第二幕 タロット 女帝とヴァンパイア
「疼くわ!吸血鬼にかまれた右腕の傷が!」
見目麗しのお嬢様とよべる愛里は中二病という病気を患っていた。残念すぐる。
いやまてよ噛まれたってことは感染しているわけだよな、どうして人のようにふるまっていられるんだ?若干血色が悪いのはそのせいか?
あまりかかわらないほうがよろしいのだろうが、素人童貞をこじらせている俺にとってはこんなチャンス逃すわけにはいかない。
「みせてみな・・・これわ・・・!」
痣になっている部分が蛇のようにうごめいていた、それは〇ののけ姫にでてくるアスタカの腕のようだった。
「ちょっとみないでよ」
「穢れた血め!」
「ひどいっ!黙れすぐるっ」
〇リーポッターであったやりとりをやってみたかったんだ。マルフォイ好きだからね。
「このエーテルあげるよ。のんでみて」
親の金でかった10本で1000円するエーテルをあげた。こいつぁなんでもなおる万能薬として使える代物だ。
「あやしい薬じゃないでしょうね。みたことないわよこんな色のエーテル」
真っ赤なエーテルは極上の証。課金でしかかえない親の血ともいえるソレでかったエーテルだ。
いやらしいもとい艶やかに瓶のふちをつつむ唇をみてそそるなにかを感じた。ドエムにはたまらん仕草だった。
エーテルをのんだがなにもおこらなかった。どうしてだ?何でもなおる設定のはずが・・・。
「なんでなおらないんだ!?」
「ククク・・・その雌はわらわの眷属となったのじゃ」
「なにやつっ!」
「カカカ!わらわはヴァンパイアの始祖にして始まりの女帝とよばれたアノ!大偉人ならぬヴァンパイア、エーデ・ハイトである!」
どこからともなく現れた影はそういって高くのびたマントのエリをひるめかせた。
「ヴァンパイア!?そんなのいるはずないでしょっ!ゾンビワールドだよ!?グールとゾンビってかぶりにも程があるでしょう!」
「ククク・・・なんじゃ小僧っこわらわがそんなに珍しいのか?ういやつよのぅ」
「妙におっさんくせえな!ヴァンパイアプレイにはまったネカマか!」
「ネカマとはなんじゃ?」
「ネットおかまの略だよ!」
「意味がわからんのじゃ。ネット?網か?」
そうか、こっちの世界にはネットがないのか。
「あんた!よくも噛んでくれたわね!しになさい!」
筒でなぐりつけると影マントは空に散って消えた。
「聖属性の筒!あの化け物にはよくきくはずよ・・・やったか・・・!?」
「その台詞はいっちゃだめなやつー!」
「カカカカ!このタロット・ザ・ナイツの女帝を司る私に牙をむくとはまっこと愛おしいのぅ」
影が集まり個体となる。その姿は漆黒の衣をまとい黒い髪に目をした八重歯の長い女が宙に浮いていた。
「なんだよその歯がゆいタロット・ザ・ナイツとかいう組織っぽい名前は!?」
「東京コンクリートジャングルをしきる組織の名前よ。タロットカードと同じ番号と名前で幹部が構成されていてそこに配下が大勢いるのよ」
「ヤムチャ並の説明ごくろうさまです愛里さん!」
「カーカッカカッカ!愉快!愉快!」
「我々をしらんものがまだここいらにいたとはのぅ・・・」
牙ががきらりと光りどす黒い目が虚空をみつめている。
「まぁよい。二人とも眷属にしてくれようと申しておるのだ、大人しくわらわの物となれ!」
「だが、断る」
「こんなセクシーな女性に物になれといわれて断らないであろうという考えに、あえて断ることが私の生きがいだ!」
「ちょっと気があうじゃない。私もごめんよこんなのの物になるだなんて」
ですよねぇ・・・といいたいが俺は実は配下に加わりたい。長いものには巻かれたいのだ。それに辛抱たまらんバディをしているからな。
僕にしてくれるだなんて我々の業界ではご褒美ですとしか言いようがないわけで。
「嘘です。僕にしてくださーーーーい!」
「お願いします!」
ネルトンのお願いしますのポーズで申し出ることにした。
「なんかやっぱ気持ち悪いからやめておくわぃのぅ」
「ヴァンパイアがえりごのみしとんじゃないぞわれゴルァ!」
「なんじゃ。どすがきいておってわしの膣にまでひびいてきたぞっ」
「ハアーーン、えろすぎるんですけどぉ!」
「なんじゃ主もなかなかわかるようじゃのぅ。僕にしてやってもよいぞ」
「馬鹿!しょうきにもどりなさい!あんたじゃなくなるのよ!喰種になるってことは!」
ぽこりと小突かれ正気に戻る。
「魅惑がきれたじゃと・・・」
魅惑の魔法をかけられていたようだ。そらそうだ俺のこのみは幼女でかつ女王様ロリ女王様なのだ。
こんなバインバインの色気ある女にはひとっつも興味が無いのだ。
「ほっほうそこをどいてくれんかの」
「なっなんですとーー!木がしゃべっとるぅぅう!」
「エルダーウッドね!危険度は低いけど気をつけなさい。敵対すると根っこで串刺しにされて栄養分にされるわよ」
「ほっほう。魅惑にかかっておったようじゃからフレグランスの魔法でといてあげたのじゃよワシが」
「なんか木のおじさんありがとう!」
「っち。木は嫌いじゃ。血がながれとらんのにしゃべりよるからのぅ」
「おじさんのこと悪くいうな!」
エルダーウッドは気にも止めていない様子で根をしならせながら木にはえた口と髭をもにゅもにゅとさせている。
「水をさされたの。興が削がれたわぃのぅ。でなおすとするまたのぅ素人童貞感のある男と美少女よ!」
「図星ですやんわいショック」
女帝のヴァンパイアは陰へと消えていった。
「木のおじさんありがとう!」
「ほほうよいんじゃ若いの。わしも仲間がゾンビ化してなげいておったところじゃ」
「木もゾンビ化すんのかよ!?」
「タロット・ザ・ナイツには気をつけろよ若いの・・・わしももう長くはないのじゃが、最後の忠告としてきいておくんじゃの」
「木のおじさあああああああああああああああああああああああんん!
木は高速で風化していくと朽ちて消えた。
「いい木だったわね」
「あぁ・・・忘れないぜこの恩」
女帝のヴァンパイアから難を逃れ、木に助けられた俺は愛里と共に夜明けをまった。