ラジオから聴こえるあのメロディ
あの名曲に着想を得て、書いてみました。
私の思春期、毎日、必ず聞いていたラジオ。
いつしか全くきか聴かなくなった。
・・・そうだ。あの曲が流れなくなってからだ。
愁いを帯びた寂しそうな歌声が耳に焼きついている。
でも、メロディも歌詞も忘れてしまった。
何も聴こえない、何も聞かせてくれない。
何故だろう。
僕の身体が少し大人になったから?
本当にそうなのか?
押し入れの奥から、壊れたラジオを取り出してきた。
本当に動かなくなってしまったのだろうか。
あの曲はもう聴こえないのだろうか。
コンセントを差し、ラジオをつけてみる。
ジー、ザー。
ザー、ジー。
ツマミを回し、あの時、聴いていた局番を回す。
「ふふふ」
笑い声がした。
私は、本能的にいけないと思い、ツマミを思いっ切り回した。
「あはははは」
頭の中に笑い声がこだまする。
「そうじゃない」
と、かすかな声。
私は戦慄する。
「そうじゃないんだよ」
と、咎めるような声、
「ああ」
震えるしかなかった。
そうだ、そうだった。
「君が逃げたんだろ」
「・・・・・・」
「ずっと待っていた」
「・・・・・・」
「会いたかったよ」
「・・・・・・」
「さあ行こう」
「・・・・・・」
私は、ラジオの聞こえる方へ・・・。
ちょっぴり、着地点が違ったかなあ(笑)。