異変
異変
(なんで私…帰っちゃったの…私のばかばかばか!!!)
フローラは街に出てから酷く後悔した。
今は路地裏でしゃっくりを上げながら泣いている。
城に戻ろうか…いやでも、ルイスの部屋はすぐそこにある訳では無い。
色んな手続きなどしなければ入れないのだ…。
でも、いつもはニコと一緒に入ってるから、ほとんど顔パスでいける。
今回に限ってお兄ちゃんを置いて帰ってしまった。
「きゃー!!!」
「やめて!野菜を取らないでー!!!」
突然悲鳴が聞こえた。
路地裏から顔を出すと、ゴブリンが王都を襲撃している。
お店で売っている食材を道に撒き散らす者、女、子どもを無理やり引き連れようとする者、怯む人達を太い木の棒で殴る者…
「どうして…いつもは山にいるはずなのに…」
ティズモニア国のゴブリン達は、気荒な性格ではない。
山に住むリーファという心強い少女がゴブリン達を仕切っているのだ。
そいつらが今ここで王都をめちゃくちゃにしている…。
「どうしよう…」
私が強かったらアイツらを山に還すことが出来る。
でも…私は弱いから、そのまま怯えているだけだ。
「おいおいおい、可愛い子がいるぜぇ…グヒヒヒヒ…」
「俺の嫁にするか…娘にしてやるか…それとも…」
「ひっ…」
居場所がバレてしまった……。
私は、これからどうすればいいの…
頭の中で考える。
考えて考えて…
「お兄ちゃん助けて!!!お兄ちゃん!!!!」
声が枯れるまで叫んだ…喉が暑くなりそう。
「おい、うるせぇぞ!」
「こいつの口を塞げ!!!」
醜く太い手が伸び、フローラの口を塞ぐ
「んっ、うぅう…!!!」
ゴブリンはフローラを肩に担ぎ込み、王都を後にしていった…。