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魔族の始祖

本日は2話同時に公開しています。ご注意ください。

 海底火山の噴火や異常気象の続いた「嘆きの三か月」の最後の日。世界中に真白い花が降った。巨大でいい香りのする美しい花だった。それは見た目以上に軽く、でも大きいからそれなりに重く、これ以上積もったら新しい災害になるとみんなが恐れた頃。それは唐突に止んで、そしてしばらく後に発光しながら形を失った。そしてその光は世界中の傷を癒した。傷ついていた人が回復したのはもちろん、気候は安定し、削れた大地は再び隆起し、破壊されていた家々は復元され、波に攫われたはずの畑の作物も青々と蘇った……らしい。私は見ていないから人づてに聞いただけだけど。

 それが「嘆きの三か月」の最後の「祝福の日」の出来事。あまりに衝撃的な日になったので、その日に世界にいたすべての人の記憶に残っている。でも、その「祝福の日」に、新しい種族が生まれたことはほとんど知られていない。というか、意図して秘されている。


 魔族と名付けたその種族はドワーフくらい頑丈で、エルフくらい長く生きる。そして秘められた力を発揮するときには僅かに発光する。

「これってすごい反則な感じする」

「完全に新しい種族だな」

 そう。私たち、皆で人間やめました。


 あのとき、鏡の前で皆が輪になったときから私の若返りは止まったらしい。そして全員が微妙に光り出した。それからワイワイガヤガヤ確かめた結果、たっちゃんの不老不死は無効化されて、ちょっと傷の治りが良くて、ちょっと老化の遅い人くらいになってた。私も、分けてもらった命の質の問題なのか、同じ感じだ。そして、手をつないでいた全員が同じになった。しかも生命力を分かち合う魔法を身に着けていた。命の力を受け渡す。その瞬間に体が光る。

 このまま私たちは新しい種族として、じっくりじっくり年を重ねていくことになった。私はひ孫と同じ位の幼女からスタートなので、この先どれほど長い人生が待っているのか分からないけど、一緒に歩いてくれる人がいる。ほとんど二回目の人生もきっと楽しくなると思う。


 もともと『草壁』は子供と孫に譲っていたから、私は天寿を全うしたことにして表向きは一度死ぬことにした。たっちゃんは、「祝福の日」以降のお祭り騒ぎのどさくさにまぎれ、愛妻を失い旅に出たことになった。

 そしてしばらく後に集落をたっちゃんの親類が訪ねてくる。永遠の若者だったたっちゃんの面影を濃く残したその人は十代の娘を連れたお父さんで、親子仲睦まじい様子で一族の恩人の墓参りもした。


「清人、雄太郎、彰くん。ごめんね。そっちに行くの、ちょっと遅くなっちゃった。」

「清人、怒り狂ってそうだな」

「すぐに追いかけるって言ったじゃないかってね」

 本当にごめん。まさかこんなことになるとは思わなかったのよ。わざとじゃないの。一族まで道連れにしてごめん。清人の愛してくれた弟たちに会わせてあげられる日も遠くなっちゃった。あの世で会えたら謝りつくさなきゃな。

「でも、この姿を見たら笑ってるかもしれない。ていうか、笑われてる気がしてきた」

 たっちゃんったら、まだ「ヒヒ爺」発言の傷が癒えてないのかしら。繊細だなあ。

 今の私たちは実年齢の年の差と見た目年齢の年の差が一致するくらいになっちゃったから、大っぴらに夫婦を名乗ると異世界常識的に非常に問題がある。50歳と10歳の夫婦は許されない。命の受け渡しをすれば、調整できるのかもしれないけど検証できていない。実験に失敗して、今度こそ私が赤ちゃんになっちゃったらまずいってことで、お試しに参加するのを禁止されてるんだよね。今は、子どもたちが「俺達は老い先短いから」って実験を買って出てくれてる。私、彼らの親なんだから、老い先が一番短いのは私のはずなんだけどなあ。不可解。でも、不用意に死んだら「嘆きの三か月」が再来するなんて脅されたら強く出られない。女神が私の生存を確認した後で「祝福の日」を引き起こして強引にリセットしてたけど、聞いた話では本当に世界が滅びかけてたし。記念にって残された新しい列島を見せてもらったら、ものすごい立派な島々でひいたわ。あんな規模での世界の混乱をもう一度引き起こす勇気はない。

 そんなわけで私たちは事情を知らない人と接するときには父と娘として一緒に過ごすつもり。全然似ていないけど、まあ、いけるでしょ。私と清人が姉弟で通せたんだから。

 ね? 清人。お互いにおじさん、おばさんになってからは似てるって言われることもあったよね。あれ、すごく嬉しかったな。今の私は、出会ったころの清人に似てるかなあ? どう思う?


 集落の共同墓地はピクニックするにもちょうどいい長閑な場所で、やっと帰還の挨拶を済ませた私たちはご飯タイムに移る。そういえば墓地にお弁当を持ち込むって発想はここで養われたのかもしれない。日本では一人で食べたたっちゃんの好物詰め合わせを、今日は二人で食べられる幸せ。

 噛みしめて、うん。美味しいね。




 仲良し親子は、一年ほど集落に滞在し、全ての季節を余すところなく楽しんだ後でどことも知れぬ故郷へ去っていった。

 これからは魔王城に住んで城の運営と魔族の繁栄に力を尽くす。もう日の当たる道は歩けないかもしれないけど、お城のお庭で日向ぼっこはできるし、必要なときには神様たちがサポートしてくれる約束だから、心配いらない。そして、たっちゃんはやっぱり解放されなかった世界のフィクサーとしてのお仕事も続くらしい。

 魔族を生み出した魔王が世界平和のために奔走する異世界。始祖の純愛から生まれた魔族が世界平和に尽くす異世界。夢の叶う異世界は、これからも邪道の道を邁進していく。


これにて完結です。最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

感想などお寄せいただけると作者が舞い上がって喜びます。

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