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二十五話 走って走る

 私がアーライナに行くことを決めたら、色々と元からダズさんは私がそこに行くことを考えてくれてたのかスライムラディッシュを干した食べ物とかちゃんとした水筒を渡されたり、至れり尽くせりでありがたいのだけど。

 興味本位と言ってたくらいで苦手意識があったダズさんがここまで気にかけてくれていたことの申し訳なさが際立って何度も感謝すると。


「さすがにうざいっす」


 本音を直球で言う性格っぽいし、本当にうざいと思われてたのだろう、とはいえそれでも感謝する。


「私ほかの皆にも旅立つこと伝えてきますね!」

「いらねぇっすよ、元々冒険者がずっと滞在してる方がおかしいっす」


 さっきまでの話を聞くと実際その通りなんだけど散々お世話になったし。なんなら辻斬りならぬ辻稽古を受けさせてもらった恩があるので、せめて主にお世話になった人達に挨拶をしたいと言うと寝てるやつもいるからそれも邪魔になるだけっすと言われて、大人しく引くべきか悩んだが。


「リアラちゃんは律儀じゃのぅ、だからこそ狂うておるんじゃろうが。もう少し冒険者らしくしたらどうじゃ?永遠の別れではなかろう?」


 そう言われてそういうものかとも思って、二人に代わりに感謝していたことを伝えてもらえるようにお願いしておく。


「みなさんに本当にありがとうございましたって!お世話になりました!」

「ちゃんと隊長が伝えるんで大丈夫っすよ…」


 うんざりした様子で言われて。その後オンボルドさんとまた「お主が伝えろ」と「どうせ暇っすよね」というやりとりを聞きながら名残惜しい気分を抑えて、最初に来てからほとんど使ってなかった仮家に戻ってナップサックを回収してもらったお金や食料などを詰め込むとこれで大丈夫。


 思えばこの町に来てから兵の人ばかりと関わってきたけど、町の中だと愛着がどうにも湧かないが、町の南に危険がないのか誰も見張っていない出口へ向かって外から見れば感傷的な気分になる。


 はたしてこの町を何回走り回っただろうか。うん、それに走り回って…あれ?思い出そんなにないかもしれない。

 どちらかと言えばゲイジーさんやダズさん、ジラフさんにジェナさんとの思い出の方が多い。あとついでにレンドさん。


 せめて西にいる見張りに声をかけるくらいはしてもよかったんじゃないかなと思ったけど、ダズさんに散々しつこそうにされたし、それこそ永遠の別れではないのだ。強くなって魔物の行方を再度確認しに行く時。


 そして、私が最初に出会った英雄の行方も気になるからいずれ戻ってくると誓い、南東にある山に向かって走る。



 そして転んだ。



 体が軽くなってることを忘れた最初とは違って上手く踏ん張るようにしつつ、少しは足腰が鍛えられた?のか、鎧が無くなった分風を体に感じて気持ち良く走って山に向かって昼夜関係なく走るのだが。一応街道っぽいところを進んでるはずなのだけど、その先は木々が生い茂っていて、街道も途中で途切れ途切れな人が行き来した痕跡が少なく自然に飲まれた道っぽいところを進むようになっていった。


 山に近づけばもちろん木がその分邪魔で全速力とは行かず速度が落ちるのだが。それ以上にホーンラビットなど見かけたり、猪を見つけた時は肉!?と思ったが刃物を持ってないことに気づいて、それ以上に火起こしの道具を持ってない。


 ダズさんに余ってるもの無いか聞いておけばよかったと思ったが、ダズさんからしたら私がそもそも止まって休憩することを想定してなかったのかもしれない。


 ちなみに走ってる最中に食べたスライムラディッシュの干したやつを食べてみたけど、なんだろう?最初は乾いてる食感が来て、次に来たのはねばねばで、独特すぎる味わい。

 美味しいとは思えないが、何も食べないよりはマシだろうと食べるには食べるけど木の実とか果物とか生えてないかなと木を見てみるがそんなに都合よくは見つからないなぁとただ流れる風景を走る。


 もう道と呼ぶには怪しいので純粋に坂を上るように山を進むのだけど、走りづらいし、獣が住んでるってことは休むわけにはいかないし。


 身体が疲れないとはいえ存外に神経を使って移動に集中する。


 そういえば急に山を登ると登山病になるんじゃないかと不安になるけど、あれって標高どのあたりでなるのかな?気分悪くなったら下りようとは思いつつ進んだ時。果実っぽいものを実ってる木を発見した!


「あれは、明らかに紫の見た目をしていて毒々しいに間違いない。しかし果物!」


 私の気分は最高に上がっていて、果物と言うものを見つけたことに喜んだけど、そもそも私木登りできなかった…。


 どうにか取れないかなと近くに小石はないかなと探してみるけど、小石は無い。


 ナップサックにある投げれそうなものは水筒とかお金くらいだけど投げるわけにもいかないし試しに蹴ってみてもちょっとしなってくれたけど、果実は落ちない。


 取っても見た目からして毒かもしれないから食べないし、もったいないけどここは移動を優先するかぁと、やっぱり欲しいなぁって…。


 いっそ殴るか!と思い、私の一歩を踏み込み籠手で殴りつけるとメキメキと音を立てる。もう少し殴ればいけるかなと20発くらいだろうか、ようやく木が倒れてくれて、念願の紫果実を手に入れた!


 ナップサックに詰めれるだけ詰めて喜びつつ山へまた登る。



 木々があっても昼夜は明るさで分かるのだけど。山の麓まで3日くらい費やして、登ってる最中の段階で2日くらい経ってることを考えると。山越えするまで町などが無いことを考えると明らかに水か食料が尽きる。


 現地調達することを目途に考えてくれてたのかなと思ってナップサックに詰めた果実を思うのだが、この見た目で本当に食べれるのか分からない。

 私の身体が燃費が良いからなんとかなってるけど、普通の冒険者だともっと食料とかなかったら駄目なのでは?


 ちょっとダズさんとオンボルドさんが私を過大評価しすぎて急にサバイバル生活を求められてる気がしてならない。


 サバイバル知識なにかあったっけかな?考えるのはたしか食べていいものかどうかは何かして時間をかければ分かるくらいの知識なのだけど、その肝心の何をするのかが前世の記憶を思い出しても思い出せない。


 そもそも私はサバイバル生活を前世でもしたことないし、勉強してなかったかつての自分を悔いる…悔いるといってもまさかこんな生活するなんて思ってもみないから過去に戻っても勉強しないんだろうけど。


 それに一応走ってるとは言っても、小走りくらいの速度だ。自然豊かだからなのか地面がしっかりしてる方とは言え斜面を走るというのはどうにも勝手が違って走りにくい。


 ようやく山頂かなと言うくらいに登ったら景観を見ようにも木が邪魔だったので殴って少し伐採しようかなと思って殴ってるとリスっぽい生き物が逃げたりしてた。

 1本2本殴り倒してみるが。それでもそんな高い山と言うわけではないし、なだらかなでかい山からなのかここら一帯殴り伐採しないと景観は見えないかもしれない。


 仕方ない、ここは腹をくくって木登りしようと比較的高そうな木を選んでしがみついてみる。うーん…。


 四苦八苦しながら試してみるけど、すこーしずつ、ゆっくりとなら登れるかな。

 ほぼ力技で強く腕で抱きしめるようにして下半身を持ち上げて今度は逆に下半身を抱きしめて上半身のバランスを崩しそうになるが腹筋でなんとかなれ!と登り木の枝に足を伸ばし立ってみる。


 高いところはちょっと怖いが、枝先の方に行くとやっと景観が見れて山の向こう側を見れた。



 それは何と言っていいんだろうか森があり、遠くの方に村っぽいところが見える。


 村っぽいというのは、本当にっぽいだけでボロ家だし。それも3軒くらいしかないのだ。

 1軒は屋根が朽ちてるのか壊れてるのか無いし、誰かが住んでそうとは思えないような村っぽいもの。


 思ってたところとは違うけど、とにかく森を抜けた方がいいかなと山を下ろうと木から降りるときも四苦八苦しながら気を持ち直してナップサックを背負うと登りよりも転びそうになるのを気を付けて走って行く。


 その際に見つけてしまったゴブリン。


 ゴブリン。どういう暮らしをしてるのか甚だ疑問なゴブリン。どんな生態系でここにいるのかは分からないが魔物である以上見かけたら殺すべきだろう。


 獣を見つけても逃げれるように私は走っていたから。そんな速度でゴブリンの前へ急に現れた私に対して驚いて警戒してるが、私もどう倒そうか考える。首を狙うにしてもいきなり首を的確に殴れるだろうかという不安もありつつ、されどかつて見た襲撃して来たゴブリンとは違って今回の相手は素手。


 それならお互いにリーチの差はなく近づけば首を狙わずとも胴体に拳をぶつけることも容易いだろう。


 一歩踏み込もうとした時。


「コワイ、チカヨルナ」


 そう、そう喋っている。喋っているんだ。だけど私は今まで間接的ではあるがゴブリンを殺しているしなによりゴブリンの方から襲ってきたわけで。


 違う。私は何を考えてるんだ。相手は魔物だ。そもそも喋ったからと言って私は喋れたかもしれないゴブリンを倒してたし。いやそうではなくて。


 私の思考が滅裂になってると逃げようとするゴブリンが見えて、それはあまりに無防備で無意識に私は一歩を踏み込み背中を殴る。


「イタイ!タスケテ!タスケテ!」


 魔物を殺すことがこんなに。いや、私に通じる言語で喋られることがこんなに困惑するなんて思ってもみなかった。

 それでも私はやらなくちゃいけないんだ。魔物に情があって見逃したなんて英雄に顔向けできなくなってしまうから。


 叫んで暴れるゴブリンの首を狙おうとするが暴れて狙いが定まらないので左手で頭を押さえつけ首に向かって何度も何度も殴りつける。


 悲鳴を上げる声が聞こえたが。とにかく殺さなければならない、そう思って何度も殴りつけると首がようやくちぎれて安心する。


「はぁ…」


 どこで言葉を覚えたのか分からないが、喋るということは私たちが何か喋れば相手に伝わるわけで、厄介なゴブリンを倒しただけだ私は。


 それに生き物とは言っても魔石を蓄えたやつは強暴になって危ないし、私は別に人を殺したわけじゃないはずで、ホーンラビットだって喋れていたら助けてって言ってたはずだ。


 誰に言い訳してるんだろう?と冷静になって思うが、冷静になるとゴブリンてそう言えば魔石持ってるんだよなぁって。

 倒した獲物をこのまま捨て置いても良いがお金はたくさんもらったにしても1銅貨でも無いよりはマシなはずだし探さなきゃ。


 探すってどうやるんだろうか。頭の中?体の中?


「喋ったってこいつらは私の大事な人達を…」


 落ち着こう。深呼吸をすると血の臭いがして、今更だけどゴブリンも血が赤いんだなって思いつつ。解体するにしても刃物がないし、心臓のあたりを潰して見つからなかったら諦めようと思い殴って体を削るように捌いていく。


 内臓は…あまり考えたくはないが人間とそんなに変わらないんじゃないかなって。


 心臓らしきところにも特に無いし諦めようと思ったところで内臓を動かしていたところで籠手がカチっと固いものに当たった気がして掴んでみると石だ。


 これが魔石?鈍い黒色の小指サイズの石が心臓近くにあったことにげんなりするが、あるはずのない石があったことで、これは魔物と思える。


 どうせなら喋らないでほしかった、そしたらもう少し経験を積んで喋られても困惑はしなかっただろうし…。


「はぁぁぁぁぁぁ!」


 思いっきりため息をして考えてたことすべて消し飛ばす。

 何を考えても私は魔物を倒していたし、危険を排除出来てよかった!これで良い。


 気を取り直して血で汚れた籠手と服だけど。服は仕方ないがこのまま着ていくとして、病気は怖いが口には入れてないし大丈夫だと信じて。

 籠手の方は外して、ナップサックに入れてたシャツを使って拭おうと思ったが、今の服も汚れているんだしこのまま同じ服で拭ってしまおうと綺麗にする。


 武具のメンテナンスについてとかもっと他に聞けること聞けばよかったなって思い、ここまで来たものは仕方ない。、私は強くなるって急いでばかりで別のことを疎かにしすぎてることを反省してアーライナに着いたら武器屋で手入れを頼もう。大事な籠手なのだから。ん?籠手だから防具屋かな?


 落ち着いたのでナップサックを背負い、村っぽいところに走る。


 あのゴブリンのことを思うが。もしかしたら村を開拓してる最中にこのゴブリンの味方が襲ったのかもしれないし、まだゴブリンが潜んでいるかもしれないと移動するにしても生き物とすれ違う時は注意して進もう。


 鹿っぽい生き物に。ホーンラビットに。とすれ違いつつ走ってると、とある木を避けて走ろうと思った時に一瞬この木が動いた気がして驚き止まって後ろに下がる。


 見間違い…?


 木が動いた気がしたけど。地面を見ると別に普通の地面だし、木の後ろでなにかぶつかって揺れたのかなと後ろを覗いてみるが特に何もいない。


「はぁ…」


 まだゴブリンの件を引きずっていて見間違えたのかもしれないので気にせず、走って進み、ようやく森を抜ける。


 ちょっと位置がずれていたが離れた場所に村っぽいところを見つけれたので良しとして、一応誰かいないか行ってみる。


 周りは柵がされてるわけでもないし、家の中を見ても家具とかそんなに無くて。開拓しようと思ったけど途中で放棄されたのかな?みたいな感じだ。


 あまり詳しいことは分からないから何とも言えないが、壊れた家だとしてもこんなに生活感がないならかなり前に放棄されたのだろう。


 斜めにジグザグは進んでないけど、この廃村があることなども聞いてないし。南東側の道中に村があるとは聞かされていなかったし。せっかく平野に出たのだから思いっきり走れるから木を気にしなく思いっきり走れると思うと気分が楽だ。


「アーライナどんなとこだろう?」


 そう思い空を見上げ方角を確認して南東に向けて走り。食料が無くなって数日。採ってからまだ『新鮮だよ?』と言ってそうな紫果実を見ながら、明日。明日アーライナにたどり着かなかったら食べようと思ってると。


「…でっか」


 南東に真っすぐ進んでると思っていたがずれていたのか、それでも大きなずれではないが、頑強な外壁に守られた都市アーライナに着くことが出来た。

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