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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

ホラァ

かえろう

作者: 雪麻呂
掲載日:2023/07/03






 よぉ、久し振りじゃん。

 こんなとこで会うのも何かの縁ってな。一緒に帰ろうぜ。

 暑くなったよなぁ。もう梅雨って明けたんだっけ? え、まだ?

 まぁいーや。今度飲み行くべ。駅前のビアガーデン。今年はやるってよ。

 ……そういやさ。

 変なこと思い出したわ。

 こないだ、会社の帰りにさ。同僚に声かけられたのよ。

 一緒に帰らないかって。

 別に断る理由もないし、承諾したんだよな。

 で、適当に喋りながら歩いて、コンビニの前まで来たときさ。

 ちょうど女が出てきたんだ。

 そいつも言うんだよ。

 一緒に帰りませんか?

 知らない奴だった。

 けど、同僚はニコニコしてるし。

 彼の知り合いかなぁと思って、俺も頷いた。

 ま、俺としても女の子が増えるなら大歓迎よ。

 連絡先とか交換できねーかなーなんて思いながら、歩いててさ。

 交差点で信号待ちしてるときだよ。

 後ろに立ってた奴に肩叩かれてさ。

 振り返ったら、妙に懐かしい顔が笑ってんの。

 一緒に帰ろうぜ。

 あぁ奇遇じゃん。こんなところで会うもんなんだって。

 そいつ入れて、青信号は四人で渡った。

 そっからは割とスムーズだったわ。

 路地裏から、公衆便所から、マンホールから、自販機の取り出し口から。

 湧いて出ちゃあ、決まって言うんだ。

 一緒に帰ろう。一緒に帰ろう。一緒にかえろう。

 駅に着く頃には、俺を入れて七人の大所帯になってた。

 運が良いよな。こんな簡単にそろうんだから。

 さぁ、かえろう。

 誰が言ったか、もう憶えてないけど。

 まず俺の右足を捥ぎ取ったのは、同僚だったよ。

 太腿を掴まれて、力尽くで捻じ切る感じさ。

 ヒョロガリ眼鏡なあいつの、どこにあんな力があったんだろうな。

 ぶち、ぶち。皮膚が破れて、肉が裂けて、骨が折れて。

 そりゃもちろん、痛いのなんのって。

 全力で抵抗したけど、凄い力なんだよ。敵いやしない。

 ぶっ倒れて、ゲロ吐きながら喚いて、のたうち回って。

 助け呼ぶとかマジ無理。パニクってぜんっぜん脳ミソ動かねーの。

 そこを女がさ。左足を同じようにして、ごきっ。

 交差点の奴が右腕を。めり。

 次の奴が左腕を。ぎち。

 どんどんさぁ、奪っていくんだよ。

 俺の手、足。俺の身体。

 やっとかえれる。これでかえれる。

 俺の絶叫の合間に、奴らの嬉しそうな声が聞こえた。

 帰れる……代えれる……替えれる?

 わかんねー。今更どうでもいいわな。

 残った二人が、俺の胴体を引っ張り合い始めた。

 ぷちぷち、めり、みし。みしみしぴり、べりっ。

 千切れたわ俺。見事に真っ二つ。

 そいつら? 上半身と下半身持って、どっか行っちまったよ。

 気付いたら、みんな消えてた。

 誰もいなかった。

 駅の構内に、俺ひとり。

 それで、こう、首だけが残ったって、わけ。






 語り終えた友人の首が、ごろり。アスファルトに転がった。

 反射的に飛び退り、おい、と声を掛けた。

 彼は応えない。応えられるはずがない。生首なんだ。白く濁った眼は左右別々の方向を向いて、もう何処も見ていない。

 ぽかんと開いた口そのから、冗談のような血が溢れ出て、俺の靴を赤く汚す。

 そんな馬鹿な。

 だって、此処まで一緒に歩いてきたんだ。ずっと喋っていたのに。

 一緒に?

 歩いて? 本当に?

 身体はあったか? いつまで? いや、いつから?

 いつから首だけだったんだ?

 頭の奥が、じんわりと冷たい。嫌な汗が背中を伝う。おかしい。おかしい。こんなのはおかしい。呪文めいて繰り返す唇が、震える。景色がぐるぐる回り始めた。

 ふと気付くと、辺りに誰もいなかった。

 先程まで行き交っていた人々、雑踏、アナウンス。すべてが消えていた。

 駅の構内に、俺ひとり。

 ――後ろから、声が聞こえた。


“一緒に、かえらないか?”









かえろう/了







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― 新着の感想 ―
[良い点] 素晴らしい疾走感とキレ味! 文字数の少なさを逆に武器にして、勢いのあるホラーに仕上がっています。主客が逆転する構成も鮮やかでした。 [一言] かるーい口調の一人称記述でしたが、同行者がワラ…
[良い点] 漫画にした方が映えるようなシュールなお話ですよね。怪談なのに夢のような世界を構築していて、怖いというより奇麗と思ってしまいました。
[良い点] かえろう、帰ろう、返ろう、還ろう、変えろう、替えろう、代えろう… [気になる点] ヒチニンミサキみたいですね、ちょうど7人?だし。 あっちの理不尽さはどうしようもないけど、こっちは「用事あ…
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