ラジオの伝言
ちょっぴり。
死んだばあちゃんが、今わの際に私に言った。
「・・・チカちゃんや、今週のあんたのラジオ絶対聞くんやで」
苦しそうにしとるに、わざわざそんなこと言わんでも、そう思いながら私は大好きなばあちゃんの手をとる。
にっこりと笑うばあちゃん。
「ふふふ、ありがとね」
ばあちゃんは、その日に亡くなった。
やさしいばあちゃんの死に顔は、やっぱ、変わらずやさしいものだった。
数日、両親や兄弟と、ばあちゃんの葬儀で慌ただしく過ごしていたので、あっという間に日々は過ぎていった。
悲しみに耽る暇などなかった。
ふとスマホの液晶画面を見る、3日が過ぎていた。
・・・そういえば。
と思いだした、ばあちゃんが言っていたラジオの放送日だった。
布団に入り深夜、人気俳優のラジオ番組の時間となった。テンションアゲめなので、気分的にはあまり聴きたくはなかったが、ばあちゃんの頼みなので仕方がない。
軽快な笑いを誘うお話に、ぼんやり聞き入る私だったが、葉書のコーナーになると我が耳を疑った。
「え~続いて島田ハナコさんからのお便り・・・これって本名かな(笑)」
ばあちゃん!
布団の中で思わず叫ぶ。
「○○さん、はじめて筆をとらせていただいております。私は生い先き短いばあさんです」
ばあちゃんっ!思わず赤面してしまう。
「さて、私には26になる孫がいます。この子があなたの大ファンでして・・・ありがとうございます。嬉しいなあ」
ちょっ、何を書いてんの・・・私は薄々と嫌な予感がしていた。
「で、老い先短い、ばあさんの願い事として・・・うちの孫と・・・」
何、何、何、やめて~!
「会ってやってくれ、とか付き合ってくれって、チカちゃん言うと思ったろ」
思ったよ!
「面白いおばあ様ですね。なになに・・・葉書のスペースが少なくなったので・・・そうですよね、びっちり書かれていますからね・・・簡潔に書きます。ありがとう。そして幸せに・・・・・・ですって、ハナコさんのあたたかいメッセージでした。チカさん聞いてる~」
私は布団の中かで号泣していた。
鼻水、嗚咽。でもそれは心地よいあたたかい。
ありがとう。
この言葉を何度も繰り返した。
ハートフルに。