異世界ラジオ
ありがちかなあ。
俺は私立某棒高校に通う2年生の真鍋瞬、登校中に車の大事故に巻き込まれて意識を失った。
「大丈夫ですかあ」
間の抜けた可愛らしい声のする方に目わやると、ケモノ耳の少女がほっとした表情を見せていた。
あたりを見渡すと、ヨーロッパの中世の街並みを彷彿とさせる建物、そして異人種たちが闊歩している・・・映画、小説、漫画、アニメとかで見たり読んだりしていたファンタジーな世界が広がっていた。
「私はあなた様の従者ハーフエルフのシフォンです・・・という訳で、勇者様、魔王ガルベスを倒しに行きましょう」
「へ」
唐突な展開に戸惑う俺だったが、自分の理想を絵に描いたようなシフォンの笑顔を見ると、本能的に頷いていた。
それからの俺らは、ギルドで仲間を集め、古のダンジョンを巡り、世界中を駆け回る。
ある時は砂漠またある時は極寒の地・・・そして各地に散らばる魔王配下の幹部を倒していく。
レベルアップはもちろん、伝説の武器そして魔王を倒すのに必要な5つの魔法鍵を入手した俺らは、艱難辛苦を乗り越えついに魔王城へと辿り着く。
「いくぞ!」
「はいっ!」
「おうっ!」
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
病室に少年がいる。
彼は数年に渡り意識が戻らない。
両親は彼が大好きだったラジオドラマCDを常に流して待っている。
時に見せる彼の笑顔を信じて・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
「いくぞ!」
「はいっ!」
「おうっ!」
俺たちの冒険はこれからだ!
リアルは・・・。