうなんだけど。それじゃだめか?」


 なるほど?製作時間が思ったより長引きそうなのは全然かまわないのだけど。見た目がぶ厚くというのがイメージしづらい、というかちゃんと要望通りに作ろうとしてくれてることはむしろ嬉しい。

 重いのはどうだろう?私は軽い装備より重い方が安定するらしいからそれも嬉しい誤算な気がする。


「いいですよ、というかむしろお願いします。重い方が私の理想の品って感じです」

「まじかよ!良客だなぁ!仕上がりは保証するけど悪いがもう四日くれ。すまんな!」


 私としては物づくり出来ないから大変さは分からないが。職にしてる人が難しいって言ってるんだから事実難しいんだろう。

 用件はもう終わりかな?と思ってミーミちゃんの所に戻ろうと思ったら、カウンターの上に端切れを丸めた物を置いていた。


「これ、詫びになるかはわかんねぇが物入りなんだろ?良かったら持っていってくれ」

「ありがとうございます?余り物なのかもしれませんがもらっていいんです?」

「端切れは俺が紹介したところに譲るくらいだし、その店も贔屓にしてもらったってんなら構わねぇだろ。ただブーツ作る際にできた革の端切れも交じってるから靴下の代わりにはならないかもしれんが」


 使い道は色々あるだろうし。革の端切れもナップサックの補強とかには使えるかもしれないからもらっておこう。古着屋さんにナップサック丈夫にしてもらおうかな?

 色々サービスしてもらえて、日数はかかるだろうが仕上がりが良いものになる報告は嬉しいのでテンションが上がった状態でミーミちゃんの所に向かうとミーミちゃんが起きていて私に抱き着いてきた。


「リアラちゃん本当にきてくれた!」

「約束しましたからね。おはようございます」

「今日はまっくろなんだね!」


 やっぱり女の子は服装を気にするものなのだろうかと思いつつミーミちゃんが黒いワンピースでも嬉しそうにしてるのは私も嬉しい。


「ミーミ、あんまりはしゃいで迷惑かけたらだめよ?」

「はーい!」

「リアラちゃん、今日は娘がお世話になります」

「いえいえ。こちらこそ気分転換と言いますか、楽しみにしてたので大丈夫ですよ」


 おばさんとやりとりをしてるとミーミちゃんが「はやく!はやく!」と急かしてくるので。おばさんには軽く頭を下げておいて、おばさんも笑顔で手を振ってくれる


 どこにいくのだろうと思いながら手を引かれるままに進むのだけど、中央に向かって進むので人込みではぐれないように注意しなければと少し気を引き締める


「ミーミちゃんは行きたいところあるんですか?」

「昨日ね!お兄ちゃんが今日はぎんゆうしじん?が来るって言ってたからそこに行くの!」

「ミーミちゃん兄弟いたんですか?」

「ん?お兄ちゃんは兄弟じゃないよ!フォルお兄ちゃんていうお友達なの!」


 それはむしろフォルお兄ちゃんとやら的にはミーミちゃんと一緒に遊ぶ口実を作ろうとしてたのではと思ったけど。まぁ、誘いたかったなら3人になってるはずだろうし、ただ小耳に挟んだだけかもしれない。

 私は場所を知らないし、そのまま連れて行かれるように手をつないで進んでると中央から南通りに進み始める。行くことは無いと思ってたがまさかこんな形で来ることになるとは高級通り…まさかだけど拝聴料金とか取られたりはしないだろうか?

 私の想像する吟遊詩人と言えば路上ライブ的な感じでチップをもらって稼ぐような人だと思うんだけど。


 どこかお店に入るか少しびくびくしつつ進んでいくと、ちょうど準備をしているのか楽器を鳴らして、調律?みたいなことをしている人がいる。

 その周りには少しだが人もいて。たくさん人がいるってわけでもないし、それにチップ用の丸い筒状の物を置いてるのも確認できたので多分だが私の想像してる路上ライブみたいなもので合ってると思う。

 まぁとはいえ、何も払わないよりはあれなので、歌い終わったらミーミちゃんに銅貨2枚くらい握らせてお金を払おうと思った。


 しばらくすると調律が終わったのか、軽い歌…詩を唄う。


 -とある村に生まれた少年は暇な農作業をただ繰り返す日々。そこで生まれたことに何も疑問を抱かずただ慢性と過ごす日々を当たり前と思っていた少年。だが村に突如現れた魔物に蹂躙され少年の当たり前の日常は壊れた。

 少年は復讐を願うかと思いきや、自分が今まで住んでいた世界が狭かったことを知った。山を越え異種族を知り。砂の地を超え他国を知り。海を越え世界はより広いことを知った。

 ただ少年はそれを不幸に思った。自分と同じように狭い世界に閉じ込められた人々を憂い、この世界がどれだけ素晴らしいのかを伝えたかった。

 闇の鳥籠に閉じ込められた人々を救いたいと願った。そして少年はダンジョンと出会った。

 ダンジョンには多くの魔物が現れて、そのダンジョンから溢れ出る魔物たちは村を襲った。町を襲った。その光景を目にした少年はダンジョンこそが鳥籠を壊すために必要なのだと気づき、ダンジョンを作り上げてみせた。そのダンジョンは多くの人々を不幸にすると共に多くの人々の暮らしの支えとなる。

 ダンジョンがもたらす恩恵を手にした人々はダンジョンに依存し、少年の思惑とは違い、ダンジョンと言う名の鳥籠に収まっていく人々を見て絶望した。

 どうすればよいのだろう。そう考えた少年は作るのではなく、自分そのものがダンジョンになればいいのだと思いダンジョンへと生まれ変わった。そのダンジョンは常に人々を襲い脅威となり、不幸のみをもたらす悪魔のダンジョンとして多くの人々はダンジョンを畏怖し遠ざかったという――


 なんで人間がダンジョンになれたのだろう?と思う内容だった。

 魔石が溜まったから魔人になってそこからダンジョンに進化した?いや吟遊詩人の話が全部真実だとは思わないが、この話の流れからするとダンジョンは怖いものだから危険に突っ込んじゃいけないよという教訓なのかもしれない。


 ミーミちゃんは私の方をみて服をぎゅっと掴んで怖がっているし、子供やダンジョンの恩恵を受けてるこの都市にとっては危険もあるんだよと言う良い意味もあるだろう。

 ただその恩恵をまさに受けていて都市にそれこそ依存してる人、故郷愛もあるのだろう人からは受けが悪く罵声も交じってた。


「リアラちゃんも冒険者なんだよね?ダンジョンこわくないの?」

「怖いですよ?だから私はとても良い唄を聞けたと思いました。誘ってくれてありがとうございますね」


 首を振って「いっちゃ嫌だ」と言い出されて、少し困ったがこういう時は強がって見せるのが良いと思いミーミちゃんの頭を撫でてあげて。


「私はダンジョンから怖いものが出ないようにするために行くんです。ミーミちゃんのことを守りたいですから」

「リアラちゃんはいなくならない?」

「いなくなったりしませんよ、私にはやることがたくさんありますからね」


 そう言って、吟遊詩人にチップをあげてほしく銅貨を2枚握らせて行かせると、子供がチップを払ったことで罵声を浴びせていた人も黙り吟遊詩人の人も笑顔で感謝していた。

 組合の受付をしていたときは吟遊詩人が唄のネタを欲しがって依頼を出してる人がいたけど、この話どこまで本当でどこから話を拡大させたのか気になるところはある。


 そもそも固有名詞が何一つない時点で少年がどういう存在だったのか謎のままだ。ダンジョン生誕秘話みたいなものだとしたら途中でダンジョンと出会ってたから矛盾だし、どこかのダンジョンに魔人とか潜んでるということだったりしないだろうか?


「リアラちゃん!怖かったけどリアラちゃんと一緒でよかった!」


 私もこんな催しどこから情報手に入れたのかフォルお兄ちゃんとやらに聞きたくなったので会うことがあったらいつか聞いてみようと思えたし、吟遊詩人も初めて聞いたので新鮮で楽しかった。


「ミーミちゃん、お腹すいてない?」

「んーすこし?」

「よかったらご飯一緒に食べよっか」

「いいの!?たべたい!」


 とはいえ私の知ってるところは人が多かった現代料理店くらいしかないのだが。私がお腹すいてたから安易な提案したけど、おばさんの晩御飯食べれなくなったらちょっと申し訳ないなとおもいつつ。

 せっかくなので中途半端な時間ではあるが二人で食べれるもの、ピザっぽいものでも頼もうかなとミーミちゃんの手をつないで歩く。


 食事処に着くと今日も混んでるようでウェイトレスさんに空いてるところを聞いて教えてもらったところに座るとミーミちゃんがソワソワしていた。


「どんなの食べたいですか?」

「えー?んー?おいしいの!」

「すいませーん、丸い平べったいパンみたいなやつお願いします」


 ウェイトレスさんに声をかけると「ピザですね!銅貨50枚になります!」と言われ、支払いつつ出来上がるまで時間がかかるだろうし二人でお話する。


「こういうお店くるのミーミちゃんは初めてですか?」

「うん。ここって高いから食べに行く時はもっと違うお店だよ」


 ここは高いのか。まぁ、宿で提供されるもの美味しいのに銅貨10枚だし三倍と考えたら高いのかな。

 結構繁盛してるしここ以外だとどれくらいの値段なのか逆に知らないけど、それなら他のお店も行ってみたいな。ただ私が他の店行くくらいならやっぱり宿飯でなんとかなるしなぁと悩む。


「ミーミちゃんは普段願ってることとかありますか?」

「ねがいごと?」

「強く…はないとして、そうですね…」


 自分で聞いておいてミーミちゃんが何か強く望んでそうなことが思いつかない。

 というか村人は作物を育てることとか村を発展することを願ってるとしても都市の人達はどうだろう?商売繁盛とか?ミーミちゃんがそれを思うかは分からないが。


「もう叶ったよ!」

「え?それはなんでしょう?」

「お姫様に会いたかったの!そしたらリアラちゃんがきてくれた!」


 お姫様ではないのだが、嬉しい気持ちはあるとして。それを叶うには私は偶然立ち寄っただけに過ぎない、何かに誘導されたわけでもないし。

 まぁ必ずしも願ってることが魔力がそれを補助してるとは限らない…か、私も無意識のような歩きたい走りたいというのを魔力が補填してくれてたと思うし。


「私がお姫様だったらダンジョンは王城ですかね」

「魔物が兵隊なの?」

「冗談ですよ。ただ魔物が兵隊だったらさぞ強いでしょうね。魔王とかがいたら大変です」


 この場合はダンジョンが魔王となるのだろうけどね。さすがに指揮まではしてないだろうと思いたい。

 ピザも届きチーズではないチーズもどきを食べてこんな現代料理を寄せて作って名前まで同じってことはどこかに私と似たような人がいるんだろうと思う。それが私と同じように気づいたら子供になってるのか大人だったのかはさておいて。


「おいひい!なにこれ!」

「火傷しないようにきをつけてくださいね」


 そのあとはミーミちゃんがフォルお兄ちゃんに自慢するだの、どんどん新しい名前を挙げて行くからさすがに覚えきれなかったけど。それくらい美味しいと喜んでくれた。

 水を飲んで。ミーミちゃんも食べ終わって少し時間も経っているし頃合いと思って外へ出ることにした。


「リアラちゃん!次はいつあそべるかな!」

「次ですか…」


 明日はダンジョンの下見に行って、ブーツの製作が四日と考えると宿も延長したいところではあるけど手持ちが真面目に何かあった時のことを考えるとあまり使いたくないのでバイトとかも挟みたい。

 いっそブーツはなくても下見を超えて進んでみるか?そうすればバイトとダンジョンどっちが儲かるのか目安も付くし私としては金銭が増えたら今度は鎧か太ももの防具。いや攻撃を考えると足技をもう少し増やした方がいいから膝当てみたいなものがいいかもしれないし肘もいいな。

 試しに想像してみたらフルアーマーの私が思い浮かんで、最終的に金属で覆うしか私の要望は叶いそうにないなって思い笑ってしまう。


「あさって!またあさっては?」

「んー…四日後というのはどうでしょう?」

「四日…!がんばる!」


 待つのを頑張るということかな?そこまで頑張るものでもないと思うんだけど。それとも今日寝坊したからもっと遊べるように早起きするってことかな?

 どちらかと言えば私の方が頑張らないといけない。

 ミーミちゃんを家まで送るとおばさんに感謝されつつ、四日後また遊ぶという話をして。また感謝されてとなったので、終わりそうにないしと思い宿に戻ることを伝えて古着屋を後にする。


 色々済ませて馬屋に戻ると再度魔導についてあれこれ考えるが同じようなことを考えてることに途中で気づいて実際に試すくらいしかこれ以上の進歩はみられないかもしれない。

 紳士さんからの食事なども済ませて、宿はとりあえず延長はしないでおいておこうダンジョンに行くのならどうなるか分からないし。


 ふと思ったことだけど、筋肉痛って一日で治るものだったかなと右腕をさすると、自分の身体は治りがもしかしたら早いのかもしれないと思い。それなら肉を抉ったら?それも私の魔力で治せるのだろうか?

 試すにしても治癒ポーションを手に入れないと試せないし、いざ使って治せなかったら嫌だからすることはないのだけど金貨を支払ってまで手に入れる高級ポーションの実体験みたいな情報が欲しい。


 予定よりは早まったけど、ダンジョンの1階層には行こう。そう決心して、明日に使えるものを確認して眠ろうと思ったけど。眠れなかったので風起こしの素振りをして再度藁に寝転がりようやく眠れる。

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