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あの日

 この時期は・・・。


 あれほど虚無感を覚えた日はない。

 終戦。

 日本が負けた。

 ラジオから流れる玉音放送が、戦終わりを告げる。

 私は両膝をつき、空を見た。

 灰色の世界。

 お国のために。

 私は何も成すことが出来なかった。

 仲間は英霊となった。

 悔しい、寂寥が胸に沈む。

 何度も何度も自分に問いかける。

 陛下の声が、どこか遠くで聞こえているようだ。

 自責の念、もっとやれたんじゃないか、出来たんじゃないか。

 妻がそっと私の肩に手を置いた。

 生きている。

 私は生きている。

 否。

 生きていてよかったのか。

 あたたかい妻の手を握り返した。

 愛しい妻がいる。

 いるんだ。

 だけど、自分だけ幸せに生きていいのか。

 私は真っ赤な目を閉じる。

 彼女はうつろに微笑み、私の手をそっと自分のお腹に導く。

 私は妻の眼をみた。

 彼女は強く頷いた。

 新しい命が宿っている。

 生きよう。

 生きる。

 聞いていた玉音放送が、私には変わったように思えた。

 世界に明りがついた。

 私は生きる。



 考えますね。 

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