YOMIラジオ
深夜。
その日、出張先でヘマをやらかした俺は、ビジネスホテルまで深夜の道をレンタカーで走らせていた。
出張代を浮かそうと、ナビ無しの車にしたのはいいが、こと現状に至っては失敗といわざるを得ない。
片田舎の誰も通らない山道、真っ暗で同じ景色に見える。
常にヘッドライトをハイビームにしていても対向車は全く来ない。
はじめ、自分に対する憤りと、出張先課長の横柄な態度に怒りにまかせ、罵詈雑言を叫びながら車を走らせていたが、次第に落ち着いて来ると、この道であっているのかと不安になってくる。
そうこうしている内にあたりには霧がたちこめてきた。
誰も通らない深夜の辺鄙な道、この道であっているのだろうか、いや間違いない。
俺は心にそう言い聞かせながらも、何故ナビ有にしなかったかと後悔した。
気を紛らわそうとラジオをつけた。
軽快な曲が流れ、俺は気持ちが落ち着いた。
「ようこそYOMIラジオへ。お聴きのリスナーの皆さんハッピーでしょうか」
「んな、訳ないよ」
俺はラジオにツッコミを入れた。
「そんな貴兄に朗報だ!もう悩むことも心配することもないんだ。これから当YOMIラジオは、ゆっくりまったりと、あなたを黄泉の国にご招待」
「な、冗談だろ」
「誰もがそう言うね。行けども行けども辿り着かないホテルそして深い霧、これってフラグ立ってない?」
「・・・・・・」
「自暴自棄、暴走運転」
「・・・あああ」
「そしてYOMIラジオとの会話」
「・・・・・・」
「OK!じゃ、行こうか」
俺はどっかりとシートにもたれかかった。
虚無感しかない。
闇の中、ヘッドライトの光が漆黒に溶ける。車はひとりでに走り、YOMIラジオが流れ続けた。
YOMIラジオが聴こえる。