〜きっと経験したかもしれない。そんな物語〜
ご覧になられた方々へ。
この度は『あさひな〜きっと経験したかもしれない。そんな物語〜』をお読み頂きありがとう御座います。当方、小説なんてものは、高校時代に遊びで書いたぐらいしか無いもので、小説愛好の方からすれば稚拙な駄文に見えるかもしれませんが、どなたでも気軽に読んで頂ければ、これ幸いかなと思う今日このごろで御座います。
不定期では御座いますが、これから少しずつ執筆していきますので、温かく見守って頂ければと思いますので、どうぞ、今後ともよろしくお願い致します。
はじまり
朝露が陽光を浴びてキラキラと輝く。草木が風に揺られてカサカサと葉音を立てる。朝はまだ肌寒い。自転車を漕ぐたびにカチャカチャとギアがチェーンを噛む音が、いつもより少し大きく感じる。風を切る音が耳元を掠める。
(まだ少し寒いな)
見慣れた田んぼ道。いつもの風景。しかし、一つだけ違うことは、高校という新たな学び舎に向かっているということだった。ただそれだけで、朝露の輝きも、澄んで冷えた空気も、いつも乗っている自転車のタイヤが田んぼ道の土を踏んでガタガタと揺れていることも、すべてが新鮮に感じる。陽子の心臓は少し跳ねていた。自転車を漕いでいるからだけではない。友達は出来るか。勉強はついていけるか。部活は。出来れば恋なんてしてみたい。不安と緊張。そして期待が、陽子の胸を高鳴らせていたのだ。
(あと少し)
もう5分もすれば学校の正門に着く。気づけば、先ほどまで田んぼ道だったのが舗装され、反対側にも歩道がある。戸建ての住宅も並んでいて、個人商店であろう店が1軒か2軒あった。ただ決して都心というわけではない。住宅が並んでいるだけでショップセンターがあるわけでも、ましてや高層ビルがあるわけでもないから田舎なのは変わりない。
陽子は、高校の制服を気に入っていた。真新しいセーラー服。白を基調とした上着。スカートとセーラーの襟の縁取りの色は古代紫に染められている。紺色とはまた少し違う落ち着いた雰囲気が漂う。
(あ、同じ制服)
ふと、反対の歩道に目をやる。陽子と同じ学校の制服を着た少女が歩いていた。腰まで伸ばした少女の髪は、陽子には透き通った金色のように輝いて見えた。
(綺麗な髪だな・・・)
陽子の髪は、少女ほどではないが背中ほどの長さがあり、そして黒かった。染めたことなど一度もなかった。